「一人も閣僚のクビ取れず…」今国会、野党の戦果ゼロ? 立憲民主と国民民主は対立激化

野党ウオッチ
衆院本会議で内閣不信任決議案を提出した立憲民主党の枝野幸男代表(手前)の趣旨説明を聞く安倍晋三首相(後列右)。枝野氏の「演説」は衆院で過去最高の2時間43分に及んだ=7月20日午後(春名中撮影)

 約半年間にわたった今国会は「モリ・カケ問題」や財務事務次官のセクハラ問題による辞任など、野党にとっては追及材料に恵まれた。しかし、最低限の目標としていた麻生太郎財務相兼副総理(77)の辞任すら叶わず「戦果ゼロ」に等しい結果に終わった。衆院は立憲民主党、参院は国民民主党と衆参で野党第一党がそれぞれ異なる「ねじれ」もあり、両党の路線対立も際立った。

 「一人も閣僚のクビを取れなかった。批判を甘んじて受けないといけない」

 国民民主党の玉木雄一郎共同代表(49)は20日、国会内で記者団にこう述べ、野党のふがいなさに悔しさをにじませた。今国会で中央省庁や閣僚の不祥事が立て続けに起きたにもかかわらず、野党は「墓穴」を掘る形で安倍晋三政権を追い込むチャンスを逃し続けた。

 1月下旬は、茂木敏充経済再生担当相(62)の秘書らが地元で線香や衆議院手帳を配っていた問題が浮上し、野党は格好の攻撃材料とみて攻勢を強めた。ところが、当時の希望の党代表だった玉木氏や立憲民主党の近藤昭一副代表(60)ら野党議員にも線香や香典代などの支出が続々と発覚し、いわゆる「ブーメラン」の形で追及はいつの間にか立ち消えとなった。

 国会対応の稚拙さが際立ったのは大型連休を挟んで「18連休」と批判された4~5月の審議拒否だろう。

 立憲民主党などの主要野党は、財務事務次官のセクハラ問題に絡めて麻生氏の辞任などを求め、論戦を拒み続けた。だが、この欠席戦術は「時間とカネの無駄遣い」などと厳しい世論の逆風にあい、復帰条件としていた「麻生氏の辞任」を実現できないまま審議に復帰。朝日新聞は「満額回答にほど遠いまま正常化に応じざるを得なかった」と突き放した。

 18連休の最中、旧民進党と旧希望の党が合流して国民民主党が誕生したことも他の野党や世間から顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 玉木氏は大型連休明け直後の5月7日(月)の結党大会後、記者会見で「原則、審議拒否はしない」と打ち出した。ただ、この日は参院決算委員会が開かれ、野党の大半が欠席していたため、結党当日に“公約破り”の失態を演じた。

 日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事(54)はツイッターで「GW(ゴールデンウイーク)開けの平日に、いきなり国会サボって身内の集まりを実施するのが、国民民主の政治感覚なんでしょうね」と皮肉った。

 5月以降は、政府・与党に徹底抗戦の立憲民主党と、「対決より解決」を掲げる国民民主党の路線対立が明確になり、結果的に野党同士で撃ち合う事態に発展した。

 「野党間で必死になって話し合ってきたつもりだ。ただ、最後の出口の戦い方がそれぞれ分かれてしまった…」

 国会最終盤の7月19日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案が参院内閣委員会で可決された後の記者会見で、国民民主党の矢田稚子(わかこ)野党筆頭理事(52)は目に涙を浮かべた。

 同委員会では、自由党の森裕子(62)、山本太郎(43)両参院議員が「カジノより被災者を助けて!」と書いた垂れ幕を掲げたり、委員長の読み上げる紙を奪ったりして抵抗。立憲民主党の川田龍平参院議員(42)は石井啓一国土交通相(60)を「人殺し大臣!」と罵倒するなど大荒れとなった。

 国民民主党はIR法案自体には反対していたが、政府にギャンブル依存症の治療や社会復帰対策などを求めた付帯決議を自民、公明、日本維新の会とともに共同提出した。決議を読み上げる矢田氏に対しても「なぜそんなものを読むのか!」と「身内」から容赦ないやじが浴びせられた。

 矢田氏と並んで記者会見に臨んだ国民民主党会派の舟山康江参院国対委員長(52)は「聞き捨てならないやじも聞こえてきた。品格を落とすような行為は同じ立法府の人間として残念だ」と憤った。

 野党間のちぐはぐを挙げれば切りがないが、とりわけ国会対応をめぐる国民民主、立憲民主両党の溝は深刻だ。国民民主党幹部は「立憲民主党がやっていることが全部正しいとは限らない。われわれはわれわれの道を進めばいい」と語る。「友党」と呼びかけていたのも今は昔だ。

 今国会は、与野党による国会改革提言も話題を呼んだ。立憲民主党は、国会提出資料を改竄(かいざん)した官僚の厳罰強化や党首討論の時間延長などの改革案をまとめたが、何よりも野党自身の国会対応も見直すべき点は多くある。 (政治部 広池慶一)