深まらなかった憲法改正議論 立憲民主党などは「政局」理由に土俵にすら上がらず

野党ウオッチ
平成28年11月24日、衆院憲法審査会の実質的議論で発言する当時民進党の枝野幸男氏(左)と辻元清美氏。今年の通常国会はこのような場面が1回もなかった(斎藤良雄撮影)

 7月22日に閉会した先の通常国会では、憲法改正に向けた議論が一向に深まらなかった。衆参憲法審査会での実質的な審議は参院での1回だけで、衆院ではついに一度も行われなかった。森友・加計学園問題など国会情勢のあおりを受けた面が大きいが、政局に左右されず憲法のあり方について議論を積み重ねるのが立法府の責務のはずだが、そんな通常国会での憲法論議を振り返る。

 自民党は3月の党大会に合わせ、自衛隊の明記など改憲4項目の「条文イメージ・たたき台素案」をまとめた。これを受けて衆院憲法審査会の与党筆頭幹事を務める自民党の中谷元・元防衛相(60)は、野党筆頭幹事の立憲民主党の山花郁夫衆院議員(51)に対し、審査会開催の前提となる幹事懇談会の開催を呼びかけてきた。

 しかし、野党側は学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題など課題が山積していることなどを理由に開催に応じてこなかった。与野党筆頭幹事が先の通常国会初となる幹事懇談会を4月19日に開催することで合意したのは4月17日だった。実に国会開会から約3カ月間も幹事懇談会すら開けない状態が続いていたのだ。

 しかも、その19日に予定していた幹事懇談会も開かれなかった。直前に行われた野党6党派の幹事長・書記局長会談で、財務省の決裁文書改竄(かいざん)や事務次官によるセクハラ問題をめぐって麻生太郎財務相(77)の辞任などを求めて委員会などの日程協議に応じない方針が決まったためで、非公式な意見交換会にとどまった。

 その後、4~5月の大型連休を挟んで「18連休」と批判された野党6党派による長期の審議拒否があり、結局、正式な幹事懇談会が開かれたのは5月11日だった。同月17日には審査会を開催したが、国民民主党の結党に伴い新たな幹事を選任しただけで、討議は行われなかった。

 この時期に憲法審査会の議題として浮上してきたのが憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案だ。平成27年に成立した改正公職選挙法で定めた洋上投票の拡大、共通投票所の設置などの規定を国民投票法にも反映する内容で、公明党が提案した。27年の公選法改正は全会派一致で可決しており、国民投票法改正案も野党の賛同が得られると思われたが、こちらも政局のあおりを受け与野党の協議は紆余(うよ)曲折をたどった。

 与野党筆頭間の協議の結果、一度は共産、社民両党を除く与野党で改正案を共同提出する見通しとなった。しかし万事休す。5月31日の衆院憲法審幹事懇で与党筆頭幹事の中谷氏が6月7日に審査会を開いて改正案の趣旨説明と質疑を行い、同日中の採決を提案したことで流れが変わった。共同提案に加わらず反対する会派があるにも関わらず、改正案の審議を1日で済ませようとする与党側に立憲民主党の辻元清美国対委員長(58)らが猛反発したのだ。

 翌6月1日には野党6党派の国対委員長が会談し、国民投票法改正案の国会提出は認めないとの認識で一致し、土壇場でちゃぶ台をひっくり返す形となった。中谷氏は記者団に「(改正案の)内容的には了承をもらっているのに本当に腑に落ちない。もっと協力していただきたい」と不満をぶちまけた。野党の憲法審関係者も「複雑骨折したような状態だ…」と漏らした。

 終わってみれば、国会の会期が1カ月以上も延長されたにもかかわらず、内容では与野党でほぼ合意できている国民投票法改正案でさえ趣旨説明を行っただけにとどまり、成立は次期国会以降に持ち越すことになった。

 自民党は当初、改憲4項目をたたき台に、憲法審査会での改憲議論を加速させたい考えだったが、議論どころか4項目を提示することすらかなわなかった。憲法審査会は従来、政局に左右されずに開催するのが慣例とされてきたが、近年その慣例が崩れつつある。辻元氏は「他の委員会で日程協議に応じない中、憲法審査会も同じ扱いだ」と言い切る。

 一方、自民党の改憲4項目のような具体的な改憲案が示されている段階では、それに反対する野党が審査会の開催自体を阻み、議論が一歩も前に進まないことも明らかになってきた。

 憲法改正は、最終的には国民が国民投票という形で是非を直接判断する。国会の仕事は、あくまで発議まで。国民に判断材料を提供するのが国会の役目といえるが、憲法審査会の議論が滞っている現状は国民の権利を奪っているに等しい。立憲民主党などは自民党総裁の安倍晋三首相(63)が提唱した改憲に反対している。しかし、意見が違うからといって政局を持ち出して議論の土俵にすら上がらない姿勢は国会議員としての役割を放棄したことにならないだろうか。 (政治部 小沢慶太)