【経済インサイド】ソフトバンク系のシェアオフィスにNTT系企業が入居する理由とは - 産経ニュース

【経済インサイド】ソフトバンク系のシェアオフィスにNTT系企業が入居する理由とは

競合のNTTコミュニケーションズも入居している、ソフトバンクのグループ会社などが出資する米ウィーワーク日本法人のオフィス=東京都千代田区
ソフトバンクのグループ会社などが出資する米ウィーワーク日本法人のオフィス。丸紅など大企業も、ベンチャー企業の新しい発想を取り入れるなどの目的から入居を進めている=東京都千代田区
NTTグループが4月に開設したシェアオフィス「LIFORK大手町」
NTTグループが4月に開設したシェアオフィス「LIFORK大手町」
 不動産各社などがシェアオフィス事業に参入する中、通信各社も同事業に乗り出している。各社とも参入理由はさまざまだが、中でもソフトバンクのグループ会社などが出資するシェアオフィス最大手の米ウィーワークの日本法人は、入居企業を結びつけるきめ細かいサービスなどで人気を集める。政府の働き方改革の推進を背景にシェアオフィスが増え続ける中、通信各社がどこまで独自性を発揮できるか-。
 「設立して数年の会社が今年の売り上げは倍増しそうだ。来年も倍増するのではないか。この会社は次の(中国電子商取引大手)アリババになるのではと期待しています」
 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、6月20日の株主総会でウィーワークへの期待を熱弁した。
 2010年設立のウィーワークは、全世界22カ国75都市に約280のシェアオフィスを抱える。企業価値10億ドル(約1100億円)以上の巨大ベンチャー「ユニコーン企業」の一つだ。
 さまざまな異業種の集団で形成する企業グループ構想「群戦略」を推進する孫氏は、今後も成長を期待できると判断し、昨年8月、ソフトバンクグループと傘下の運用額10兆円規模の基金「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」から約44億ドルをウィーワークに出資すると発表した。
 国内では、昨年7月にソフトバンクのグループ会社とウィーワークの合弁で日本法人が設立された。7月時点で東京・丸の内など都内に5カ所のオフィスを構えており、8月までにさらに都内に1カ所増やす予定。年内には都外にも進出し、全国で10カ所程度まで増やす考えだ。
 通信事業など国内事業を担当するソフトバンクの宮内謙社長は総会で「ウィーワークは、英ロンドンで各拠点の合計席数が1万2000席になるのに3~4年かかった。日本では、1年でそれを達成する勢いで伸びています。ウィーワークジャパンは、世界最速で1万2000席を達成したいと考えています」と述べた。
 ウィーワークの各オフィスは、世界各国のスタッフのオフィス利用データなどに基づいて設計が施されている。例えば、すれ違う際に利用者間で対話しやすいよう、廊下をあえて狭くしていることなどが挙げられる。
 しかし、世界最速で利用者を増やしている最大の特徴は、入居する企業同士を結びつける仕組みだ。各オフィスには「コミュニティチーム」と呼ばれる、企業や利用者が円滑に会話できるように手助けする複数のスタッフが配置されている。
 利用企業は大企業からベンチャー企業までさまざまだが、コミュニティチームのスタッフは各企業の仕事内容などを把握。事業を紹介し合うイベントをオフィスで開いたり、直接、企業同士や個人同士、企業と個人をマッチングしたりする。
 実際の利用者も他の企業や起業家と接点を持てる点を評価しているようだ。
 そんなウィーワークのシェアオフィスに、ソフトバンクのライバルであるNTTコミュニケーションズが3月に入居し、関係者を驚かせた。
 同社ビジネスイノベーション推進室長の東出治久氏は、入居の理由について「ウィーワークにソフトバンクが出資しているのは知っていたが、NTTでもKDDIでもソフトバンクでも、日本を盛り上げたいのは変わらない」と強調した上で、「大企業では生まれないアイデアを持っている会社との出合いに期待している」と打ち明けた。
 丸紅で4月に発足した、新規事業の創出などを担当する「デジタル・イノベーション部」でマネジャーを務める早坂和樹氏も「外部の人材や企業との接点を直接持ち、生の声を聞けるので利用している」と評価する。
 同社の新規事業募集制度には、海外で流行の映像コンテンツを使ったビジネスのアイデアが寄せられたが、事業化に足りない部分もあった。ところが、ウィーワーク入居企業の担当者からアドバイスを受け、事業化が可能かどうかの検証が進んだという。
 ソフトバンクは、通信事業会社としてではなく投資事業会社として、有望なユニコーンであるウィーワークに出資したわけだが、NTTやKDDIはどうか。
 NTTは、首都圏を中心に電話局の空きスペースを利用してサービスを広げる考えだ。2月に鵜浦博夫社長(当時)は「電話局を機械設備に置き換えているので、空いたところを利用し、働き方改革の一助となるように取り組みたい」とシェアオフィス事業推進の考え方を説明した。
 KDDIも平成28年2月に東急不動産と組んで、同社の都内のシェアオフィスの一部に、最新のIT機器などが利用可能なスペースを開設し事業参入した。しかし、採算が取れなかったことなどから、昨年5月にはスペースを閉鎖して事業から撤退している。
 シェアオフィスは、空きビルの再利用やテレワーク推進などさまざまな理由から参入が相次ぐ。事業の形態もシンプルな貸し会議室に近いものから、利用者同士を結びつけるものまでさまざまだが、利用料金も当然、サービスが手厚いほど高くなる。乱立傾向なだけに、利用者のニーズをつかむのは不可欠で、今後、淘汰(とうた)も進みそうだ。(経済本部 大坪玲央)
 シェアオフィス 複数の個人事業主や企業従業員などが共同で利用する仕事場。「コワーキングスペース」ともいわれる。机や会議室のほか、インターネット回線やファクスなどの機器が整っている所が多い。若手の起業家やフリーランスのクリエーターたち向けに増えているほか、勤務先以外の場所で仕事をする「テレワーク」の普及で企業の従業員の利用も多くなっている。利用者同士が交流できることでも人気がある。