「逮捕されちゃったぜメーン」 人気ラッパー「D・O」逮捕の衝撃 裏の顔は大麻密売の「首謀格」か

衝撃事件の核心

 多くの若者の支持を集める人気ミュージシャンの“裏の顔”が白日の下にさらされた。警視庁組織犯罪対策5課が6月、大麻取締法違反(営利目的所持)などの疑いで、ヒップホップミュージシャン「D・O(ディー・オー)」こと君塚慈容(しげやす)容疑者(39)を再逮捕した。組対5課によると、君塚容疑者は米国から販売目的で大麻を密輸する「密売の首謀格」として暗躍していた疑いがあるという。ヒップホップ界では違法薬物にまつわる事件が相次いでおり、捜査当局は業界内での“薬物禍”の拡大に警戒を強めている。

独特の言動で人気

 「逮捕されちゃったぜメーン」「パクられちゃったメーン」。君塚容疑者の逮捕の一報が報じられた6月28日朝、短文投稿サイト「ツイッター」にはこんな投稿があふれた。

 三つ編みにした長髪をなびかせ、全身に入れ墨を施し、口元にはめこんだ金歯がきらりと光る-。「いいぜメーン」など語尾に「メーン」とつけるのがお決まりのフレーズで、その言い回しをもじって感想を綴るネットユーザーが続出したのだ。

 個性的なルックスで、テレビのバラエティー番組や映画にも出演していた君塚容疑者。東京都練馬区出身のラッパーを集めた「練マザファッカー」を率い、「カモンドッグ」「ディスる(非難するの意)」などラッパー然とした独特な言語感覚を披露して人気を集めた。

 組対5課によると、君塚容疑者は昨年4月下旬ごろから同5月下旬にかけて、米国カリフォルニア州から秋田市の住宅や東京都足立区の集合住宅に大麻計約1・5キロ(末端価格約9百万円)を段ボールなどに隠して密輸したとされる。

 同課は今年5月16日、秋田市に大麻を密輸した事件で、大麻取締法違反(営利目的輸入)と関税法違反の疑いで逮捕し、6月5日には同じ容疑で都内への密輸事件について再逮捕。6月26日、東京都練馬区のアパートで大麻約773グラムとコカイン約32グラムを所持したなどとして、大麻取締法違反(営利目的所持)などの疑いで3回目の逮捕に踏み切った。

 大麻を大量に国内に持ち込んでいた君塚容疑者について、組対5課は「密売グループの首謀格」との見方を強めており、密売網の解明に乗り出しているという。

偽装工作を主導か

 ラッパーという「表の顔」とともに麻薬ディーラーという「裏の顔」も持ち合わせていた疑いがある君塚容疑者。組対5課によると、君塚容疑者の犯行発覚は、東京都立川市で違法薬物の密売人を摘発したのがきっかけだったという。

 同課の地道な突き上げ捜査の結果、君塚容疑者の音楽仲間であるラッパーの「ダッチモンタナ」こと梶原弘行被告(25)=大麻取締法違反罪などで起訴=が浮上。そして、昨年2月下旬、梶原被告とともに君塚容疑者が、米国カリフォルニア州ロサンゼルスに渡航していたことが判明した。渡米した2人の目的は現地で大麻を調達し、日本に密輸することだったとみられる。

 捜査関係者は、「大麻は内部を空洞にした音響機器や蓄電池の中に隠し入れたうえで、段ボールに梱包して発送していた。荷物の送り主を外国人の名前にするなど、摘発逃れのためにさまざまな策を弄していた」と振り返る。組対5課によると、一連の偽装工作を主導していたのが、君塚容疑者だったという。

 実は、君塚容疑者が違法薬物にまつわる事件で摘発されるのは今回が初めてではない。

 平成21年2月には、自身が運営するCD制作販売会社の事務所でコカインを所持していたとして、神奈川県警に麻薬取締法違反容疑で逮捕されて有罪判決を受けている。事件では、現場となった事務所に居合わせた大相撲十両力士も大麻取締法違反容疑で逮捕され、世間に衝撃を与えた。

ヒップホップ界で繰り返される薬物事件

 今回の事件では、ヒップホップ界にも余波が広がっている。

 今年1月には、乾燥大麻約600グラム(末端価格300万円相当)を自宅に隠し持っていたとして、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部が、大麻取締法違反の疑いで、ラッパーとして活動していた男(44)を現行犯逮捕=同罪で起訴=していたからだ。

 男は、CDなどをリリースしていたほか、ラッパー同士がお互いの技量を即興で競い合うテレビ番組の進行役を務めるなど、業界では知られた存在だった。

 ラッパーたちの間で繰り返される薬物事件。君塚容疑者の所属事務所代表がホームページ上で、「重く受け止めており、彼の活躍を期待して頂いたファンの皆様には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」と声明を出しているが、事件による影響が出るのは避けられそうにない。

 捜査当局は業界内に違法薬物が蔓延する現状への警戒を強めている。ある捜査幹部はこう危機感を口にした。「今年1月に米国カリフォルニア州で大麻使用が合法化された影響も少なくない。手に入りやすい環境になったことで密売に手を染める者も目立ち始めている。音楽業界はアーティスト同士の横のつながりで薬物汚染が広がりやすくなる傾向にあり、なお一層の警戒が必要になってくる」