湖のアオコは日差しを遮ると増える? 予想外の実験結果、環境対策に活用も

クローズアップ科学
光が植物プランクトンに与える影響を調べるため、円形のシートで覆った実験用の池=米ニューヨーク州のコーネル大(山道真人・東京大講師提供)

 小学校の理科でも習った植物プランクトンは、名前の通り植物の仲間だ。太陽の光をエネルギーとして使い、二酸化炭素と水から自分の体を作って暮らしている。それなら光が減れば当然、植物プランクトンも減りそうだ。ところが、日米チームの実験でこの予想は覆された。成果は生態系の調節につながり、環境対策に役立ちそうだ。

植物プランクトンと太陽光の関係を実験

 暑さの厳しい夏場に、池や湖の水面が緑色に染まり悪臭を放っていることがある。植物プランクトンの一種、藍藻(らんそう)が群れた「アオコ」だ。植物プランクトンが池で異常繁殖すると、水の透明度や酸素濃度が変化し、生態系に悪影響を及ぼす。

 その主な原因として注目されてきたのは、植物プランクトンの栄養素である窒素やリンなどが、生活排水によって池に流れ込んで生じる富栄養化だ。これと比べて、池に降り注ぐ太陽光の影響は小さいと考えられてきたという。

 こうした中、東北大の占部(うらべ)城太郎教授(生態学)らのチームは、光の量とプランクトンの盛衰の関係を調べる実験を米ニューヨーク州にあるコーネル大で行った。同大には形がそろった実験用の池が約40もあり、日本にはないこの施設を利用した。

 2015年の夏場、3カ月にわたり一部の池をシートで覆って水中に届く光を抑える方法で、プランクトンへの影響を調べた。植物の成長は一般に、光の量に依存する。したがって、光が減れば植物プランクトンも減るというのが、当たり前の予想だった。

水草とのライバル争いが謎を解く鍵

 ところが、結果は逆。光を抑えた池で植物プランクトンが増えていたのだ。占部教授は「何が起こったのだろうかと、最初はよく理解できなかった」と振り返る。

 「最初に池をきちんと掃除しなかったせいでは」「水鳥などが来て影響を与えたのでは」。不可解な現象を説明するため、チーム内ではさまざまな見方が飛び交ったが、説明しきれないものばかりだった。

 さじを投げかけたところで、数理モデルを使いシミュレーションを行ったメンバーが解決に導いた。光や栄養素をめぐって、植物プランクトンと水草がライバル争いをするというモデルが、実験の結果をピタリと説明できたのだ。

 その仕組みはこうだ。池に降り注ぐ光が減ると、水草が生息する池の底にも光が届きにくくなり、水草は打撃を受けて減る。一方、植物プランクトンは栄養素を獲得する上でのライバルが消えるほか、光の減少の影響を受けにくい水面近くでも生息できるため、増加するのだ。

 水草は池の底に束縛されるがゆえの悲しい宿命を負っている。これに対し植物プランクトンは、その身軽さで勝利を引き寄せた形だ。

生態系に影響、「対策は慎重に」

 この実験では、気になる結果も出た。光を抑えなかった池では、植物プランクトンが減って水草が増えるケースと、逆に植物プランクトンが増えて水草が減るケースもあった。同じ条件のはずなのに、なぜ結果が分かれるのだろう。

 占部教授は「ゆらぎともいえる微妙な差で、どちらが先に優先権を握るかで結果が分かれたのだろう」と話す。

 今回の実験で富栄養化だけでなく、光の量が生態系に大きな影響を与えることを実証。この結果を今年7月、英科学誌で発表した。

 今後さらに、天候や池の周りの植生の違いなどによる光の変化を解明していくことで、冒頭で紹介したアオコの抑制など、環境対策につながりそうだ。占部教授は「アオコ対策で光を遮るといった考え方があるが、条件によっては逆効果になる恐れもある」と指摘。池の上に太陽電池パネルを並べる「水上太陽光発電」は、光を遮るため注意深く行う必要があるという。

 占部教授は「光の制御は慎重に考えなければならないのに、分かっていないことが多い。よく理解しながらやらないと、思わぬ結果になるかもしれない」と強調した。(科学部 草下健夫)