日本維新の会×立憲民主党×小泉進次郎氏が三つどもえの神経戦!? 国会ペーパーレス化の舞台裏

野党ウオッチ
国会改革についてなのか、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(後列左)は衆院本会議場で日本維新の会の馬場伸幸幹事長(同中央)の席の近くまで出向き、言葉を交わした=6月20日(春名中撮影)

 民間企業ではもはや珍しくない「ペーパーレス化」がようやく国会でも動き始めた。たかが紙、されど紙…。その舞台裏では、「水には流せない」因縁の神経戦が繰り広げられていた。

 衆院議院運営委員会理事会で議員配布書類の一部ペーパーレス化が決まったのは6月26日のことである。「身を切る改革」を掲げる日本維新の会の遠藤敬国対委員長(50)が、昨年から議運委で提案し続けていた施策だ。

 国会での印刷費は衆参両院で年間約12億円にのぼるとされるが、一口に「ペーパーレス化」といっても実現の困難さは書類の種類によって大きく異なる。

 今回ペーパーレス化の対象に決まった「報告書等」(衆院の年間印刷費1428万円)と「請願処理経過」(同21万円)は最もハードルが低く、法規改正などの必要はない。

 一方で、煩雑な手続きが必要な書類もある。例えば「議案類」(同1億2937万円)の紙での配布をやめようとすれば、「議案は直ちにこれを印刷して各議員に配付する」と定めた衆院規則を改正しなければならない。

 この改正には根強い反発も予想される。国会最終盤で内閣不信任決議案などを連発し、印刷待ち時間を生じさせる審議遅延戦術を想定する一部野党にとって、議案類のペーパーレス化は死活問題だからだ。

 一般的に内閣や閣僚らへの不信任決議案が提出されると、議員らに配るためのその書類の印刷に2時間ぐらいかかり、その分、国会の動きを遅らせることができる。それだけのことかもしれないが、野党がよく使う手段だ。

 維新は将来的に全ての資料の配布をやめ、議員全員に配るタブレット端末で代替することを目標としている。とはいえ、大阪発祥の政党らしく「小さなことからコツコツと」。当面は、他会派の理解が得られやすく環境整備が容易な資料から徐々にペーパーレス化を進めていく構えだ。遠藤氏は議運委後の記者会見で「まずは一歩を踏み出すことができた」と強調した。

 さて、ペーパーレス化といえば、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(37)も近ごろ頻繁にその必要性を口にしている。小泉氏は6月27日の記者会見で、遠藤氏と維新の馬場伸幸幹事長(53)の名前を挙げ、議運委でのペーパーレス化合意を次のようにたたえた。

 「ペーパーレスに風穴が開いた。維新の遠藤先生、馬場先生を含めて継続的に頑張っていた人がいたから実現したわけだ」

 翌28日には、小泉氏が設立を主導した国会改革に関する超党派議員連盟「平成のうちに衆院改革実現会議」が発足した。維新からも、議連副会長に就いた馬場氏をはじめ複数の議員が設立総会に参加した。

 だが、構図は「小泉氏と維新がペーパーレス化推進でタッグ」といった単純なものではない。実際、国会ペーパーレス化の言い出しっぺである遠藤氏は設立総会には姿を見せなかった。

 なぜか。与党や野党第一党・立憲民主党の中に、国会改革が小泉氏の「専売特許」となることを快く思わない向きもあったからだ。

 立憲民主党の枝野幸男代表(54)は6月29日の記者会見で、小泉氏の議連を「パフォーマンスに過ぎない」と切り捨て、「わが党から参加すべきではないという方針を定めている」とまで言い切った。公明党の井上義久幹事長(70)も同じ日の記者会見で「政党政治だから、しかるべき国会機関に案を提示し各党間で協議するのが基本だ」と距離感をにじませた。

 議運委でのペーパーレス化合意の兆しが見え始めた6月中旬ごろから、遠藤氏はこうした与野党のムードを鋭敏に感じ取っていた。

 「遠藤さん、『向こう』とは別ですよね?」

 立憲民主党関係者からこんな探りを入れられたこともあった。「向こう」とは、いうまでもなく小泉氏の議連を指す。

 野党第一党にそっぽを向かれたらペーパーレス化の実現には黄信号がともる。遠藤氏は、議連とは距離を置くことで、小泉氏ではなく「議運委が旗を振った国会改革」を演出しようと試みた。小泉氏に対する与野党の忌避感をむしろ逆手にとろうとしたわけだ。

 狙いは的中し、ペーパーレス化の可否が議論された理事会では、以前は「簡単ではない」(国対幹部)との声もあった立憲民主党も賛成に回り、共産党を除く与野党全会派が導入で一致した。

 スジ論や正論を叫び続けるだけでは施策を前に進めることはできない。衆参22人の小所帯である維新にとってはなおさらだ。与野党の力学やせめぎ合いの構図を見極め、その間隙をたくみに縫わなければ政策実現は見通せず、「身を切る改革」は看板倒れに終わる。

 小泉氏の人気や発信力に安易に乗ってしまわないしたたかさこそが、小政党ながら維新が踏みとどまっている理由の一つに思える。 (政治部 松本学)