都市部でのドローン配送、32年にも 目視外飛行解禁で「空の産業革命」後押し

安倍政権考
7月12日、ドローンによる荷物配送を目指す楽天は東京電力ベンチャーズ、地図最大手のゼンリンとともに実証実験に成功したと発表した。記者会見に臨んだ楽天の安藤公二常務執行役員(右)ら=東京都千代田区

 小型無人機(ドローン)の利活用に向け、政府が本腰を入れ始めた。平成32年にも、操縦者が目で機体を直接確認しなくても飛ばせる「目視外」の飛行を都市部で実現し、荷物配送などができるようにする。まずは今年度中に離島や山間部で目視外飛行を行えるようにする。現在は人の目が届かない場所での飛行は制限されているが、解禁されれば、物流や災害対応などのニーズが急拡大することが見込まれる。安全性を確保するためのルール整備などで実用化に向けた支援を行い、「空の産業革命」を推し進める考えだ。

経済の起爆剤

 「時間軸を相当、早めてやるべきだ」。6月13日、菅義偉官房長官(69)は自民党無人航空機普及・利用促進議員連盟(ドローン議連)の田中和徳衆院議員(69)や今枝宗一郎衆院議員(34)らと首相官邸で面会した際にこう述べ、ドローンを早期に実用化する必要性を強調したという。

 議連は、菅氏に「ドローンの社会実装」を加速するための政策を推進するよう32年度中に都市部での目視外飛行を実現することなどを求めた。今枝氏は記者団に対し「新しい産業として、日本経済の大きな起爆剤となれば」と語った。

 ドローンは遠隔操作や自動操縦で飛行する無人の航空機で、複数のプロペラで飛ぶタイプが一般的だ。羽音が似ていることなどから、英語で雄のハチを示す「drone」が語源とされる。宅配や測量などの産業利用が広がっているが、落下による事故なども相次いでいる。

 昨年11月には岐阜県大垣市で開かれたイベントで、上空から来場者に菓子をまいていたドローン(直径約85センチ、高さ約55センチ、重さ約4キロ)が約10メートルの高さから落下し、男女6人が額や肩を擦りむくなどの軽傷を負った。操縦したドローン製作会社は、国土交通省大阪航空局から飛行許可を得たドローンとは別の機体を当日飛ばしていたとして厳重注意を受けた。

 意図的な悪用もあった。27年4月22日、首相官邸屋上のヘリポートにドローンが落下しているのを職員が偶然発見した。元自衛官の男が「反原発を訴えるため」として官邸近くから飛ばしたもので、男は威力業務妨害容疑で逮捕、後に有罪判決を受けた。

 ドローンの法整備が進んだのは、この事件がきっかけだった。同年末に改正航空法が施行され、飛行に関する基本的なルールが作られ、空港周辺や家屋が密集した地域の上空などを「飛行の禁止空域」と定めて飛行を禁止した。また「飛行の方法」として使用ルールも定め、目視によって常時監視したり、時間帯を日中に限ったりするよう求めている。

 しかしドローンの利用拡大に向けては、目視外による広範囲の飛行が欠かせず、規制緩和を求める声が強まっている。このため政府は、まずは今年度から離島や山間部で目視外飛行ができるようにするため、航空法で承認基準を定めた「審査要領」を見直す。

 目視できない範囲でも、遠隔で監視する仕組みがあれば飛行を許可する。ただ当面の飛行場所は「第三者が立ち入る可能性の低い場所」とし、飛行高度は有人の航空機が通常飛ばない高さに抑えるといった要件を設ける。

 また、飛行経路に第三者が立ち入らないように遠隔で監視することや、機体の位置や速度、気象状況などを把握して、異常があれば着陸させるなどの対応をとることに加え、操縦者が最適な判断を下せるように教育訓練を行うことも求める。近く実用化に向けた実証実験を始める。

 政府は、離島や山間部での目視外飛行がうまくいけば、32年にも都市部に拡大する方針だ。第三者のいる地域を飛行できるよう審査要領を改めるほか、機体の安全性についての認証制度や、操縦者・運航管理者の資格制度などを新設することを検討する。

市場規模5倍に

 ドローンをめぐる環境整備が進めば、ニーズは大きく膨らむことが予想される。荷物の配送だけでなく、災害時には避難誘導や、人の立ち入りが困難な場所の状況把握などでの活躍が見込まれる。また、インフラの点検に役立てられるほか、農作物の診断を通じた営農管理の高度化も期待できる。

 民間調査会社のインプレス総合研究所によると、ドローンビジネスの国内市場規模は、28年度の353億円から、32年度には約5倍の1753億円に拡大する見通しだ。ドローンを活用すれば生産性の向上にもつながることから、安倍晋三政権は成長戦略の一つに掲げている。

 ただ、世界市場は2020(平成32)年に十数兆円規模に達するとの試算もあり、日本はドローンビジネスで出遅れているのが実情だ。今後、日本政府の規制緩和によって、市場をどこまで広げられるかに期待が集まっている。 (政治部 中村智隆)

 ドローンの規制 航空法では、ドローンの目視外や夜間の飛行を禁じ、危険物を輸送したり物を落下させたりすることも禁止している。また空港などの周辺上空と、住宅密集地など人口集中地区の上空、高度150メートル以上の飛行も制限。機体の性能、操縦者の飛行経歴や技能などについては一定の基準を設け、安全確保体制の構築や飛行マニュアルの作成なども求めている。違反した場合は50万円以下の罰金が科せられることもある。

 さらに、小型無人機等飛行禁止法は国会議事堂や首相官邸、原発などの原子力事業所などの周辺上空での飛行を禁止。防衛省などは米軍基地の上空などで飛行させないよう求めている。道路交通法上は、道路交通に影響を与える場合、道路使用許可を取得する必要がある。このほか、地方自治体の条例でも公園などでの飛行が制限されている。