宇宙ホテルで足湯、火星基地で製鉄、海王星探査…宇宙技術のコンテストに集まる奇抜なアイデア

びっくりサイエンス
宇宙での足湯を目指し、金沢工業大が2016年に提案した長靴型の「足湯装置『轟-Todoroki-』」の模型。右はお湯を注入するタンク(衛星設計コンテスト事務局提供)

 全国の学生が宇宙技術のアイデアを競う「衛星設計コンテスト」をご存じだろうか。学会や民間企業、政府などが協力して年1回開催し、今年で26回目となる。専門家による審査は厳格で入賞作品のレベルは高く、実際に宇宙へ飛び立ったものも少なくない。若者らしい斬新なアイデアばかりで、イノベーション(技術革新)の種が隠れているかもしれない玄人好みのイベントだ。

学生でも容赦せず

 コンテストは、日本でもようやく民間の小型衛星が登場しはじめた1993年に始まった。国が中心となって宇宙開発を続けるなか、「ロケットや人工衛星を大学の研究室で開発する機運をどうやって作るか」(八坂哲雄九州大名誉教授)が大きな目的だった。

 当初は大学生や院生を対象とし、文字通り小型衛星の設計に限定していたが、後に門戸を広げて宇宙技術全般を対象にした「アイデアの部」や主に高校生向けの部も設けられた。

 昨年までの応募総数は1623件で、うち最終審査に進めたのは290件に過ぎない。審査では実現可能性や独創性などが重視され、日本の宇宙開発を第一線で支えてきたベテランの研究者らが学生相手でも容赦せず、本気で向き合うのが持ち味だ。

 それだけに、過去の入賞作品はレベルが高い。コンテストに出た後で実際に打ち上げられた小型衛星は、第1回で電子情報通信学会賞を受賞した千葉工業大の鯨生態観測衛星「観太くん」をはじめ、約20基にも上る。

太陽系外探査も視野

 小型衛星に限らず入賞作品はみな個性的で興味深いが、そのごく一部を紹介しよう。

 金沢工業大が提案した「足湯装置『轟-Todoroki-』」(第24回)は、近い将来建設されるであろう宇宙ホテルで、風呂好きの日本人が使うことを想定。長靴型のステンレス製だが、足を入れる部分は内側がシリコーンゴムなので密着し、水漏れを防ぐ。

 魔法瓶と同じ原理で保温効果を高め、足を入れた後に注射器のような器具でお湯を注入して暖まる。提案にあたり、学生6人で長靴による模擬実験を行って脳波を測定したところ、リラックス効果が確かめられたという。チームは「血行も良くなる」としている。

 また、群馬工業高専は「太陽炉を用いた火星での製鉄」(第21回)を提案。人類が火星に移住したら鉄が必要になるとし、火星の地表に比較的高い割合で含まれる酸化鉄と太陽光の熱で製鉄を行うとした。

 火星は地球よりも太陽から遠いが、口径2メートルほどの鏡をいくつか環状に並べて反射させた太陽光を集約することで、炉内の温度を1600度付近まで上昇させられるという。

 炉は直径28センチ、高さ44センチの円筒状で、重さ5キロの鉄を生成すると想定。ただし、設備の制約から製鉄といっても純度を高める精錬は難しく、一歩前の銑鉄の生成までだ。

 さらに遠大なアイデアもある。帝京大の「資源探査機『Blue Bird』」(第20回)は、太陽系の惑星で最も外側にある海王星と衛星「トリトン」を目指し、それぞれに向けて探査機を同時に打ち上げる。特にトリトンは燃料に使えるメタンが豊富とされ、地形や資源の分布、埋蔵量が分かれば利用につながり、遠い将来、太陽系外を目指す宇宙機がトリトンで燃料を満タンにできるとした。

 探査機の大きさは縦横2・5メートル、高さ5メートルと大型で、電源にはリチウムイオン電池と米探査機も用いたプルトニウム238を使用。打ち上げは軌道の関係から2039年11月8日に設定し、火星や木星を経て2048年5月2日に海王星に到着する。

最終審査は一般公開

 いずれも野心的なアイデアだけに、一つでも実現するときは、宇宙が今よりもずっと身近な存在となっているはずだ。これらを含む過去の入賞作品はコンテストのホームページ(http://www.satcon.jp/)に掲載されており、作品ごとに詳しく説明する「解析書」も添付されている。

 今年のコンテストは10月27日に福岡県久留米市で最終審査が行われ、一般にも無料で公開される。既に応募は締め切られて書類審査に入っており、どんなアイデアが見られるか今から楽しみだ。(科学部 小野晋史)