【ボクシング】岩佐亮佑が恐れた“幻の強打”、腕リーチで8・5センチ有利も過剰な警戒心で痛恨の王座陥落 - 産経ニュース

【ボクシング】岩佐亮佑が恐れた“幻の強打”、腕リーチで8・5センチ有利も過剰な警戒心で痛恨の王座陥落

ドヘニー(右)のジャブを浴びる岩佐
ドヘニーを攻め立てる岩佐
ベルトを失った岩佐は現役引退の可能性も示唆した
 8月16日の国際ボクシング連盟(IBF)スーパーバンタム級タイトルマッチで、王者の岩佐亮佑(セレス)が挑戦者のTJ・ドヘニー(アイルランド)に0-3の判定で敗れてベルトを失った。試合を通してリングから伝わってきたのは、ドヘニーの“幻の強打”に対する岩佐の恐怖心。戦前から繰り広げられた駆け引きも含め、ボクシングの“奥深さ”に屈する痛恨の敗戦となってしまった。
 ドヘニーは同級1位で19戦全勝のパーフェクトレコードと、14KOという高いKO率を引っ提げて日本に乗り込んできた。最強挑戦者の名に恥じない戦績で、岩佐も戦前から「パンチ力があって特別な選手」と警戒感をあらわにするとともに「勝てば自信になるし評価にもつながる」と対戦を楽しみにしていた。
 ドヘニーの愛称は「ザ・パワー」だ。岩佐が身長で5・5センチ、リーチで8・5センチ上回っていても、「体格差はパワーで補えるので問題はない」と豪語。戦前の大方の予想では距離を取る岩佐に対し、ドヘニーが接近戦に持ち込む展開になるとみられていた。
 しかし、ドヘニーが選択したのはアウトボクシングだった。長い距離から飛び込みながら右のジャブを繰り出し、当たっても当たらなくてもクリンチで逃げて打ち合いを避けた。岩佐を倒そうという迫力は欠いてお世辞にも見栄えはよくなかったが、翻弄されて攻勢に出られない岩佐の印象はもっと悪かった。
 高いKO率や「ザ・パワー」の愛称を最大限に利用した巧みな作戦だった。岩佐と所属ジムの小林昭司会長はそろって「ドヘニーはまったく前に出てこなかった」と予想外の展開に困惑。逆に前へ出ようとしても、実際には打ち込まれることがないドヘニーの強打が頭をよぎる。リングに上がる前から主導権は握られてしまっていた。
 3人のジャッジが117-112、116-112、115-113でいずれもドヘニーを支持したほどの力量差が両者にあったわけではない。悔やまれるのはドヘニーの強打に岩佐が払った必要以上の敬意。小林会長は「岩佐には倒されても前に出る覚悟が必要だった」と敗因を挙げ、岩佐は「壁を乗り越えられる人間じゃなかった」と肩を落とした。
 昨年9月、岩佐にTKOで敗れてベルトを失った小国以載は「やっぱり強かった。すっきりしています。最後が岩佐でよかった」とすがすがしくグローブを置いた。1年足らずでそのベルトを失った岩佐は「また頑張ろうという気が今はしない。よく考えた方がいい」と力なく語った。あまりにも対照的な王座陥落劇となってしまったが、まずは体を休めて自身が納得できる結論を出してもらいたい。