【iRONNA発】都市防災 東京より意識の低い大阪が今やるべき地震対策 生田英輔氏 - 産経ニュース

【iRONNA発】都市防災 東京より意識の低い大阪が今やるべき地震対策 生田英輔氏

大阪府高槻市立寿栄小の校門前の献花台で手を合わせる浜田剛史市長
 最大震度6弱を観測した大阪北部地震は、都市防災の弱点を改めて露呈した。ブロック塀倒壊で女児が死亡した事故は、まさに「人災」とも言える悲劇だった。帰宅困難者の大量発生、人口密集地域で寸断されたライフライン…。さらなる都市直下地震の発生にどう備えるべきか。(iRONNA)
 大阪北部地震は、日本有数の大都市圏で発生した直下型地震であり、これを機に都市災害におけるヒトとモノの課題を整理したい。
 まず、ヒトの課題は帰宅困難者である。地震発生が通勤時間帯にあたり、大量の列車が通勤通学者を満載していたが、列車の脱線や衝突などの深刻な被害はなかった。一方で、長時間にわたる車内待機を強いられ、降車した後も運行再開のメドが分からず、出勤するか帰宅するかの判断を迷った人が多かった。
 ただ、今回は筆者も体験したが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などがほぼ問題なく使用できた。ゆえに通勤通学途上でも会社、学校、家族とスムーズに連絡を取れた人が多かったようだ。
 耐震化率は99・7%
 今回の地震で、帰宅困難者があふれたのは、被害が大きかった府北部と大阪市中心部をつなぐ幹線道路「新御堂筋」だ。並行して走る地下鉄御堂筋線の運行が停止したため、多くの帰宅困難者が殺到した。
 特に大阪府を分断する淀川にかかる橋の混雑がひどかった。大阪市中心部から府北部や阪神間といった郊外に向かう帰宅困難者は淀川を渡らざるを得ない。このため、次に起きる災害でも、複数の橋で帰宅者らがボトルネックとなる可能性が高く、橋の両端での流出入者の制御、滞留場所の確保などの対策が必要である。
 一方、モノの課題は、9歳女児の命を奪ったブロック塀の倒壊である。ただ、学校施設の耐震化は順調に進んでおり、大阪府の公立小中学校の耐震化率は99・7%(平成29年4月、文部科学省)で、さらに東日本大震災以降、体育館のつり天井などの落下防止対策についても対策率は78・6%(同)に達している。
 しかし、主要構造部が耐震化されても学校施設全体の老朽化は進んでおり、東京都や大阪府の大都市圏は築30年以上の公立小中学校が面積換算で約7割にのぼり、全国平均の57・5%(25年3月、文科省)を上回る。法令違反は言語道断であるが、あらゆるモノは時間の経過とともに劣化するのが常であり、管理者や使用者は適切に維持管理をすべきだ。
 地震時でなくても校舎外壁の落下や手すりの損壊などは起こり得る。ブロック塀を含む学校施設の付属物の安全対策はまだまだ不十分で、ブロック塀に限らず早急な点検と補修が必要である。
 また、大阪府内のブロック塀については、大阪が全国一の面積となる「地震時等に著しく危険な密集市街地(国土交通省)」の中の細街路でも多く見られる。塀の高さが道路幅を上回るような道路を通行中に地震が発生すれば、まさに逃げ場がなくなる。そして、建物や塀の下敷きになったとき、より大きな被害を受けるのは体重が軽い子供と高齢者というのが過去の災害で明らかになっている。
 目立つ平均以下
 では、対策はどうすればいいだろうか。補強や固定は基本だが、すぐにできる対策もある。子供に関しては通学路沿いの塀を点検し、遠回りになっても安全な広い道を選ぶことや、大人同伴での通学を推奨することだ。
 ちなみに大阪府民の「ブロック塀の点検と倒壊防止」の実施率は3・8%(21年8月、大阪府)と低く、ブロック塀の倒壊リスクの認知と対策の実施が課題だ。23年前の阪神・淡路大震災を記憶している府民も多いはずだが、「家具転倒の防止」実施率は15・2%(29年7月、大阪府)で、全国平均の40・6%(29年11月、内閣府)を大きく下回っている。一方、東京都は6割を超えている。
 その他の防災対策の実施率も大阪は、全国平均を下回っているものが多い。発生が懸念される上町断層帯地震あるいは南海トラフ巨大地震による被害を低減するために、高密度にヒトとモノが集積する都市空間の災害リスクを府民が認識し、対策を始めることが望まれる。
                   ◇
 【プロフィル】生田英輔氏(いくた・えいすけ)
 大阪市立大大学院准教授。昭和51年、兵庫県生まれ。同大生活科学部卒、同大大学院生活科学研究科後期博士課程修了。現在、同大都市防災教育研究センター副所長を兼任。専門は居住安全工学。著書に『Human Casualties in Earthquakes(共著)』(Springer)など。
                   ◇
 iRONNAは、産経新聞と複数の出版社が提携し、雑誌記事や評論家らの論考、著名ブロガーの記事などを集めた本格派オピニオンサイトです。各媒体の名物編集長らが参加し、タブーを恐れない鋭い視点の特集テーマを日替わりで掲載。ぜひ、「いろんな」で検索してください。