【酒と海と空と】(2)若手記者が体験 3年目の佐渡「辛口産経」造り 朝メシ抜きが後になって…  - 産経ニュース

【酒と海と空と】(2)若手記者が体験 3年目の佐渡「辛口産経」造り 朝メシ抜きが後になって… 

仕込み使われるタンクの中に入り中を洗う太田記者=新潟県佐渡市の学校蔵
酒米を水に漬ける「浸漬」を行う体験者の皆さん。ネットごとにムラが出ないよう、合図で一斉に水に漬ける=新潟県佐渡市の学校蔵
背丈の倍近くもある、仕込み用のタンクに登る記者=新潟県佐渡市の学校蔵
麹室で汗だくになり作業する太田記者。「ボイルされているようで苦痛でした」=新潟県佐渡市の学校蔵
 産経新聞社が、佐渡の地域振興を支援しようと始まったオリジナル酒「辛口産経」の製造が今年で3年目を迎え、新潟支局の若手、入社2年目の太田泰記者が1週間、佐渡に泊まり込んで酒造りを体験した。その様子を6回にわたりリポートする。初日は蒸し上がった米と格闘し、クタクタになった太田記者。さて2日目は…。
5時半起き
 7月14日。「眠い…」。意識しているわけでもないのに、どうしても声が出てしまう。
 今日は午前7時半から「切り返し」と呼ばれる作業をするため、午前5時半に起きて学校蔵に向かう。旅館の外に出ると島の東からギラギラと太陽が照りつけ、早起きのセミがもう金切り声を上げている。今日も暑くなりそうだ。 
 寝ぼけまなこをこすりながら学校蔵に着くと、同じ体験をする3人はすでに透明の帽子をかぶって、製麹室の前に待機していた。
 その1人である山本美広さんに「朝ご飯、食べましたか」と笑顔で聞かれる。そういえば今朝は布団からはい出すのがやっとで、朝食を食べる余裕がなかった。蔵人の1人、瀬下要さん(35)に「おはようございます。じゃあ、手を洗いましょうか」と声をかけられ、今日の作業が始まった。
「もっと豪快に」
 麹室に入ると、昨日混ぜ合わせた麹の塊が布団をかぶった状態で寝かされていた。布団を剥がすと、中には昨日と同じ通りのこんもりとした塊が見えるが、ぱっと見ただけでは何が変化したか分からない。ただ、手に米をすくうと、乾燥しているせいか昨日よりもいくぶん固いように感じた。
 米の一粒一粒をよく見ると半透明の米粒の中に、なにやら白い小さい点のようなモノが見える。「ぽつぽつと見える白いのが麹菌の最初の菌糸が入り込んでいるところ。いまは半透明だけど菌糸が育つと、もっと白くなるよ」と、杜氏(とうじ)の中野徳司さん(42)が説明してくれた。
 最初の作業は「切り返し」と「盛り」だ。こんもりした麹を手で徐々に崩していき、塊を上から手のひらで押しつけるようにしながら粉々に砕く。温度と水分を均一にするとともに、麹菌に酸素を与え、繁殖を促す作業だ。今日の麹室は室温31度、湿度65パーセント。作業開始から数分で、額から汗が滝のように流れ始めた。中野さんからは「もっと豪快にやってくれ」と言われるが、なかなかはかどらない。朝食を食べてこなかったせいだろうか…。
 自分がえっちらおっちらと作業している横で、他の体験者はてきぱきと作業をこなしていく。「女子の方が元気がいいんじゃないか…」と中野さんがボソリ。まったくもって立つ瀬がなかった。
 麹の温度が適正かどうか、粒が均一になっているかどうかを確認すると、今度は縦50センチ、横30センチ、高さ10センチほどの、ざるそばのざるを大きくしたような木箱に麹を均等に分け、また寝かせる。
「吸水」をチェック
 麹室の作業が終わった後、今後は仕込み室に移動し、酒米60キロを洗米。その後、水を張った大きなたらいの中に、米をつける「浸漬(しんせき)」に入る。
 まずは、瀬下さんがタイマーを5分にセット。米をつけてから4分ほど経過すると、中野さんは黒いプラスチック製の小さな板を取り出し、上に米を乗せて吸水具合をチェックし始めた。
 水を吸った部分が半透明になり、水を吸わない米粒の中央にある白い部分が『目玉』といわれる。これが大き過ぎても、小さ過ぎても駄目なのだそうだ。目玉を見ながら、「(タイマーを)30秒延ばして」と中野さんが細かく指示する。
 時間が来ると、水を吸って重たくなったネットを手で持ち上げて水を切り、ブラスチック製の台に乗せる。設定時間はその日の室温や水温によっても変わってくるらしく、繊細な作業なのだと改めて感じた。
 その後は、これから酒を仕込むタンク内の清掃を体験。自分の背丈以上のタンクに入るのは、少し不思議な感覚だった。タンクの内側をスポンジでごしごし洗い、午前の作業は終了。
明日も早起きに
 少し時間が空き、夕方に麹室に再び入る。ちなみに、この時点で私は自分がボイルされているように感じる麹室が苦痛になっていた。原稿を書いている今、白状しよう。
 これから行うのは麹の温度が上がりすぎないように、よくかき混ぜる「仲仕事」。麹に空気を吸わせ、水分を均一にしていく役割もある。作業に入る前に、「この時が一番弾力があると思うよ」と中野さん。手で麹を触ると、グミのような感触が手に伝わってくる。
 麹をなるべく平らにするため、手でぐりぐりと押し広げていく。聞いているだけでは簡単そうに思えるかもしれないが、なかなかどうして…。箱の隅っこにある隙間を埋めようとしても、どうしても中央がくぼんでいるような感じになってしまう。
 20分ほど没頭し、今日の作業を終えた。中野さんに「明日はどうしますか」と聞かれる。明日の最初の作業、「出麹」は朝が早いため参加するかどうかを聞いているのだ。他の参加者3人から次々と「はい!」と元気な声が飛び出す。自分だけ行かないわけにはいかない、やってやろうではないか。負けじと威勢良く「はい!」と申し出ると、中野さんは「ちゃんと朝ご飯は食べてきてな」とニヤリ。麹室に笑い声が響いた。(太田泰)