【びっくりサイエンス】絶滅種のドジョウも3D画像で“復活” 国内初の標本館がネット上に開設 - 産経ニュース

【びっくりサイエンス】絶滅種のドジョウも3D画像で“復活” 国内初の標本館がネット上に開設

かつては身近な存在だったが現在は準絶滅危惧種となっているドジョウ(九州大提供)
ドジョウの仲間なのに泳ぎ方がアユそっくりなアユモドキ(九州大提供)
ドジョウの3D標本(九州大提供)
絶滅したジンダイドジョウの3D骨格標本(九州大提供)
 童謡の歌詞に登場し、食用としても親しまれてきた淡水魚「ドジョウ」。環境の激変で絶滅の恐れが高まる中、九州大などの研究チームは今月、絶滅種を含む日本産の全35種類の標本を3D画像化した国内初の標本館をインターネット上に開設。「多くの人にドジョウの面白さや大切さを感じてほしい」と呼びかけている。
田んぼや小川が激減、高まる絶滅の危機
 日本には亜種も含め35種類のドジョウ類が生息し、それぞれ多様な水環境に適応して、さまざまな形態に進化してきた。たとえば京都府や岡山県に生息する国の天然記念物アユモドキは、ドジョウの仲間なのに体が縦に平らで体高も高く、泳ぐ姿は名前の通りアユに似ている。
 だが、戦後の高度経済成長期以降、宅地造成などの目的で全国の里山が開発されて田んぼや小川が激減。さらに侵入が相次ぐ多様な外来種との競争で、ドジョウの仲間は餌場や繁殖場を次々と失い、生息域が大きく狭まった。
 環境変化の影響で、三重県の天然記念物で体長が30センチにも達することが知られていたジンダイドジョウは1970年代後半に絶滅。京都府の宇治川や大阪府の淀川などに生息していたヨドコガタスジシマドジョウも、90年代後半に絶滅したとみられている。環境省も今年5月に発表した最新版のレッドリストで、ドジョウを将来的に絶滅する可能性がある「準絶滅危惧種」に指定したばかりだ。
 ドジョウの多様な進化を解明するには、遺伝学的な研究だけでなく形態からの研究も欠かせない。ドジョウを取り巻く環境が悪化していることから、研究チームはドジョウの形態に関するデータをきちんと整理・保存し後世に伝えていく取り組みが急務と判断した。
CTデータから作成、ぐるぐる回せる3D標本
 ドジョウの形態を保存する最も基本的な方法は、採取した個体をアルコールやホルマリンに漬ける生物標本だが、時間とともに劣化する上、多くは倉庫などに死蔵されて人の目に触れない。そこで、劣化がなく半永久的に保存できるデジタルデータにしてオンライン公開することにした。
 全国の博物館や研究機関が保管しているドジョウ類の生物標本を、コンピューター断層撮影装置(CT)で撮影。膨大な撮影データから、魚体の形態を表す3D標本と内部骨格が分かる3D骨格標本を作った。
 これらの3D標本は、パソコンのマウスなどの操作でぐるぐると回転させ、形状を細かく観察できる。絶滅してしまったジンダイドジョウ、ヨドコガタスジシマドジョウも、あらゆる角度から見ることが可能だ。
 このほか、研究者向けには3D標本に構成する前のCT撮影の生データも提供している。生物標本のカラー写真も用意した。
博物館からネットへ、淡水二枚貝も検討中
 劣化の懸念がある生物標本をCT撮影し、3D標本として保存する取り組みは近年注目されている。保存性だけでなく、ネット上にデータがあることから、いちいち重要な標本のある場所に足を運ばなくても済むため、効率的に研究を進められる長所もあるからだ。
 国内では、既に山階鳥類研究所が鳥類の標本データベースの一部をCTデータ化、3Dデータ化して公開している。ドジョウの場合は、淡水魚では日本初の取り組みという位置づけだ。
 チームの鹿野雄一・九州大准教授は「多くの生物標本は誰の目にも触れることなく博物館に眠っている。とにかく人の目に触れることが大切だ」と強調。
 その上で「どうしてこんなに種類がいるんだろうと感じて生物の形態の進化に興味を抱き、さらにドジョウを守りたいという気持ちにつながっていくことを期待している」と話す。
 鹿野准教授によると、ドジョウを選択したのは比較的、生物標本を集めやすかったからで、まずは手始めの第一歩。今後もさらに多様な生物に手を広げていく構想で、第2弾は環境に敏感で絶滅が進んでいる淡水二枚貝の3D標本館を検討しているという。
(科学部 伊藤壽一郎)
 ドジョウの3D標本館のアドレスは http://ffish.asia/loachesOfJapan3D