投資信託をめぐる金融庁の「成果指標」に銀行が猛反発 「もっと利益は出ている!」

経済インサイド

 国内29の銀行が販売する投資信託を買った個人客の半分近くが、運用損失を出しているとの金融庁の成果指標(KPI)が波紋を呼んでいる。投信を買った客全員の今年3月末と購入時の投信の評価額を比べたものだが、途中で解約した顧客は含まれておらず、実際はもっと利益は出ていると銀行側が反発しているためだ。ただ、金融庁は過度な分配金や短期の売買などで十分な運用収益を得られず、長期の資産形成に結びついていない実態もKPI公表で浮かび上がったとしており、推移を注意深く見る考えだ。

 調査は6月末に公表された。金融庁が主要9行と地方銀行20行を対象として、投信を買った客全員の今年3月末と購入時の投信の評価額を比較。額は、顧客が払う手数料も引いた実質的な「手取り」となっている。

 この結果、今年3月末の評価額が購入時点に比べ、もっとも高かった個人客は、「マイナス10%以上0%未満」の35%で、次いで、「0%以上10%未満」が21%、「10%以上30%未満」(19%)、「30%以上50%未満」(9%)と続いた。このほか、「50%以上」が6%に対し、「マイナス50%未満」は0・9%だった。プラスかマイナスかでみると、マイナスの個人客は全体の46%で、プラスは54%だった。

 金融機関が反発しているのは、この指標が途中解約した個人客が含まれていない点だ。

 信託銀行の関係者は、 「一般的に個人投資家は、2割の利益が出ると売却する。一方で含み損のある投信は抱え続ける」と指摘。「半数が損というのは実態と乖離(かいり)している」と主張する。

 加えて、一括投資か積み立て投資か、投資家の投資法によっても数値は大きく変わるといい、「KPIで顧客本位でないと結論づけるのはおかしい」と反発している。

 ただ、米国の好景気による米株高に引っ張られる形で、東京株式市場でも日経平均株価が上昇基調となっている時期の指標だけに、「損をしにくい」環境だったともいえる。それにもかかわらず、比較的多くの人が損をしていたのも事実だ。また、投信の販売現場では、手数料を稼ぐために、客に投信の売買を繰り返させる「回転売買」という手法をとる金融機関もあるようだ。

 長期投資の場合、こうした損を吸収できる可能性が高く、金融庁は、高い運用成績を出している銀行ほど、客が投信を長く保有する傾向があったと分析している。

 金融庁は今回、こうした実態がKPI公表で浮き彫りになったとみており、今後も注視していくとしている。

 とはいえ、あくまでも投信は、個人が最終的に選んで購入した商品。自身の判断が間違っていたために、利回りが得られなかったことも大きい。すべてを金融機関のせいにするのは酷だ。(経済本部 飯田耕司)