EV隆盛の中、「ディーゼル車」推すマツダ 異彩放つ〝逆張り戦略〟

経済インサイド
大幅改良した小型SUV「CX-3」ディーゼル車のエンジンを紹介するマツダ商品本部の冨山道雄主査=東京都港区

 世界の大手自動車メーカーが電気自動車(EV)シフトを強める中、ディーゼル車に力を入れるマツダの孤軍奮闘ぶりが目立っている。今春以降にはディーゼル車の主力車種を矢継ぎ早に大幅改良。環境規制の強化などでディーゼル車への風当たりが強まるにもかかわらず、マツダはなぜ独自路線を貫くのか-。

 「ガソリンとディーゼルのエンジン技術に一日の長がある。その開発の手は絶対に緩めることはない」

 マツダは5月24日、東京都内で大幅改良した旗艦モデル「アテンザ」の発表会を開催。小飼雅道社長(6月26日付で会長就任予定)は会場で「理想の内燃機関」を追求し続ける姿勢を改めて強調した。

 トヨタ自動車や日産自動車が欧州でディーゼル車の販売から撤退する方針を決めるなど、ディーゼル車開発から距離を置くメーカーが増え始める中、マツダの「逆張り戦略」は異彩を放つ。

 2月に中型スポーツ用多目的車(SUV)「CX-5」の改良車を発表したのに続き、5月末に改良した小型SUV「CX-3」を発売。アテンザを含む3度のテコ入れでディーゼル技術の進化をみせつけた。

 CX-3を担当したマツダ商品本部の冨山道雄主査は「ディーゼルエンジンで燃料を空気ときれいに混ぜて燃焼することで排ガスの有害物質を抑制しながら効率的に動力に変えていく。その余地はまだある」と強調。その延長線上で、エンジン燃焼で発生した熱を逃さず動力に変える「断熱技術」の開発を目指しているという。

 ただ、欧州ではディーゼル車に逆風が吹いている。発端は2015年に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で、VWへの消費者の不信感は根強い。英仏政府は40年までにエンジン車の販売を禁止する方針で、ドイツ勢を中心にEVシフトを宣言する動きも広がる。

 自動車調査会社の英JATOダイナミクスによると、欧州26カ国で17年に販売したディーゼル車の台数は前年比7.9%減の676万台。欧州市場に占めるディーゼル比率は5.1ポイント減の43.8%だった。

 それでも力強い加速と燃費の良さを両立できるディーゼル車は、長距離で車を利用する顧客が多い欧州で根強い需要がある。メルセデス・ベンツ▽BMW▽アウディ-の「ドイツ御三家」もディーゼル技術の開発意欲は旺盛だ。

 各社の背中を押す動きは欧州連合(EU)が30年を見据えて打ち出した環境規制だ。域内で事業を手掛ける自動車メーカーに対し、21年には走行1キロ当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を現行基準値より3割少ない平均95グラム以下とすることを求めている。CO2削減効果が高いディーゼル車の販売低迷が続けば、この目標の達成が難しくなるだけに、各社は焦り始めている。

 マツダが逆風下のディーゼル市場の攻略にこだわる背景には「ウェル・ツー・ホイール(燃料採掘から車両走行まで)」という視点でCO2削減を進めるという考え方がある。

 日本自動車研究所は、ウェル・ツー・ホイールのCO2排出量を10年に燃料・動力別で試算した。それによると、ガソリン車が1キロ走行した際に排出されるCO2は147グラムで、ディーゼル車が132グラムだ。

 一方、走行時にCO2を出さないEVはクリーンなイメージだ。ただ、EVの充電に石炭火力発電による電力を使うと、EVのCO2排出量は109グラムに達し、ガソリン車やディーゼル車と比べて圧倒的に少ないわけではない。

 このため、化石燃料による発電に依存する中国などの新興国でEV化が進んでもCO2削減効果は限定的だ。効果を高めるには、太陽光などの再生可能エネルギーの方が望ましい。EVが環境保護に有効かどうかは、各国がどれだけ化石燃料依存のエネルギー構成を見直せるかにかかっている。

 今後も新興国を中心に自動車の保有台数は拡大するとみられ、35年時点で約85%はハイブリッド車(HV)を含むエンジン車で占められるとの予測もある。そうした理由からマツダは「将来的にも大多数を占めるエンジン車のCO2排出量を下げる取り組みの優先度は高い」(冨山氏)と判断した。

 競合各社も環境面の国際要請は強く意識している。EVなどの電動車の開発に経営資源を集中する方針を鮮明に打ち出した日産の川口均専務執行役員は、「ゼロエミッション(排出ガスゼロ)車の普及に向けた基盤をつくる活動を迷いなく進めたい」と強調。EVを蓄電池として電力の需給調整に生かす取り組みなどを広め、再生エネの普及を後押しする考えだ。

 大手自動車メーカーでエンジン技術者として従事した経歴を持つPwCあらた監査法人の藤村俊夫顧問は「多くの人が購入可能な価格やCO2低減効果などを総合的にみて、全方位で次世代車の開発を進める力量がメーカーに求められる」と指摘。マツダのような中堅メーカーは得意技術を武器に協業先を広げ、外部の力を利用しながら競争力を高める必要性を説く。

 「トータルのCO2排出量を化石燃料で発電した電力を使ったEVに近づけ、いずれは超えたい」と冨山氏。マツダは磨いたエンジン技術を電動車に応用するための開発にも余念がない。(経済本部 臼井慎太郎)

 ディーゼル車 ガソリンエンジンが空気とガソリンの混合気を点火プラグで燃焼させるのに対し、ディーゼルエンジンはシリンダー(燃焼筒)内で圧縮され、高温となった空気に軽油などの燃料を霧状に噴射することで自己着火させる仕組み。ガソリン車と比べると燃費性能に優れ、二酸化炭素(CO2)の削減につながる。一方、窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(PM)など大気汚染の原因となる不純物を排出するため、処理装置が必要なケースもある。