【希少がんと共に生きる】「パパのがんちゃん治るよ」 娘の言葉が生きる気力に 子供に理解をさせるには… - 産経ニュース

【希少がんと共に生きる】「パパのがんちゃん治るよ」 娘の言葉が生きる気力に 子供に理解をさせるには…

娘を持ち上げる筆者=8月5日、神奈川県内
娘と公園で遊ぶ筆者=8月5日、神奈川県内
娘と手をつなぎ散歩を楽しむ筆者=8月5日、神奈川県内
 筆者は今もなお、ステージ4の小腸がんの治療を続けている。
 小腸が、がん細胞によって破れてしまい、無数にその細胞が散ってしまう「腹膜播種(はしゅ)」でもあるため、やっかいなことになっているのは間違いない。そんな筆者が常日頃考えていることがある。それは3歳の一人娘がいつ、がんという病気を理解するのかだ。
 筆者「パパががんだっていうことを知っている?」
 娘「うん」
 筆者「がんって何だか分かる?」
 娘「分かんない」
 筆者「がんって病気なんだよ」
 娘「病気?」
 筆者「パパの病気、治るかな」
 娘「うん、パパのがんちゃん治るよ」
 筆者「ありがとう。パパが早く死んじゃいやでしょ」
 娘「うん」
 筆者「がんという病気は死ぬかもしれない病気なんだよ」
 娘「へー、そうなんだ」
 筆者「でも、パパは絶対治すね」
 娘「うん」
 このやり取りはつい最近、娘としたものだ。会話から分かることは、3歳ではがんのことを理解することは極めて困難だということだ。
 抗がん剤の副作用で手足にしびれが生じたり、手足の指の皮膚が切れたりするため、筆者は朝晩、ステロイド剤付きのテープや、絆創膏などをあらゆる箇所に貼っている。それを見た娘は「なんでそんなに貼っているの? がんだから?」と分かったようなことを言うこともある。
 いずれにしても、物心がついたときには正しくがんというものを理解し、父親ががんにかかっていることをしっかりと受け止めてほしいと思っている。問題はそのタイミングだ。
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 ここに、製薬会社「ノバルティスファーマ」が、親ががんになった子供らを支援する任意団体「ホープツリー」の協力を得て作成した冊子「わたしだって知りたい!」がある。この冊子にはこんな解説が書かれている。
 「6歳までの子供に伝えるには」の項目では「がんは初めて聞く病気の名前で、病名を知ることでショックを受けることは少なくない」、「7歳から12歳の子供に伝えるには」の項目では「『ねえ、死んじゃうの?』と聞くことも珍しくなく、率直に色々な質問をしてくる」と書かれている。
 事ほどさように、不安にさせることなく、正確にがんのことを伝えるのは至難の業といえる。
 「思春期の子供に伝えるには」の項目では「自立と依存の葛藤で大きく揺れる時期。急に甘えてきたり、反発したりという態度に、親としてもどう接していいか戸惑いがち」と記されている。反抗期にがんのことを知った場合、「反抗したい」という思いと、「思いやりをもたなければ」という相反する感情を抱き、情緒不安定になることも考えられる。
 一般的に子供にがんであることを伝える際「3つのC」が重要といわれている。1つ目は「がん(cancer)」という病名を伝えること。「病気」という曖昧な表現をすると、子供は想像を働かせ、混乱を来たす可能性があるためだ。
 2つ目は「誰のせいでもない(not caused)」ことを伝えること。低年齢の子供ほど「自分が心配をかけたから、自分のせいで親が病気になってしまった」と自分を責める傾向にあるという。このため、誰かのせいでなる病気ではないことを伝える必要があるのだ。
 3つ目は「伝染しない(not catchy)」ということ。「何か病気になると髪の毛が抜けるかもしれない」と病気全般を恐れることがある。このため、がん患者である親と同じものを食べても、うつらないことなどを分かりやすく説明することが求められる。
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 現在、筆者の体調は決して悪くはない。通院している国立がん研究センター中央病院(東京・築地)の担当医によると、ステージ4の小腸がんの5年生存率は「10%前後」。にもかかわらず、手術を経て化学療法(抗がん剤治療)を開始した昨年1月からこれまで小康状態を保っているのは「珍しい」(担当医)という。
 とはいえ不安がないわけではない。そんな筆者の気持ちを察してか、娘は最近こんな無邪気なことを口にした。
 「パパは病気じゃないよ!」
(政治部 坂井広志)