【田村秀男のお金は知っている】地鶏の用心棒猫、地方創生での論戦望む - 産経ニュース

【田村秀男のお金は知っている】地鶏の用心棒猫、地方創生での論戦望む

地鶏の用心棒猫。背後は養鶏場=高知県いの町
 「わが輩は助っ人猫」である。ちょうど1年ほど前、本欄で紹介されたのだが、元気で地方創生に貢献していることを、帰郷中の筆者を通じて改めて伝えてもらおう。(夕刊フジ)
 場所は日本一の清流、仁淀川を見下ろす高知県いの町の山の中。南国の太陽を存分に浴びる地鶏「土佐ジロー」の養鶏場だ。わしら20匹の野良猫軍団が800羽の警護を引き受けている。鶏の天敵のネズミ、蛇や貂(テン)がめったに来なくなり、イノシシや猿も敬遠してほとんど近寄らなくなった。
 養鶏場主の西雅志さんは人手をかけなくても、外国人労働者を雇わなくてもいけると考えて、養鶏場を思い切って増設し、規模を2倍にした。わしらにとってみれば、歓迎だ。毎晩、跳んだり跳ねたりして遊ぶ養鶏場を覆うハンモック状のネットが2倍に広がったんだ。
 最近の奮闘ぶりをちょっと紹介する。まず、マムシ狩り。仲間の1匹がどじを踏んで顔を噛まれた。すると4匹がマムシ野郎をアタックし、動けなくしてやった。つい数日前に狸(タヌキ)も来たが、見ると怪我していてボロボロ、歩くのがやっとだ。わしらの餌のペットフードを嗅ぎつけたんだろう。西さんは「この狸は先住族で、お前たちのほうが新参者だ」とかばう。もとより、わしらはほとんど動けない獣に意地悪なんかしない。だから、餌を食べられても、わしらは見て見ぬふりをしている。
 わしらが鶏を襲いやしないかって? とんでもない。ここでは24羽の雌鳥に対して雄鳥が1羽の割合でいる。一区画の鶏舎には雄鳥が3羽で、ボスが序列2、3位の雄を従えている。敵が侵入してくると、2、3位は一目散に逃げ、ボスだけが俄然(がぜん)立ち向かう。雄の気性は荒く、その蹴爪や嘴(くちばし)で攻撃されたら、わしらとて散々な目に遭う。
 ボス鶏の権威は大変なもので、寝場所の鶏舎にボスが入らない限り、2、3位は外で待機するしかない。ハレム単位当たりの雌鶏二十数羽が生む卵はすべて有精卵だが、ボスのパワー入りだ。2、3位は雌達から拒絶されるし、嫌がる雌を追いかけようとしたら、ボスから半殺しにされるんだ。わしら猫族でもぞっとするほどのどう猛さなんだ。
 大自然の中で、野生本能そのままに生き、厳選された天然材料の餌を食べる土佐地鶏卵の味も滋養も評判上々だが、地元の悩みも深い。西さんのような地鶏の養鶏家がどんどん減っているんだ。高齢化が進む中で後継者が不足しているんだね。その結果、土佐地鶏のひなに対する需要が減り、ひな生産業者が廃業に追い込まれそうなんだ。せっかくわしらが無給、無休で用心棒を買って出ているのに、これじゃ先細りだと西さんたちが嘆いている。
 地方の問題は各地各様だろうが、後継者難は共通しているはずだ。9月の自民党総裁選では元地方創生担当相の石破茂さんが安倍晋三首相に挑戦するらしいが、それならきめ細かい創生策を打ち出して安倍さんにぶつけてほしいね。(産経新聞特別記者・田村秀男)