進む銀行の「平日休業・土日営業」 柔軟運営でコスト削減と利便性向上を両立

経済インサイド
進む銀行の平日休業・土日営業

 金融庁が銀行店舗の平日休業を認める規制緩和を今夏にも実施する。日銀の大規模金融緩和による低金利の長期化や、人口減少の影響で経営環境が悪化する地方銀行などに対し柔軟な店舗運営を認め、コスト削減を後押しする狙いだ。既に平成28年9月には規制緩和で“昼休み”の導入が認められ、代わりに従来休みだった土日祝日を営業日にするケースが増えており、杓子(しゃくし)定規だった銀行の営業形態も随分様変わりした。

 「地域によっては過疎化が進み、現地採用も難しくなってきている」

 7月2日に全店舗の約1割に当たる14支店で昼休み(平日午後0時半~1時半)を初めて導入した北海道銀行の担当者は、その背景についてこう語る。

 同行では人口が少ない地域は4~7人で店舗を運営しており、交代で昼休みを取るとその間は電話が鳴っても出られなかったり、窓口の待ち時間が長くなったりと、顧客対応が不十分になっていた。昼休み導入後はしっかり休憩を取りながらサービスを維持することが可能になったという。

 かつては、企業の決済に利用される「当座預金」を扱う店舗では資金繰りに影響が出ないよう営業時間が午前9時~午後3時と定められていたが、28年9月の規制緩和で昼間も休業できるようになった。その後、昼休みを取り入れる地銀が全国で増え、今年7月だけでも北海道銀のほか、みちのく銀行、東邦銀行、北陸銀行、佐賀銀行、富山第一銀行が導入または拡大した。

 ただ、今も原則として休業日は土曜・日曜や祝日、年末年始に限定すると関係法令で定められ、平日丸一日の休業は困難だ。金融庁は7月1日にパブリックコメントを締め切った新たな規制緩和案で平日休業など柔軟な店舗運営を認める。

 また、複数銀行が共同で1つの店舗を運営しやすくなるよう職員が別の銀行の業務をできることや、顧客情報保護の措置を取れば、ネットワーク上のファイアウオール(安全隔壁)などを設ける必要がないことも監督指針で明確にする。こちらは持ち株会社(ホールディングス=HD)傘下の“兄弟銀行”や経営統合が決まった銀行同士で導入が進むとみられる。

 金融庁が規制緩和を進める背景には、地銀の厳しい懐事情がある。全国の地銀106行の30年3月期決算では、本業のもうけを示す実質業務純益が前期比5.1%減の1兆2178億円にとどまり、最終損益も0.4%減の9965億円と5年ぶりに1兆円を割り込んだ。長引く超低金利で貸し出しの増加が収益につながらず、比較的リスクが高い外国債券の運用に乗り出した結果、失敗して損失を計上したケースもある。

 ただでさえ地方で人口が急減する中、海外に活路を見いだせない地銀の経営は構造的に苦しい。不採算店舗の整理統合はメガバンクも進める金融業界の“トレンド”で、生き残るにはコスト削減が不可欠だ。

 とはいえ、「地元銀行が店舗を撤退すれば地域経済への打撃が大きく、退潮がさらに進みかねない」(大手地銀幹部)のも事実。当面は店舗の統廃合を可能な限り避けながら、平日休業を導入した店舗から忙しい店舗に職員を回すなど少ない職員でも対応できるように人繰りの工夫を検討し、低金利環境の改善を一日千秋の思いで待っている。

 一方、全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は金融庁の規制緩和について、「平日が休めるということではなく、休日営業や営業時間を考える非常に大きな契機になる」と指摘する。例え地方でも人口が多い都市部などでは、休日に営業することで普段は銀行店舗に足を運ばない働き盛りの世代を取り込めると期待されている。

 住宅ローンの相談を専門で受けるような店舗は当座預金決済を扱わないため、住宅メーカーの定休日に合わせて火曜や水曜に休み、相談が多い土日を営業日にするといった工夫が可能だ。会社帰りのサラリーマンが立ち寄りやすいよう夜間営業の窓口も増えそうだ。

 地銀各行も「住宅地の店舗や資産運用の店舗などは平日休業(土日営業)を検討する余地がある」(福島県の東邦銀行担当者)とビジネスチャンスの活用に余念がない。

 都市部の地銀では既に休日営業の店舗が続々と出店している。東京スター銀行では店舗面積を従来の5分の1程度に抑えた相談業務のみの“超小型店舗”を拡充しており、5月には東京・三軒茶屋に3店舗目を開いた。

 佐藤誠治頭取は「土日に営業することで、働いている方々が、家族で、夫婦で、落ち着いて来店できるようにしたい」と話す。

 金融業界が生き残りのためこうした顧客本位の営業形態を模索・拡充すれば、利用者にとっても用事がなければ立ち寄らない場所だった銀行店舗がより身近な存在になる可能性がある。(経済本部 田辺裕晶)