【魅惑アスリート】新五輪種目スポーツクライミングで“金つかむ” 野中生萌と野口啓代の女王争いが証明した力と課題 - 産経ニュース

【魅惑アスリート】新五輪種目スポーツクライミングで“金つかむ” 野中生萌と野口啓代の女王争いが証明した力と課題

スポーツクライミングW杯のボルダリングで女子年間総合優勝に輝いた野中(中央)、年間総合2位の野口(左)、男子年間総合2位の樽崎(右)
女子で決勝進出を決めた野口啓代=ミュンヘン(共同)
2018年6月3日、ボルダリングW杯八王子大会決勝で、第1課題を登る野中生萌=東京都八王子市のエスフォルタアリーナ八王子(早坂洋祐撮影)
 2020年東京五輪で、日本オリンピック委員会(JOC)が掲げる目標は「金メダル30個」。日本のお家芸である柔道や競泳を頼みとするのはもちろん、関係者の間で期待値が急上昇しているのが、新たに実施されるスポーツクライミングだ。
 今季のワールドカップ(W杯)のボルダリングで、21歳の野中生萌(TEAMau)が初の年間総合優勝に輝き、29歳のベテラン野口啓代(同)が2位になった。
 「身近にいる強い選手が私の力を押し上げてくれた」と喜び、涙した野中を、「感動した。彼女の年間優勝はすごくうれしかった」と同じく涙で抱きしめた野口の美しい姿勢に、2人の伸びしろを感じる。
 野中は9歳から競技を始めた。壁に取り付けられた突起物(ホールド)を使い、よじ登っていく男子選手顔負けのダイナミックな動きは、自宅で飼っている愛猫が高くジャンプする姿にヒントを得たという。「猫の背中の動きのように、肩甲骨の可動域が広がればできる範囲も増える」と意識している。
 猫といえば、平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルの小平奈緒を思い出す。2014年ソチ五輪後に強豪オランダで留学中、1998年長野五輪金メダリストのコーチから「怒った猫のように両肩を上げなさい」と指摘され、上半身を立てることで骨盤が前に出るフォームに改造。「怒ったネコ」のニックネームで、世界のトップ選手からも一目置かれる存在となった。躍動的な動物の動きは、人間の運動能力を高めるヒントになっているようだ。
 ボルダリングについて、日本山岳・スポーツクライミング協会の安井博志ヘッドコーチは「毎回違った配置のホールドで壁を登るので、瞬時の対応力が問われる競技。高い直感能力と技術を持つ日本人に向いている」と指摘する。
 ただ、東京五輪で実施されるスポーツクライミングは、「ボルダリング」と、制限時間内に到達した高さを競う「リード」、登り切る速さを競う「スピード」の3種目の複合だ。リードとスピードで後れを取れば致命傷になる。
 野中と野口は昨季から、ほとんど手をつけていなかったスピードの課題に着手。今季からW杯にも出場し、複数種目をこなす体力面の強化に励んでいる。
 9月の世界選手権では、初めて複合が行われる。まさに東京五輪の前哨戦。野中は「ここで金メダルを取りたい」、野口も「3種目とも自己ベストを」と闘志を燃やしている。(運動部・西沢綾里)