【政界徒然草】石破茂氏が「政治的な死」避けるラインは? 自民党総裁選「党員票」の楽しみ方    - 産経ニュース

【政界徒然草】石破茂氏が「政治的な死」避けるラインは? 自民党総裁選「党員票」の楽しみ方   

安倍晋三首相への批判を強めている石破茂元幹事長。この路線は奏功するのか=8月17日、国会内(斎藤良雄撮影)
桜島を背に自民党総裁選への立候補を正式に表明した安倍晋三首相=8月26日、鹿児島県垂水市(奥清博撮影)
平成24年9月、自民党総裁選に立候補した安倍晋三現首相(右)と石破茂氏(右から2人目)ら=党本部(古厩正樹撮影)
平成25年9月、自民党総務会に出席した(右から当時の)石破茂幹事長、安倍晋三首相、野田聖子総務会長(三尾郁恵撮影)
 自民党総裁選(9月7日告示-20日投開票)は、国会議員票と同数の405ある党員・党友票の行方に注目が集まっている。連続3選を狙う安倍晋三首相(63)は政権を盤石にするため圧勝を狙い、石破茂元幹事長(61)は「ポスト安倍」の芽を残すためにも首相を上回りたい。裏を返せば、党員票の多寡が両者の政治生命を左右しかねないともいえる。両陣営が見据える勝敗ラインとは-。
徹底的につぶす
 自民党は21日、総裁選挙管理委員会の会合を開き、総裁選の日程や投票の仕組みを決めた。総裁選は国会議員票405と党員票405の計810票を争い、過半数を獲得すれば当選する。直近で複数候補が争った平成24年総裁選との大きな違いは党員票の扱いだ。
 24年の総裁選後に総裁公選規定が改正され、300に固定されていた党員票は国会議員票と同数となり重みが増した。集計方法も変わった。従来は党員票を都道府県連ごとに集計し、各地の党員数に応じ事前に割り振った票数をドント方式で配分していたが、現行は都道府県連ごとに集計した数字を党本部に伝え、全国で足し合わせた得票数をドントで配分する。地域の偏りが出にくく、「死に票」がなくなる利点がある。
 投票権も公選規定の「2年間党費を払った20歳以上」を、特例として「29年の党費を納めた党員」とし、結果として18歳以上に広げた。二階俊博幹事長(79)の号令のもとで増えている党員に配慮した。
 政府高官は首相が目指す党員票数について「国会議員票と同じ割合で取りたい。24年総裁選で首相は当初、メディアに『泡沫(ほうまつ)』といわれ党員票対策はできなかった。今回は違う」と周辺に話す。
 首相は7派閥のうち5派閥と、菅義偉官房長官(69)に近い無派閥議員らの支持を得て7割超の320票近くを固めている。国会議員票と党員票の得票率の差が大きいほど、来年の参院選を見据え野党が「自民党議員は民意とかけ離れている」との批判を浴びせるのは確実で、党員票でも国会議員票に迫りたいのだ。
 別の首相周辺は「新人や元職の争いと、現職と新人の争いは全く違う。後者は現職に対する反乱であり権力闘争だ。石破氏を徹底的につぶすためにも圧勝する必要がある」と語る。現状は首相の連続4選はできない。政権の終わりが見えることで求心力が下がる「死に体」を避けるためにも完勝が求められており、着々と策を繰り出している。
 首相自身が党員票の掘り起こしに熱心だ。首相公邸などで地方議員と積極的に会食や面会をし、自ら地方に出向くこともいとわない。業界団体との関係強化にも取り組み、日本農業新聞のインタビューに応じたり、日本医師会や日本歯科医師連盟、日本薬剤師会のトップと面会し、機関誌に掲載されたりしている。
 首相を支持する5派閥は都道府県ごとに責任者を決めて党員票の確保を目指し、政策ビラなどを組織的に配る準備を進めている。
人事にも直結
 党員票の結果は総裁選後の党幹部と組閣人事にも直結するとの見方がある。前出のように党員票はまず都道府県連単位で集計する。そのため、どの議員がどの程度貢献したか推測することも可能だ。党幹部は「その気になれば選挙区ごとの集票も見ることができるだろう。首相も人事に反映させるのでは」と話す。
 党員増が首相に有利に働くとの見方もある。党員は野党時代の24年の73万人台を底に右肩上がりだ。二階氏が幹事長就任後に「党員120万人」を掲げ、国会議員1人につき、継続・新規合計で千人の党員獲得ノルマを罰則付きで課した。その結果、党員は29年には106万人を超えた。
 党員獲得上位の国会議員には武田良太元防衛副大臣(50)、二階氏、小泉龍司国際局長(65)ら二階派議員や、首相支持の岸田派議員の名前が並ぶ。二階氏周辺は「党員の増加分は首相に投票してくれるだろう」と期待を寄せている。
 一方で党幹部は「党員票は首相と石破氏で6対4で御の字だと思っている。5対5だと寂しい」と語る。石破氏が長期政権批判に対する一定の受け皿になりうるとの認識だ。
 石破氏は早くから地方行脚を続け、総裁選で街頭演説や公開討論会を開き首相と直接対決する機会を求めている。浮動票を中心に集票する狙いだ。石破派幹部は「今回も国会議員票で劣勢なので判官贔屓(ほうがんびいき)もあるだろう。党員票で1票でも首相を上回りたい」と話す。
 5人で争った24年総裁選は党員票300のうち石破氏165票(得票は22万3376)、首相87票(同14万668)だった。今回の方式で計算すると、一騎打ちでは石破氏253票、首相152票となる。石破氏は石破派や竹下派参院議員を軸に50人前後の支持を得ており、議員票と党員票を単純に足し合わせると首相が約470票、石破氏約300票、未定約40票だ。
 党幹部は「石破氏の運命の分かれ道は党員票と議員票の合計で3割の240~250票だ。上回れば『ポスト安倍』として生き残れるし、下回れば政治生命は終わりだ」と話す。
 「天の声にも変な声もたまにはある」。昭和53年総裁選は党員投票による予備選で現職首相の福田赳夫氏が、田中角栄氏の支援を受けた大平正芳氏に敗れ、こう言い残して辞任した。今回の総裁選では、どんな「天の声」が下るのか。 (政治部 沢田大典)