浪花節か深謀遠慮か…B1川崎の新オーナーDeNA、“東芝色”強いチーム名を変えない理由

スポーツ異聞
B1川崎の新ロゴマークが入ったボールを手にする新運営会社の元沢伸夫社長(右)と北卓也監督。チーム名は変更しなかった=4日、川崎市中原区(奥村信哉撮影)

 バスケットボール男子Bリーグ1部(B1)の強豪、川崎の運営権が7月1日付で東芝からIT大手のDeNAに移った。同4日には新運営会社が「事業戦略発表会」を川崎市内で開き、新たなチームロゴなどを発表したが、意外にも「川崎ブレイブサンダース」のチーム名は変えず、えんじ色のチームカラーも継承。当初は変更を計画していたDeNA側を翻意させたのは、変化を不安がるファンの声だった。

 新運営会社の社長に就任したのは、プロ野球・横浜DeNAベイスターズの事業本部長も務めた元沢伸夫氏(41)。人気も成績も低迷していた球団の観客動員数を大きく伸ばし、昨季は19年ぶりの日本シリーズ出場につなげた功労者でもある。会見では球団運営のノウハウをバスケットに持ち込む姿勢を示し、年間動員数30万人や5年以内をめどとした1万~1万5千人規模のアリーナ新設といった大胆な目標も掲げた。

 一方でチーム名については変更しないと発表。チームカラーも商品展開を見据えてやや明るくしたとはいえ、えんじ色を踏襲した。「ブレイブサンダース」は東芝バスケット部時代の2001年に採用された名称で、勇猛果敢を意味する「ブレイブ」は東芝野球部、ラグビー部のチーム名にも入っている。オーナー変更で新味を打ち出すのなら、“東芝色”の強い名称や従来のチームカラーとは決別した方が近道のように映る。

 実際、元沢社長も「チーム名は変えるつもりだった」と認める。社内では「ベイサンダース」などが候補として挙がっていたようだ。チームカラーについても、プロ野球DeNAと同じ青の採用こそ「あれは港町・横浜をイメージしているから」と検討していなかったが、「変えるつもりだったし、変えるならこのタイミングしかないと思っていた」という。

 翻意したのは「ブースター」と呼ばれる熱烈なファンの現チームへの強い愛着を感じたからだ。元沢社長は就任を前に、ファンからの聞き取り調査を敢行。性別や年代ごとに選んだ複数人から、1人当たり90分もかけてじっくり話を聞いた。その中で「オーナー変更はファンにとって不安でしかない」という心情をくみ取り、チーム名とチームカラーの継承に踏み切った。

 一見、情に流されたようにも移るが、ファン重視の姿勢はDeNAがプロ野球球団の運営を成功に導いた原動力でもある。ペナントレース開幕前にファンを集めて開催する「出陣式」は球団の名物となり、今年はアレックス・ラミレス監督がその場で開幕スタメンを発表する試みもあった。「創部68年の歴史をしっかり受け継ぐ決意」(元沢社長)を示すことで、チームをこれまで支えてきたファンから信頼を勝ち取ることこそ、人気拡大への土台作りになるとの“深謀遠慮”があったのだろう。

 この決断は選手も肯定的に受け止めている。主将の篠山竜青(29)は「サンダースの歴史を重んじてくれた。DeNAさんの愛を感じる」と感謝を口にする。北卓也監督(46)らコーチ、スタッフ陣も全員が残留した。

 一方、大きな変化を目指すのがファンサービスの拡充だ。「エキサイティング・バスケット・パーク」計画と銘打ち、本拠地の川崎市とどろきアリーナにはつり下げ式の大型ビジョンを新設。家族連れや女性同士の観戦を見込んだ「グループシート」も設ける。場外の物販スペースは「サンダーススクエア」と名付け、試合映像を流す大型ビジョンやバスケットコートも設置する予定だ。

 球団運営の成功も、球場外でのオリジナルビールの提供を足掛かりに収めたDeNA。バスケットでも1950年創部の名門に独自の色を加え、ビッグクラブに成長させられるかが注目される。(運動部 奥村信哉)