トヨタ新型クラウン 有能な“秘書”とつながるんです!

木下隆之の試乗スケッチ
新型クラウン

 初代クラウンの誕生は1955年という。1955年といえば、トヨタ自工とトヨタ自販が合併し、現在のトヨタ自動車株式会社になるはるか27年も前のことだ。つまり、クラウンはトヨタ自動車の激動を見つめてきた生き証人であり、トヨタ自動車の歴史そのものといっていい。

日本で進化してきた「専用車」

 驚くのは、これほど立派なボディスタイルであるにも関わらず、海外に積極的に輸出されることなく歴史を紡いできたことだろう。日本専用車なのである。

 それだけに、日本人の趣味趣向に寄り添うように進化してきた。狭く入り込んだ日本の道路を走ることや、けして大柄ではない日本人の体型を乗せやすいように開発されてきたことが誇らしい。

 新型になって伸びやかなスタイルになったものの、いたずらに肥大化せず、全幅は1800mmを超えようとしないのも、日本での使い勝手を考えたことなのだろう。

もうオヤジの車とは呼ばせない?

 そんなクラウンの15代目となる新型は、「コネクティッド」が最大のテーマである。

 プラットフォームは新開発のTNGAであり、直列2リッターターボから、直列4気筒2.5リッターハイブリッドとV型6気筒3.5リッターまでのエンジンを揃え、日本しか走らないのに世界一過酷なドイツのニュルブルクリンクサーキットまで遠征して開発を進めたというほど走りにこだわっていながら、クラウンのエポックは「つながる」というあたりが時代を象徴している。

 それはほとんどスマホとの連動であり、365日24時間と情報がつながっているのである。そこには「クラウン=オヤジの車」といったこれまでのクラウンにまつわる保守的な面影は薄い。

レストランまでご案内

 つながるサービスは豊富だ。走行中のデータは常にコールセンターに送られ、車両のトラブルがあれば販売店からアドバイスが届く。

 そもそも、情報の全ては個人のスマホで確認可能だ。ライトの消し忘れやドアロック忘れなども伝達されるだけでなく、スマホから施錠も解錠もできるのだ。

 ドライバーの運転パターンも監視してくれている。安全運転やエコ運転のアドバイスが得られるうえに、オペレーターを呼び出せばナビ設定を頼むこともできるし、天気やレストランを聞くこともできるのだ。

 「映画館まで連れて行ってくださいな」

 「かしこまりました。最短ルートでご案内します」

 「この近くで美味しいラーメン屋はありませんか」

 「この時間で開店している店をご案内します」

 そんなことすら可能だ。LINEのマイカーアカウントも設定できるというから、これはもう有能な秘書が付き添ってくれているようなものである。

ドクターヘリまで手配可能

 圧巻なのは、ヘルプネットである。レクサスLSで世間をアッと驚かせたシステムと同質のそれは、クルマの事故やドライバーの急病を監視し続けてくれる。何か突発的な問題が発生すれば、専用のオペレーターが警察や消防に取り次いでくれる。事故の程度によってはドクターヘリまで手配してくれるというから心強い。

 万が一大事故で意識を失ったとする。それでもある意味では安心といえるかもしれない。意識が戻ったらそこは病室だった…なんてことになるのだ。もはや私設秘書だけでなく、私設看護師が寄り添ってくれているようなものなのだ。

 ボディは6ライトの前後に伸びやかなスタイルになったし、個性的なルックスが与えられている。RSグレードの設定が象徴するように、走り派にはスポーティグレードが用意されている。

 走りは格段に上質になった。クルマとしての資質を格段に高めていながら、コネクティッドの象徴として日本を引っ張るのだ。日本人をよく知るクラウンがそういうのだから、今の日本人に必要なのは「つながること」なのだろう。

 「木下隆之の試乗スケッチ」は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。

 木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム「木下隆之のクルマ三昧」はこちらから。

【プロフィル】木下隆之 きのした・たかゆき レーシングドライバー、自動車評論家、ブランドアドバイザー、ドライビングディレクター。東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位。雑誌/Webで連載コラム多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。