山の遭難、ドローンで救え 暗闇の山中で初のロボコン開催

びっくりサイエンス
レスキューキットをぶら下げて飛び立つドローン=2017年10月、北海道上士幌町(トラストバンク提供)

 11日は3年目を迎えた「山の日」。山岳遭難が増える中、遭難者を救助するロボットの競技大会も今年で3年目となる。実際の捜索に協力した実力派も出場するロボコンで、10月に北海道の山中を舞台に技術を競う。今年は捜索が難しい夜間に初めて開催され、無人航空機ドローンの活躍が注目されそうだ。

広大な山中、危険な場所を上空から探査

 警察庁の発表によると、2017年における山岳遭難の発生件数は2583件、遭難者数は3111人と、統計の残る1961年以降で最多を記録した。

 こうした中、ドローンを活用した捜索・救助への期待が高まっている。人間が立ち入れない危険な場所を上空から観察したり、広大な山を効率的に探査したりすることが可能になるからだ。

 活躍はすでに始まっている。ドローンを活用したサービスを提供するアイ・ロボティクス(東京)は昨年6月、新潟県十日町での捜索活動に参加。空から現場状況を広く把握することで地上部隊の捜索範囲を絞り込み、1年以上前に遭難した対象者の遺体発見に結びつけた。

 損保ジャパン日本興亜は今年5月、新潟県・五頭連峰で登山中の親子が遭難した事故で、ドローンを使った捜索を行った。防災協定を結ぶ新潟県の要請を受けたものだ。同社には、自動車事故の現場検証や大規模災害時の状況把握にドローンを使ってきたノウハウがある。防災協定を結ぶ自治体からの救助要請は増えており、熊本地震でも行方不明者の捜索に貢献した。

捜索の空白時間を埋める

 両社はともに、過去2回の山岳救助ロボコン「ジャパン・イノベーション・チャレンジ」に参加し、入賞経験もある実力派だ。

 今年は10月10~12日に開催される。7月30日に東京都内で実施された参加者向け説明会には、産業用ロボットメーカーやシステム開発会社、損害保険会社、大学・学校関係者などが集まった。

 競技はこれまで昼間に行ってきたが、今年は初めての夜間開催。スタートはほぼ日没と同時の午後5時だ。人力での捜索・救助が困難になる夜間に活動できるロボットやドローンの開発に弾みがつけば、捜索の空白時間を埋められる可能性が開く。

夜間、氷点下で競技

 舞台となるのは北海道・十勝地方の北に位置する上士幌町にある、およそ3平方キロの山だ。コンテストに協力する同町企画財政課の梶達(とおる)主査によると、「原生林に近い、あまり整備されていない町有林」だという。「十勝晴れ」と呼ばれる晴天が多い気候だが、冬は放射冷却で朝晩は冷え込む。10月中旬でも雪がちらつくことも。開催時の気温は氷点下になる可能性があり、機材のバッテリーの持ちにも影響しそうだ。

 「おーい、誰か~ 助けてくださーい」。山中には遭難者役のマネキンが設置され、近くのスピーカーからは助けを求める声がリピート再生される。マネキンは熱を感知するサーモグラフィーで探索できるよう表面に携帯カイロを貼り、服を着せる。

 競技課題はこのマネキンを山中で発見し、位置情報と写真を取得する「発見」と、救助用のレスキューキットをマネキンの近くまで運ぶ「駆け付け」の2つだ。キットは重さ約3キロの筒状の木製ケースで、無線機器や食料などが入っている想定。遭難者に当たるとけがをさせる恐れがあるので、マネキンから3~8メートルの同心円上に運ぶ。ドローンで上空から降ろすほか、高所から落としてもいいが、キットが破損した場合は失敗となる。

 人間は山に入れないルールで、指定の場所からロボットを遠隔操作するか、自律的に行動できるロボットを使うことになる。ロボットの種類は限定されていないがドローンを使用するチームがほとんどだという。賞金総額は500万円。公式サイトで9月7日まで参加申し込みを受け付けている。

難度高め開発を加速

 コンテストを主催するトラストバンク(東京)の上村龍文取締役は「(2016年に)初めて開催しようとしたとき、『こんなに難しい課題に挑戦する人なんていない』といわれた」と振り返る。あえて挑戦的な目標を設定した過去2回のコンテストを経て、ロボだけでなく、ロボが集めた画像の解析手法や人工知能(AI)技術などが向上。救助用キットを地上に降ろすため、釣り具メーカーが作った電動リールを改良するなど、「主催側が考えもしなかった組み合わせやイノベーションが生まれる」(上村取締役)という。

 夜間開催となる今年は飛躍的に難易度が上がったが、「現場で役に立ち、命が救えるロボットの開発を加速できるのでは」と、上村取締役は期待を込める。大会期間中には、これまでに課題を達成したチームと地元消防関係者による共同訓練も行う。技術向上だけでなく、現場での実用に耐える運用体制の構築を目指す。(科学部 松田麻希)