【久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ】米朝関係は凍結状態 注目の「9・9」習近平主席訪朝はあるのか - 産経ニュース

【久保田るり子の朝鮮半島ウオッチ】米朝関係は凍結状態 注目の「9・9」習近平主席訪朝はあるのか

対北朝鮮交渉で正念場を迎えるトランプ米大統領(AP)
 7月31日に撮影された北朝鮮・寧辺の核施設の衛星写真。北朝鮮は現在も核開発を続行しているとされる(プレアデス(c)CNES 2018、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース/38ノース提供・共同)
饒舌なトランプ米大統領と対照的に、沈黙する金正恩朝鮮労働党委員長(ロイター)
 ポンペオ米国務長官の訪朝中止で、トランプ大統領は対北圧力に全く協力しない中国も強く非難した。中国は1300㌔に及ぶ国境地帯で次々に制裁を緩和しており、北朝鮮は最近、潤っている。巨大な後ろ盾を得た北朝鮮に譲歩の気配はない。では、中国の習近平国家主席は北朝鮮の非核化問題を、貿易摩擦が激化する対米カードに使うつもりなのか。米朝関係の局面変化により、9月9日の北朝鮮建国70周年に習氏が初訪朝するかが次の焦点となってきた。
「次の訪朝は中国との貿易問題が解決後」?
 今年、3度にわたって首脳会談が行われた中朝関係は蜜月状態だ。中朝貿易関係者によると、今年2月まで中朝国境の橋で中国側から北朝鮮に向かうトラックは往時の5分の1に減っていたが、最近は回復した。
 特に目立つのは中国からの観光客の増加で、先月までは「中国から平壌に行く鉄道の切符は全く取れなかった」(同)という。現在は9月の建国70周年行事準備で観光客の入国が制限されているが、先月まで北朝鮮の景勝地や平壌は中国・丹東からの団体ツアーの中国人観光客で混雑していたという。
 中国政府は国連制裁のため昨年11月から北朝鮮旅行を禁止した。北京|平壌の空路も一時中止されたが、5月の中朝首脳会談後に再開、「一日1000人から2000人が平壌に入る」(韓国紙)。昨年、閉鎖された中朝国境の北朝鮮系レストランも最近は再開している。また、中国、ロシアから入ってくる原油で北朝鮮国内のガソリン価格が下落したとされる。
 往来や観光客、ガソリン価格などは目にみえる範囲だが、中朝は合弁企業も多いため中国が本気で北朝鮮を援助しようとすれば、金融機関の仮名口座を利用するなどさまざまなことが可能だ。
 トランプ大統領は今回の国務長官訪朝キャンセルに関連し、「中国に対する(米国の)関税措置の後、中国は以前のように北朝鮮の非核化を支援していない」と述べた。これは、北朝鮮への圧力が効かないのは中国が対米対抗策で北朝鮮を支援したからだ、と言っている。さらにトランプ氏は「ポンペオ長官の次の訪朝は中国との貿易問題が解決したあとの近い将来」とも述べており、「関税問題を解決したいのなら北朝鮮支援を止めろ」と忠告したに等しい。
 トランプ大統領が6月のシンガポールでの米朝首脳会談以来、非核化への不満を初めて直接、言及したことで、米朝関係の対話は当面は凍結状態となりそうだ。米国は北朝鮮の変化を引き出さない限り対話局面に戻る口実が失われた。ここで再び対話すれば、さらに米国が譲歩をしたことになる。
文在寅大統領は南北対話推進か
 韓国は今回の訪朝キャンセルに面食らっている。米朝交渉が暗礁に乗り上げてしまえば、南北関係にもブレーキが掛かるからだ。9月の第3回南北首脳会談にしても、非核化で米朝が対立している状況のなかで、国連制裁違反となる経済関係進展を決定することは困難だ。
 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権は南北対話を推進するという強気の態度を崩していない。青瓦台(大統領府)報道官はポンペオ氏の訪朝中止を受けた定例会見で「米朝関係が硬直化している状況のもとでわれわれの仲介者としての役割がより大きくなった」と述べた。
 韓国は南北関係推進のため今月中にも北朝鮮の開城(ケソン)工業団地内に南北共同連絡事務所を開所する準備を進めてきた。同事務所は4月の板門店宣言で合意されたものだが、米朝交渉の難航もあり、米側の専門家から制裁違反ではないかとの指摘もあって懸案となっていた。
 訪朝キャンセル直後、韓国政府は「米国のポンペオ氏の訪朝中止とは関係なく開所を行う」としていたが、27日に急遽、「再点検する」(韓国大統領府)に方針転換している。
 北朝鮮の国内視察を続けている金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は今秋から再び、外交に動き出すとみられている。文在寅韓国大統領や習近平中国国家主席と会談する予定や観測があるのに加え、プーチン・ロシア大統領が金正恩氏の訪露を招へいしているからだ。
 金正恩氏は今月17日、東部元山(ウォンサン)の観光地で、「強盗のような制裁封鎖でわが人民を窒息させようとする敵対勢力との激しい対決戦であり、党の権威を擁護するための決死戦だ」などと強い不満を表明した。シンガポール会談以後、金正恩氏が「強盗のような制裁」との表現を使ったのは極めて異例だった。
 9月9日の建国70周年記念日で北朝鮮は、大規模な軍事パレード、マスゲーム、祝賀行事で金正恩体制の完成を内外にアピールする。米朝関係の推移が不透明であったことから海外からの首脳出席は少ないが、ここに習近平氏が出席するかどうかが米中、米朝関係の今後を占うカギになりそうだ。(編集委員)