会社の代表が複数…ベンチャー企業で広がる「チーム型創業」とは

経済インサイド
Warisの代表取締役を務める左から米倉史夏氏、田中美和氏、河京子氏(同社提供)

 一般的に会社の代表者は1人が多い。ただ最近設立されたベンチャー企業の中には、複数の代表者がいたり、数人で起業するいわゆる「チーム型創業」とも呼ばれるケースが増えている。複数人による経営は「考え方や方針の違いから対立を招きやすい」と批判されがちだが、「創業時の困難を共有し、個々のスキルを武器にできれば大きな力になる」ようだ。

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 JR山手線の田町駅近くにオフィスを構えるWaris(ワリス、東京都港区)はフリーランスの女性と仕事とのマッチングサービスを手がける。

 前職のリクルートで婚礼関連の新規事業立ち上げに関わったWarisの米倉史夏(ふみか)代表取締役。リクルート時代に取得したキャリアカウンセラーの資格を生かしたいと平成24年に退職。フリーランスとして活動するうちに、ある人の紹介で、日本経済新聞社グループの出版社である日経BPの元記者、田中美和氏と知り合う。田中氏も21年にキャリアカウンセラーの資格を取得しており、すぐに意気投合。「何か新しいことをやりたいよね」と話すようになる。田中氏の知り合いで、元リクルートキャリア社員の河京子氏も加わった。

 3人に共通していたのが「フリーランスで働く女性のためのキャリア支援をビジネスにしたい」という思いだった。「1人で起業するよりも、3人で力を合わせて分担しながら進めたら、もっと効率よく素早く会社を立ち上げ、ビジネスを軌道に乗せられるのではないか」。そう考えた3人は早速、ビジネスプラン作りと並行しながら、投資会社のベンチャーキャピタル(VC)などを回って出資を募り、25年にワリスを立ち上げる。米倉、田中、河の3氏は全員、共同創業者であり代表取締役だ。

 3氏にはそれぞれの得意分野がある。リクルートの前にコンサルティング会社に籍を置いていた米倉氏は経営管理や経営企画、マスコミ出身の田中氏は広報やマーケティング、河氏は営業を主に担当する。特に創業初期は資金調達や販路開拓などで人との出会いが大きく、会社の命運を左右することもあり、米倉氏は「それぞれが持つ人脈が生かせた」と振り返る。

 3氏の意見が割れることもあるが、「3人なので2対1になる。両極端の意見があっても、最後の1人は客観的にそれぞれの良い点、悪い点を指摘することで、結局は落としどころができる」(米倉氏)と打ち明ける。

 オリジナル結婚式の企画を手がけるCRAZY(クレイジー、東京都墨田区)の創業には4人が関わった。24年7月、同じコンサルティング会社の同期だった山川咲(さき)、遠藤理恵の両氏が共同で同社の前身の会社を創業し、新事業「CRAZY WEDDING(クレイジーウエディング)」を立ち上げた。

 一方、山川氏の夫である森山和彦氏も自身が務めていたコンサルティング会社を23年夏に退社し、クレイジーウエディングに合流。森山氏は前職時代に中小企業から大企業までの組織改革コンサルタントとしてトップセールスの実績を持つ。

 そんな森山氏と十年来のつきあいなのが、榊伸一郎氏。「健康で楽しく生きる、人間関係が良好でフラットかつオープンな会社」という森山氏の考え方に共感し、創業メンバーに加わった。

 創業メンバーの「4人が皆、社長をやりたかった」(森山氏)というが、共同代表というかたちは取らなかった。何カ月もの間、4人で話し合いを重ねた結果、働く人にとって健康かつ働きやすい環境を整えることが会社のトップとして最重要な仕事という認識が共有されるようになり、人事や労務関係に精通した森山氏が社長に就いた。

 森山氏は自らを「プロデューサー型経営者」と話す。カリスマ性のある山川氏、営業に強い遠藤氏、行動力にたけた榊氏と、それぞれ持ち味や強みを生かし、弱い部分はお互いにカバーし合えることが「チーム型創業の魅力」と強調した。

 その半面、「なあなあ」で物事を済ませる風潮ができ、経営に緊張感がなくなる危険性もはらむ。森山氏は「時間は守る、言い訳を許さないなど、最低限、人としてあたりまえのことをきちんと守ることが大切」と指摘する。

 ワリスもクレイジーも共通するのは起業から短時間で事業を軌道にのせたことだ。

 チーム型創業について詳しい東京都中小企業振興公社の斎藤麻衣子・人材支援担当係長は「互いの能力を補うことで、事業を早く軌道に乗せられるのが大きなメリット」と話す。特に女性は出産や子育て、介護などの理由でビジネスの現場から一時的に離れざるを得ないケースもある。育児などによる制約を受けやすい女性にとって、チーム型創業は起業促進にとって有効な手段となり得るといえそうだ。(経済本部 松村信仁)