【政界徒然草】円熟味増す二階外交 課題は「後継者の育成」と「中国への直言」 - 産経ニュース

【政界徒然草】円熟味増す二階外交 課題は「後継者の育成」と「中国への直言」

独自の人脈で外交を行う自民党の二階俊博幹事長。後継者はいるのか=8月21日、党本部(春名中撮影)
自民党二階派の研修会で板門店の施設を視察する二階俊博幹事長(中央)=8月1日(代表撮影)
自民党二階派の研修会で訪れた韓国で李洛淵首相(右)と会談する二階俊博幹事長=8月2日、ソウルの政府総合庁舎(代表撮影)
自民党総裁選でいち早く安倍晋三首相(右)の支持を表明した二階俊博幹事長=7月17日、首相官邸(春名中撮影)
 自民党の二階俊博幹事長(79)が29日から4日間の日程で中国・北京を訪問する。幹事長就任後では12回目の海外訪問で、北京入りは昨年12月以来、約8カ月ぶり。昨年の訪問では習近平国家主席と面会したほか、中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」への協力姿勢を打ち出し、日中関係改善の流れを作った。アジア諸国を重視する二階外交は円熟味を増すが、一方で「後継者の育成」と「相手国への直言」といった課題も抱える。
 「この機会にもろもろの問題を話し合い、日中両国に有効で有益な機会にしたい。向こうの要人と合うのは党のため、国のために重要だ」
 二階氏は21日の記者会見で、記者団から今回の訪中の意義について問われ、こう力を込めた。今回の訪中でも中国政府の要人との会談を実施する方向で調整が進んでいる。また、画家の絹谷幸二さんの絵画展が中国の清華大学で開催されるのに合わせ、二階氏は開幕レセプションに出席する。絵画展は今年の日中平和友好条約締結40周年記念事業の一環で、文化面でも日中の交流を深める考えだ。
 二階氏は、かねてからアジア重視の外交を展開してきた。平成12(2000)年5月、運輸相だった二階氏は旅行や観光業界の関係者ら約5千人の訪中団を率いて北京に入った。人民大会堂での式典では当時の江沢民、胡錦濤の正副国家主席が登場して歓迎を受けた。総務会長時代の27(2015)年5月には、約3千人の訪中団とともに北京を訪問して、習氏と親しく面談した。
 いずれも、歴史認識や尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる問題などで日中の関係が難しい時期だった。だが、二階氏は大規模な訪問団を引き連れた「二階流」の外交スタイルを展開。党幹部は「相手側にこちらの誠意が伝わり、信頼を勝ち取った」とたたえた。
 さらに今年は二階派の研修会を自民党の派閥として初めて海外(韓国)で開催した。そこでまとめられた安倍晋三首相(党総裁、63)への政策提言では、外交政策に関して「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交の堂々の展開、なかんずくアジア外交を強化する」という一文を盛り込んでいる。
 二階氏は中韓との関係について、周囲に「いつでも話ができるような関係を常日頃から築いておくことが重要だ」と話しているという。二階氏の側近議員の一人は「米国やロシアと良好な関係を築いている首相と、中韓に太いパイプがある二階氏で、非常にバランスがいい。多層的・多面的な外交が展開できている」と強調する。
 長年にわたる交流で培った二階氏の人脈は、党にとって、国にとって、欠かすことのできない財産といえる。だが、同時に浮かび上がってくるのが、そのパイプを誰が引き継ぐことができるのかという懸念だ。
 昨年の「一帯一路」への協力姿勢も、政府が慎重な状況でもきっぱりと打ち出した。こうした判断力と実行力を兼ね備えているからこそ、中韓も二階氏に一目を置いている側面があるが、永田町を見渡しても二階氏の代わりが務まるような人物は、今のところ見当たらない。
 加えて自民党の支持基盤となる保守層は、敵対性の強い対日政策をとることの多い中韓との外交に厳しい視線を送りがちだ。そのため、中韓との外交は対応が難しく「よほど選挙に強くなければ手を出しにくい」(党関係者)といった事情もある。
 もう一つの課題は、相手国への「直言」だ。言うまでもなく、日本と中韓の間には先の大戦をめぐる歴史認識や慰安婦問題、尖閣諸島、竹島(島根県隠岐の島町)をめぐって大きな問題を抱える。近年は北朝鮮の核・ミサイル問題への対応で連携を図る必要があることなどから中韓ともに鳴りを潜めているが、いつこれらの問題が再燃するか予測はできない。決して目をそらすことのできない課題だ。
 昨年末の訪中でも、今夏の韓国での研修会でも、中国の尖閣諸島周辺の日本領海への度重なる進入や韓国の慰安婦像設置に関して、二階氏からそれぞれの政府要人に対する批判はなかったとされる。しっかりと日本の立場を伝え、友好関係を大事にしつつも、批判すべきことは批判する。それが今できるのは、二階氏をおいて他にない。 (政治部 大島悠亮)