【原発最前線】注目された耐震試験で「扉が5センチ開いた」東海第2 トラブル露見 - 産経ニュース

【原発最前線】注目された耐震試験で「扉が5センチ開いた」東海第2 トラブル露見

日本原子力発電東海第2原発の設備の耐震実験に立ち会う、原子力規制委の山中伸介委員(中央)ら=6月21日、兵庫県三木市(規制委提供)
耐震性試験後に設備を調査する日本原子力発電と原子力規制庁の職員ら=6月21日、兵庫県三木市
日本原子力発電の東海第2原発=茨城県東海村
東海第2原発の耐震試験に立ち会う山中伸介原子力規制委員(左側中央)=6月21日、兵庫県三木市
耐震性試験が行われたブローアウトパネル閉止装置。灰色の扉の右側にわずかな隙間が見える=6月21日(原子力規制庁提供)
 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の審査が、11月下旬の期限に向けてラストスパートに入っている。6月21日には工事計画認可に必要な最後の実証試験となる耐震性試験が兵庫県で実施された。原子力規制委員が立ち会い、マスコミにも公開されて注目を浴びたが、開いてはならない扉が5センチ開くというトラブルも生じた。遅れている審査の合格に加え、地元の同意という高いハードルが控える東海第2。トラブルを超えて第1のハードルをクリアできるか、正念場を迎えている。(社会部編集委員 鵜野光博)
規制委員がプレッシャー?
 「加震、終了しました」
 1分半にわたって「ガタガタ」と音を立てて揺れた装置が静かになった。6月21日午前、防災科学技術研究所の兵庫耐震工学研究センター(兵庫県三木市)で行われた東海第2の耐震性試験。揺さぶられたのは「ブローアウトパネル閉止装置」(縦6メートル、横11メートル)で、事故時に原子炉建屋内の蒸気を自動的に外に逃すブローアウトパネルが動作した際に、大きな揺れに対して気密性を保ち、放射性物質の漏洩(ろうえい)を防ぐための設備だ。
 試験には規制委の山中伸介委員ら審査チームが立ち会った。規制委によると、工事計画認可に関わる試験に規制委員が立ち会うのは初めて。山中氏は5月11日にも東海第2の現地を視察している。4月には工事計画審査の遅れについて「サボタージュとさえ感じられる」と原電の対応を強く批判しており、自ら乗り込むことで原電へのプレッシャーを高めようとしているかのようだ。
 6月21日午後、原電の担当者は報道陣に「試験で耐震性は確認できたと思う」と発表。「ただ、隙間が少し開いたので、手動で問題なく閉められることを確認した」と付け加えた。
「原因究明甘い」
 原電によると、開いたのは気密性を保つための扉で、報道陣に「開くことは想定していたのか」と問われると、「想定はしていない」。さらに「扉を動かすチェーンに一部破損があった」とも明かした。実験の成否については、「大きく構造や扉が壊れることはなかった。その意味では十分成立性は確認できた」と成功との認識を示した。
 その後に取材に応じた山中氏は「いくつかトラブルがあったので、数値や対策は審査会合で確認したい」と述べた。工事計画認可に必要な試験は6月初旬の段階で4つ残っており、規制委は危機感を示していたが、この日の試験ですべて終了したことになる。山中氏は「一つ、かなり大きな山を越えた。まだいくつもの山が残っているかもしれないが」とやや安堵(あんど)した表情も見せた。
 6月26日に開かれた審査会合で、原電は試験結果について、揺れの強さや扉の開閉状態を変えるなどして7回行った試験のうち、3回でチェーンの破損があり、扉が5~8・5センチ開くトラブルがあったことを報告。チェーンの材質の変更・大型化や、扉が開かないようにかんぬきをかけることなどを対策として示した。
 規制委はこれに対し「十分な原因究明ができていない」と指摘。担当者は「チェーンが切れたから強くします、扉が開いたから開かないようにします、では、検討の結論として安直すぎないか」と首をひねった。
「まだまだ危機的」
 注目を浴びたためにトラブルが目立った今回の試験だが、東海第2の審査の上では大きな意味を持っている。
 再稼働には新規制基準への適合を意味する設置変更許可、工事計画認可、そして最大20年の運転延長認可の3つの「合格」が、運転40年となる11月下旬までに必要。規制委の更田(ふけた)豊志委員長は、工事計画審査の遅れから「工事計画認可の見通しが立たなければ、設置変更許可は出さない」としていた。
 更田氏は6月27日の定例会見で、ブローアウトパネル閉止装置について「基本設計にかかる部分に関して原電の考えていることはわかったし、基本的な原理については成立している」と評価。その上で、パブリックコメントなどの手順が必要な設置変更許可に向けた審査書案の決定について「7月中は必須だ」との認識を示した。
 ただ、設置変更許可が前進しても、工事計画認可について山中氏は「まだまだ危機的状況にある」としている。トラブルが生じたブローアウトパネル閉止装置についても、もう一度試験が必要になるのか、その試験がどのような規模になるかは「原電の対策次第」と規制委。
 「遅れ」ばかりが注目されている現状から東海第2は抜け出せるのか。タイムリミットは5カ月後に迫っている。
東海第2原発 日本原子力発電の沸騰水型軽水炉(BWR)。日本初の大型原発として昭和48年に着工、53年に営業運転を開始した。原電によると、BWR1基として国内最高の総発電電力量の記録を保持している。他のBWRには東京電力福島原発、同柏崎刈羽原発などがあり、BWRでは柏崎刈羽原発6、7号機が昨年12月、初めて新規制基準の適合性審査に合格した。