【映画深層】「ぴあフィルムフェス」 40回を迎える自主映画の祭典 2次審査に立ち会って分かったこと - 産経ニュース

【映画深層】「ぴあフィルムフェス」 40回を迎える自主映画の祭典 2次審査に立ち会って分かったこと

2次審査会では16人の審査員による真剣な討議が繰り広げられた=6月23日、東京都渋谷区のぴあ本社(藤井克郎撮影)
PFFアワード2018入選作「19歳」(道本咲希監督)
PFFアワード2018入選作「オーファンズ・ブルース」(工藤梨穂監督)
PFFアワード2018入選作「ある日本の絵描き少年」(川尻将由監督)
PFFアワード2018入選作「Good bye,Eric!」(高階匠監督)
PFFアワード2018入選作「からっぽ」(野村奈央監督)
PFFアワード2018入選作「シアノス」(松本剛監督)
PFFアワード2018入選作「愛讃讃」(池添俊監督)
PFFアワード2018入選作「シャシャシャ」(亀井史興監督)
PFFアワード2018入選作「カルチェ」(植木咲楽監督)
PFFアワード2018入選作「すばらしき世界」(石井達也監督)
PFFアワード2018入選作「モフモフィクション」(今津良樹監督)
PFFアワード2018入選作「わたの原」(藤原芽生監督)
PFFアワード2018入選作「小さな声で囁いて」(山本英監督)
PFFアワード2018入選作「貴美子のまち」(芦澤麻有子監督)
PFFアワード2018入選作「川と自転車」(池田昌平監督)
PFFアワード2018入選作「最期の星」(小川紗良監督)
PFFアワード2018入選作「一文字拳 序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-」(中元雄監督)
PFFアワード2018入選作「山河の子」(胡旭●(=杉の木へんを丹に)監督)
 若手監督の登竜門として知られる自主映画の祭典、「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」(9月8日開幕)が、今年で40回目を迎える。近年、映像作品を競い合う場はほかにも増えているものの、昨年のグランプリ作品「わたしたちの家」(清原惟(ゆい)監督)と観客賞の「あみこ」(山中瑶子監督)が今年のベルリン国際映画祭に選出されるなど、老舗のPFFアワードは重みが違う。その影には極めて厳正な審査があるといわれるが、最終段階の2次審査に報道陣として初めて立ち会った。
審査メンバーは16人
 2次審査を取材するにあたり、PFF側から一つだけ条件が出た。それは2日間、計10時間に及ぶ審査会のすべてを見学してほしいというものだ。一部分だけ見ても理解してもらえないのではないか、というのが理由だった。
 6月下旬のとある週末、東京・渋谷のぴあ本社に16人の「セレクションメンバー」が集まった。3人はディレクターの荒木啓子さんを含むPFFスタッフで、残る13人は映画館従業員や映画会社社員、ビデオ店の店員に映画ライターと、日頃から数多くの映画に接している20代から40代だ。「Dressing Up」(平成24年)の安川有果(ゆか)監督、「泳ぎすぎた夜」(29年)の五十嵐耕平監督と2人の映画作家も含まれていた。
 この16人は5月中旬に行われた1次審査にも参加しているが、今年の応募本数は全部で529本。1分の短編から長いものは3時間25分までと幅広く、それらを1作品につき最低でも3人が見て1次審査で意見を出し合う。その結果、残った80本約51時間分を、1カ月の間に16人全員が厳しく視聴し、この日の2次審査に臨んできた。
白熱の議論
 1日目の冒頭、荒木ディレクターが80本の作品リストを提示して「同じ監督の作品で2本入っているのは1本に絞りたい」と発言すると、さっそく「それは絶対ですか」とある男性メンバーがかみつく。「多くの人にチャンスを与えたい」との荒木さんの説明に、なぜこの監督の作品を2本とも入れたいかを彼が滔々(とうとう)と語り出すところから、白熱した議論が始まった。
 「誰もが映像を撮れる時代において自主映画がやるべきことって、ちょっときれいな映像を撮ったりすることではないと思う。誰もが撮れるありふれた映像の力をどれくらい引き出すかということが、映画の目指すところだと思う」と力説すると、荒木さんも思わず「言うね」と感心する。
