【映画「ボルグ/マッケンロー」】松岡修造さんに聞く(上)現代テニス界を築いたボルグとマッケンロー 「今の僕は『マッケンロー派』です」 - 産経ニュース

【映画「ボルグ/マッケンロー」】松岡修造さんに聞く(上)現代テニス界を築いたボルグとマッケンロー 「今の僕は『マッケンロー派』です」

「僕もボルグやマッケンローになりきってプレーした日もあった」と語る松岡修造さん=東京・六本木(伊藤徳裕撮影)
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でボルグを演じたスベリル・グドナソン(右)とマッケンロー役のシャイア・ラブーフ
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でボルグを演じたスベリル・グドナソン
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でマッケンローを演じたシャイア・ラブーフ
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でボルグを演じたスベリル・グドナソン(左)とマッケンロー役のシャイア・ラブーフ
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でボルグを演じたスベリル・グドナソン
「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でボルグを演じたスベリル・グドナソン(左)
 プロテニス界最高の試合として、いまだ語り草の1980年ウィンブルドン男子単決勝。同大会5連覇がかかる世界ランク1位のビヨン・ボルグ(スウェーデン)に、めきめきと頭角を現してきた新進のジョン・マッケンロー(米国)が挑む世紀の一戦は「3時間55分の死闘」と呼ばれた。31日公開の「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」は、2人がテニスを始めた少年期から同試合で戦うまでを再現した劇映画だ。元プロテニス選手で88年にマッケンローと戦った経験がある松岡修造さん(50)に話を聞いた。(WEB編集チーム 伊藤徳裕)
圭にも見てほしい
--映画を見た感想は 
 「まず思ったのは、すべてのテニス選手に見てほしい。(ロジャー・)フェデラーや(ラファエル・)ナダルのようなトップ選手、もちろん錦織圭選手にも見てほしいと思いました。『プロフェッショナルスポーツ』という現在のテニスの舞台を作り上げてくれたのはこの2人のこの試合があったからこそ。今のテニス界を築いてくれたレジェンドたちに対して、今まで以上に尊敬の念を抱くことになるだろうと思います。特にトップ選手たちはテニス界においての自分たちの役割をより感じるのではないでしょうか。当時は今よりもプロ化が進んでいなかったので、ボルグやマッケンローは本当に孤独だったと思います。現在のトップ選手たちはエージェントのサポートを受け、チームで戦うことができている。この映画を見れば、それが恵まれた環境だということを選手たちが知ることができるいい機会になると思います」
 「また、この映画を見て改めて錦織選手のすごさを知ることができたという点では、僕にとってもいい勉強になりました。錦織選手が2014年の全米オープンで準優勝をしたとき、僕たちは『日本人選手がグランドスラム(全豪、全仏、全英、全米の世界4大大会)で決勝進出なんて夢のようだ!』とか『優勝できずに残念』と結果だけを見て言葉にしていたように思います。でもこの映画を見て、改めて圭のすごさを感じ、また圭のその時の状態を知ることができたような気がするんです。僕らが想像もできないほどのプレッシャーと孤独感を感じながらも、圭は最後まであの大舞台で戦い抜いたわけで、圭のすごさや申し訳なさが蘇ってきました」 
人間的な表現力にひかれた
--自身もウィンブルドンに挑戦したが、映画を見て感じたことは
 《1995年大会で日本人の男子選手として33年の佐藤次郎以来62年ぶりにベスト8入りを果した》
 「はっきり言って、僕はボルグとマッケンローと同じような共感を持てるステージでテニスができていたわけではありません。ただ彼らと共通するところを1つ挙げるとすれば、僕もウィンブルドンのセンターコートでプレーをしたということ。ウィンブルドンのセンターコートに立ちたいと本気で思ったのは、このボルグとマッケンローの試合を見てからなんです。だから、実際にセンターコートでプレーしたときに、あの時のボルグ、マッケンローの映像を重ねながら、お客さんの応援や拍手を浴びるたびに、彼らの魂を感じることができた。こんな最高な舞台はないと感動しながらプレーしていたのを思い出しました」
--松岡さんにとってボルグとマッケンローはどういう選手なのか 
 「ボルグはとにかく冷静で、男の僕から見てもかっこいいと感じることができた選手。また、忍耐力のある人というイメージでした。テニスをしている人ならだれでもやったことがあると思いますが、僕はボルグになりきってプレーをする日もあれば、マッケンローになりきってプレーする日もありました。ボルグになりきってプレーをした日は、普段よりも冷静さを意識するようになり、マッケンローになりきってプレーをした日は、力まずにタイミングよくボールを打ち返す。そのように当時ボルグ、マッケンローをまねしたのは僕だけではないはず。テニスもそうですが、僕らは彼らの人間的な表現力にもひかれていたんだと思います」
マッケンローの解説がお手本
--当時はヘアバンドをして「フィラ」のファッションに「ドネー」のウッドラケットを持ってボルグのまねをしたファンが多かったが、ボルグの持つ冷静さといった内面にも共感していたのかなと
 「そうですね。すごく憧れていました。僕が憧れていた『表のボルグ』の裏側にどんな人生があったのかをこの映画は教えてくれました。でも、僕のテニス人生が終わったあとは、完全にマッケンロー派ですね」
--『マッケンロー派』というのは感情を表に出すということか
 「マッケンローはとにかく何においてもエンターテイナーという印象が強いです。僕は現役選手のころはどちらかというと感情を表に出すのはテニスのプレー中だけで、メディアのインタビューなどではあまりしゃべりませんでした。コート外ではボルグと似ていたと思う。自分で言うのもなんですが“貴公子”と呼ばれていたし、プレー中に人を笑わせるようなことは一切したことがありません。試合中はそんな余裕はなかった。ただ、引退してからはボルグから一気にマッケンローになったという感じ。彼の解説は目の前で起こっていることをただ解説するのではなく、見ている人、聞いている人がワクワクするような解説をするんです。根っからのエンターテイナーなのでしょうね。だから、僕は今でもそんなマッケンローの解説をお手本にしています」
=(下)に続く