ユニーク創業支援施設が続々…託児機能やAI ベンチャー企業活性化につながるか

経済インサイド
AIなどに特化したジーエルシーの創業支援施設の様子(同社提供)

 全国各地でユニークな創業支援施設が続々と誕生している。モノづくりに焦点をあてたもの、女性の起業を後押しすべく託児機能を備えたもの、人工知能(AI)に特化したもの…。少子高齢化やITインフラの普及が進み、起業を志す人が増えてきたことも多様な創業支援施設の誕生につながっている。

 4月20日、大阪市港区に誕生した創業支援施設「ガレージミナト」は、金属加工の成光精密本社工場の2階にある。中に入ると、町工場の泥臭いイメージとはかけ離れたポップ(時流に乗った)でデザイン性あふれる空間が広がる。大阪湾に面した港区の工場ということもあり、壁には船の舵のオブジェがかけられていた。

 ベンチャー企業が入居する個室4室のほか、複数の起業家が共同作業できる「コワーキングスペース」、30~40人ほどが入れる製品発表会などに使える「オープンスペース」を備えた。

 1階にはマシニングセンター(MC、切削機械)などの工作機械が並び、「設計図がなくても、起業家のアイデアレベルでも目に見える形にできる」(高満洋徳社長)のが最大の特徴だ。

 ガレージミナト開設を支援したのは起業支援のリバネス(東京都新宿区)。丸幸弘社長は「海外のベンチャー企業はモノづくりが苦手で、日本の中小製造業に大きな関心を持っている」と話す。ガレージミナトは関西国際空港から電車で1時間ほどの場所にあり、海外のベンチャー企業の呼び込みにも力を入れる。

 東京・新宿から電車で約30分の京王電鉄と小田急電鉄の多摩センター駅近くの商業ビルにある創業支援施設「コワーキングCoCoプレイス」。女性の再就職や創業支援を手がけるキャリア・マム(東京都多摩市)が運営を手がける。

 施設の中には数人が座れる大きなテーブルがある。その向こうにガラス貼りの託児室があり、専門スタッフが子供の面倒を見る。仕事中でも子供の様子をガラス越しに見られるので「母親にとっても子供にとっても安心な空間」(キャリア・マムの堤香苗社長)という。

 結婚や出産などで退職を余儀なくされた女性でも、それまで培った経験やスキルを生かして起業を目指すケースが増えており、こうした施設はまだまだ増えそうだ。

 このほか、AIを活用したソフトウエア開発を手がけるジーエルシー(東京都新宿区)は、AIやモノのインターネット(IoT)関連企業に特化したコワーキングスペース「テクノロジーベース」を東京都港区のJR品川駅近くに開設。AIやIoTに関するセミナーを企画しているほか、外部企業のAI開発などの委託案件を無料紹介する。

 一方、これまでも起業支援を手がけてきた地域金融機関も新たな手法で取り組む。城南信用金庫(東京都品川区)は蓮沼支店(同大田区)に創業支援施設「Jクリエイトプラス」を4月開設した。広さ5~10平方メートルの個室10室があり、カードキーを備え、24時間いつでも出入り可能だ。

 城南信金はクラウド会計のfreee(フリー、同品川区)や電子記録債権を使った融資手法を開発するTransax(トランザックス、同港区)と提携。会社設立から事業資金の調達まで、スタートアップ(創業初期)のベンチャー企業の経営課題にきめ細かく対応する。

 中小企業庁によると、平成28年度の開業率は5.6%、廃業率の3.5%を上回った。とはいえ、地方では景気回復の遅れなどもあって開業率より廃業率の方が高い地域も少なくない。起業家を後押しするこうした特徴のある創業支援施設はまだまだ増えそうだ。(経済本部 松村信仁)