韓国鉄鋼一人負け!? 米輸入制限適用除外も、譲歩あだに

ビジネス解読
鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に関する文書に署名後、掲げるトランプ米大統領。周囲にいるのは鉄鋼とアルミの業界関係者=3月8日、ワシントンのホワイトハウス(UPI=共同)

 韓国の鉄鋼メーカーは口惜しいにちがいない。韓国はトランプ米政権が発動した鉄鋼輸入制限の適用除外となったが、代わりに米国に対し一定の譲歩をしたことが大きな重荷となっている。米国との新通商協議で対日貿易赤字の縮小策を迫られかねない日本には教訓となりそうだ。

 「追加関税は違憲だ」。鉄道や物流など鉄鋼を利用する企業で構成する米業界団体「AIIS」は6月27日、トランプ政権が輸入鉄鋼に課した25%の追加関税の差し止めを求め、米国際貿易裁判所に提訴した。

 トランプ政権は3月23日、通商拡大法232条に基づき、安価な製品の流入が「安全保障上の脅威」になるとして、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す輸入制限を発動した。だが、AIISは、その根拠になっている通商拡大法232条は大統領の裁量に関して明確な指針がないと指摘。その上で、トランプ氏が議会の持つべき権限を侵害していると主張している。

 背景には、輸入制限が、かえって米国内の鉄鋼ユーザーの負担を重くしている現状がある。AIISによると、米国では価格が50%以上も上昇している鉄鋼製品があり、事業で必要とする鉄鋼を調達するのが難しくなっているという。

 ロイター通信によると、ロス米商務長官は6月20日、米国内の鉄鋼価格上昇をめぐり、追加関税に乗じた「不当利益」を得る行為がないか、商務省が調査に着手していることを明らかにした。ロス氏は上院財政委員会の公聴会で、鉄鋼価格が追加関税の影響だけでは説明できない水準に上昇していることについて、一部の市場仲介者が在庫を出し渋る中、「投機的な動き」が出ている可能性があるとの認識を示したという。

 それでも、米国内の鉄鋼需要は堅調で、「ユーザーは輸入鉄鋼を使わざるを得ない」(業界関係者)との見方は強い。

 実際、米国内では鉄鋼価格が急上昇しているにもかかわらず、欧州やロシアなど海外の鉄鋼メーカーは対米輸出を増やしている。そんな中で、割を食っているのが韓国の鉄鋼メーカーというのだ。

 韓国経済新聞によると、韓国貿易協会国際貿易研究院は6月下旬、鉄鋼の一部品目で対米輸出が急減していると明らかにした。足かせとなっているのは、米韓自由貿易協定(FTA)再交渉で、韓国がのまされた対米鉄鋼輸出のクォータ(割当量)だ。

 韓国産業通商資源省は3月26日、米国とのFTA再交渉が大筋合意したと発表した。

 米国側が韓国製自動車の一部車種の関税撤廃時期を、従来の2021年から41年に先送りし、米国の安全基準に基づいて製造された自動車をそのまま韓国に輸出・販売できる台数は現行の1社当たり2万5000台から5万台へ増やすとした。鉄鋼分野では、韓国から米国への輸出量の上限を15~17年の平均輸出量の70%としており、同時に発表した米国による追加関税の適用除外と引き換えにした形だ。

 米韓FTAの再交渉は依然署名には至っていないが、韓国の鉄鋼メーカーは輸出を増やしにくくなっているという。

 韓国経済新聞によると、クォータ対象品目の対米輸出は4~5月に34.1%減少した。同品目は17年の対米鉄鋼輸出額の73.6%を占めている。「海外の鉄鋼メーカーは関税を負担しても昨年より10%以上高い価格で販売できる」(米鉄鋼業界関係者)という状況にあって、韓国メーカーは厚い利幅の製品の輸出を増やす好機を逃さざるを得なくなっているというわけだ。

 日米両政府は、茂木敏充経済再生担当相と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表による新通商協議を7月から始める予定だ。新協議でトランプ政権はFTAを視野に、不均衡解消の要求を強めるとみられる。

 日本は米国に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)復帰を促し、FTA交渉を回避したい考えだが、トランプ政権は日本にとっては影響の甚大な自動車の輸入制限の発動をちらつかせ譲歩を迫る可能性もある。

 しかし、安易な譲歩は日本経済の先行きに禍根を残すことにもなりかねない。韓国の事態を他山の石とする必要があるのではないか。(経済本部 本田誠)

 米国の鉄鋼輸入制限 トランプ米政権が安全保障上の脅威を理由に、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税をそれぞれ課す措置。現状の輸入を放置すると米国の鉄鋼産業などが弱体化し、有事に軍の需要に対応できなくなるとの考え方に基づいている。(共同)