【赤字のお仕事】「リンカン」って誰のこと? 教科書と新聞表記の微妙な違い - 産経ニュース

【赤字のお仕事】「リンカン」って誰のこと? 教科書と新聞表記の微妙な違い

 もう半年前のことになってしまうのですが、高校入試の時期になると産経新聞東京本社では、関東の各都県の公立高校入試の問題と解答の分冊を発行しています。この分冊は、各都県の読者に新聞に挟み込む形(折り込み)で届けています。
 校閲部では入試問題と解答のチェックをしています、というと誤解されそうですが、問題内容を校閲しているわけではなく、分冊の各面に、入試問題と解答が漏れなくあるかということをチェックしているのです。
 そのなかで、茨城県の入試問題と解答をチェックしていたときのことです。「社会」の解答で、ある標準解答とされるものが目に留まりました。
 「リンカン」
 一瞬「?」という思いとともに、答えが間違っているのかと思ってしまいました。
 問題を確認してみると以下の通りです。
 「アメリカでは1861年に南北戦争がおこったが、この戦争中に『人民の、人民による、人民のための政治』と演説した大統領の名前を書きなさい。(以下略)」
 解答の備考には「『リンカーン』でも可」とありましたが、今の中学生は社会科の授業で「リンカン」と習うのが多数になっているのかと思わされました。
 いくつかある教科書発行会社の中で、社会科教科書を発行している帝国書院のホームページに説明がありました。
 「社会科Q&A」の中で「アメリカ合衆国大統領『リンカーン』を『リンカン』と表記するようになったのはなぜですか」との問いに対して、「…グローバル化が急速に進展している現状を踏まえ、できる限り現地の読み方に近い表現で外来語を書き表しています。…弊社では『リンカン』を日本語読みとして使用しています。…他社でも『リンカン』と記載している出版社があります」(抜粋)。
 社会の国際化に伴い現地読みに近づけようとする流れがあって、教科書での表記も変わってきていることのようです。中学校ではまだ全ての教科書というわけではないようですが、高校では、ほぼ「リンカン」で統一されているようです。
 時代の流れといってしまえばその通りなのかもしれませんが、新聞ではまだ「リンカーン」の表記で、弊社の用語の基準集である『産経ハンドブック』では、外国人名表記例の中に「リンカーン」を載せています。
 出稿部からはたまに、「リンカーン」のファーストネームの表記は「エーブラハム」か「エイブラハム」かを聞かれることはあります(産経は「エーブラハム」)。
 ですが、これからは若い記者から「リンカン」の間違いでは、と聞かれてしまうのでしょうか。
 上記、帝国書院のHPでは、ほかにも新聞などとは表記が違うものの説明がありました。今回は省略しますが、また別の機会に触れたいと思います。
(な)
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 【赤字のお仕事】校閲部記者が、日ごろの編集業務で体験した興味深いエピソードや豆知識をつづったリレーエッセーです。