JR秋田駅 「雑草軍団」金足農への思いも重ね 高橋優「明日はきっといい日になる」

駅メロものがたり
インタビューに応じるシンガー・ソングライターの高橋優さん=8月18日、東京都港区(宮崎瑞穂撮影)

 夏の甲子園で強豪相手に「ミラクル」な活躍をした県立金足農業高校を擁する秋田県。その玄関口であるJR秋田駅では県出身のシンガー・ソングライター、高橋優さん(34)の「明日はきっといい日になる」が列車の発車メロディーに使われている。歌に込められた明日への希望と未来への期待は、全国の人たちが「雑草軍団」を見守ってきた思いと重なっていく。大躍進は「間違いなく秋田の元気になっている」と高橋さん。駅西口にはタイトルを替えた「秋田はきっといい日になる」と書かれた高橋さんの直筆ボードが設けられている。

こまち20周年に使用開始

 「明日はきっといい日になる」は2015年発表。「口ずさんでもらうことで明日をいい日にしようと考えた」と高橋さんが言うように、ライブでは大合唱になる代表曲の一つだ。「いろんな人にとっての優しい音楽、笑顔になれるような音楽を作りたかった」。

 JR秋田駅の発車メロディーは昨年3月22日、秋田新幹線こまち20周年の日から使われている。「最初、両親を連れて秋田駅まで聞きに行きました。でも父が気づかなくて、次の新幹線が来てもう一度流れるまで待っていた。僕が歌っていないこの曲を聴く機会、そうはないですしね。高橋家ではファニー(奇妙)な思い出。でも僕の作った歌が駅で流れるなんて」と感無量だ。

 秋田県横手市出身の高橋さんは北海道の大学に進学後、路上ライブ活動を経て10年にデビュー。「高校を出たときは反抗期で、秋田が嫌で家族からも離れたかった。でも出てすぐその良さに気がついた」。自然があり、人とのつながりがある故郷、「今となっては希少価値の塊」。その良さを多くの人に知ってほしいと16年からは県内各市で毎夏、野外ライブ「秋田CARAVAN MUSIC FES」を主催し、3度目の今年は9月1~2日、仙北市の田沢湖生保内公園野球場で開催する。

 高橋さんと「明日はきっといい日になる」に着目したのが、JR東日本秋田支社地域活性化推進室の吉田峰弘さん(33)。昨年のこまち20周年と、同4月1日のJR秋田駅改装オープンに合わせ「東京から来た人にも分かり、秋田の希望を感じさせる発車メロディーを作りたかった」。

 当時の室長、永杉博正さん(41)とタイトルの「明日」を「秋田」に替え、高橋さんに書いてもらうなどのアイデアをひねりだした。駅西口の「秋田はきっといい日になる」と書かれた高橋さん直筆のサインボードは、全国からファンが訪れて写真を撮影する「聖地」となっている。

30代の3人がつながり

 発車メロディーの編曲を担当したのは、秋田を拠点に活動するシンガー・ソングライター、渡部絢也さん(34)。「15秒以下でピタッと終わり、余韻が残る形」(JR秋田支社の吉田さん)という難しい注文を受けたのが昨年2月。3月のスタートまで時間がない中、渡部さんは全国の駅のメロディーを聴き比べ、JR茅ヶ崎駅で流れているサザンオールスターズの「希望の轍(わだち)」を参考にした。「ポップスを発車メロディーに組み込んでも問題なく、前向きで明るい印象になると分かった。原曲のイメージを損なわず前に進む力強さを演出できた」と振り返る。

 渡部さん、高橋さん、吉田さんとも同世代の30歳代前半。「こういう仕事をしていなければ、つながることのなかった人たちとつながれた。有り難いし、身が引き締まる。甘んじず、そういう人たちに届く歌をまた届けたい」と高橋さん。

編曲依頼に複雑な思いも

 秋田市出身の渡部さんは、中学時代から独学でギターをマスター。秋田高校、秋田大学を卒業して3年間、会社勤めをした後で音楽活動に入った。魚をコミカルに歌う「ちんあなごの歌」は、イラストレーターのいせきあいさん(34)が手がけたアニメーションとともに秋田でヒット。最近は2人で子供向けコンサートを開き全国各地を回っている。「歌と絵で心を豊かにしたい。子供たちは反応が敏感」と語る。

 編曲の依頼には、複雑な思いも。「本当は僕も自分のオリジナルで作ってみたかった」という。秋田名物の魚「ハタハタ」をコミカルに歌ったサンバなど、ご当地オリジナルの歌もレパートリーに持つ。実現はそう遠くないかもしれない。

 【JR秋田駅の発車メロディー】

https://www.youtube.com/watch?v=yVv7O4ig2Vk

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 駅で、列車や電車が発車する際に奏でられるメロディーは、日本独自の発達を遂げてきた。海外では、時間になると音もなく列車が走り出すのが通例で、時間に厳格な日本では、ベル音が使われた後、次第にメロディーに変わってきた経緯がある。地域ゆかりの歌が採用されることも多く、背景には街おこしにかける人々の熱意がある。知られざるドラマを紹介していく。(秋田支局長 藤沢志穂子)