 すると別の男性が「俺はこの作品にバツをつけたけど、今の話を聞いて感動した。確かに評価する視点はあるよね」と受けて、ますますヒートアップしていった。
 こうして1つの作品にたっぷり時間をかけて意見を出し合った後、次の作品へと移るが、感心したのは、誰かが絶賛すると、すかさず別の人が欠点を指摘するなど、すべての作品について議論が途絶えないこと。自分が推す作品でもないのに、ある場面の細かい描写まで言及するなど、みんな微に入り細をうがって映画を“読み込んで”いる。80本もあるのに、選考にかけるこの情熱は何だと驚いた。
 「でも映画って本来、自分の妄想を刺激する道具であって、それを自由に話すことがものすごく大事だと思う。あそこで照れたり自意識過剰だったりしたら、何のために審査に参加したの、ということでしょう」
 後日、改めて荒木さんを訪ねると、そう言って審査会の意義を強調する。
多様性
 2日間にわたる丁々発止のやりとりの結果、最終的には荒木さんが入選作18本を選出した。最短は7分、最長は1時間50分で、女性監督が約半数の8人と例年になく多いのが特徴だ。ジャンルもカンフーアクションにロードムービーにミステリー、SF、さらにはドキュメンタリーにアニメーションと、とにかく多彩な作品がそろった。
 「予想もつかないものと出合いたいから間口を広げてある。こういうのがほしいとか、こういうのじゃないとだめなんだ、とか決めた段階でPFFは終わる。多様性が生かされるような状況にするのが、大人たちの責任だと思うんです」
 一方で、映画の見られ方が極端に変化してきているとも感じている。例えば今回の招待作品部門で、生誕100年となる米娯楽映画の巨匠、ロバート・アルドリッチ監督(1918~83年)を特集するが、ネット配信やテレビ放映はできるのに、スクリーンで上映できない作品が多いことに愕然(がくぜん)としたという。
 自主映画の作り手の中にも、大きなスクリーンで映画を見たことがない人が増えているというが、「PFFアワードに関しては、全く知らない不特定多数の人が自分の作品を見ることを体験してもらうという目的もある」と強調する。
 時代に抵抗する気はなく、パーソナルでもパブリックでも両方で見てくれればいい。「でも映画は本来、大勢で見る、大きい画面に映す、というところで始まったから、その体験はなくしたくない。それが映画祭に課せられた役割だと思います」と、荒木さんはきっぱりと語った。(文化部 藤井克郎)
 第40回ぴあフィルムフェスティバル 9月8日~22日、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催。月曜休館。コンペティション部門の「PFFアワード2018」のほか、招待作品部門として、PFFスペシャル講座「映画のコツ」、女も男もカッコいい!今こそアルドリッチ、追悼たむらまさきを語り尽くす、などの企画がある。
 「PFFアワード2018」は、9月20日の表彰式で、グランプリ(副賞100万円)など各賞を発表。最終審査は、佐藤公美(くみ)(映画プロデューサー)、大九(おおく)明子(映画監督)、佐藤信介(映画監督)、冨永昌敬(まさのり)(映画監督)、生田斗真(とうま)(俳優)の5氏が当たる。
 入選作品は次の通り(作品名五十音順)。
「愛讃讃」池添俊監督
「ある日本の絵描き少年」川尻将由(まさなお)監督
「一文字拳 序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-」中元(なかもと)雄監督
「オーファンズ・ブルース」工藤梨穂監督
「からっぽ」野村奈央監督
「カルチェ」植木咲楽(さくら)監督
「川と自転車」池田昌平監督
「貴美子のまち」芦澤麻有子(まゆこ)監督
「Good bye,Eric!」高階匠(たくみ)監督
「最期の星」小川紗良(さら)監督
「山河の子」胡旭●(=杉の木へんを丹に)(きょくとう)監督
「シアノス」松本剛(つよし)監督
「シャシャシャ」亀井史興(ふみおき)監督
「19歳」道本咲希(さき)監督
「すばらしき世界」石井達也監督
「小さな声で囁(ささや)いて」山本英(あきら)監督
「モフモフィクション」今津良樹監督
「わたの原」藤原芽生(めい)監督