【ビジネス解読】韓国最大企業の「サムスン電子」に試練 初の労組結成で労働争議に苦しむ現代自動車の二の舞の恐れ - 産経ニュース

【ビジネス解読】韓国最大企業の「サムスン電子」に試練 初の労組結成で労働争議に苦しむ現代自動車の二の舞の恐れ

 韓国サムスングループの中核企業で「無労組経営」を続けてきたサムスン電子で初めて労働組合が結成された。3月に創業80周年を迎えたサムスングループだが、朴槿恵(パク・クネ)前大統領側への贈賄事件をきっかけに、不祥事や疑惑が相次いで浮上。系列会社の労組はストライキの可能性を示唆しており、労働争議の対応に苦しむ大手自動車メーカー、現代自動車の二の舞になるとの指摘もある。韓国最大企業のサムスン電子は試練を迎えている。
 5月31日配信のソウル聯合ニュースによると、サムスン電子の社員2人が労組設立を申請し、労働当局が2月に認可していた。これで、60社超のサムスングループのうち、労組のある会社は9社となった。中央日報によれば、2人は古参の次長級社員で、全国組織の労組団体に加入していないなど、具体的な活動内容は分かっていない。
 サムスングループの中核企業に労組が結成された影響は大きい。
 サムスングループでは、創業者の李秉●(=吉を2つヨコに並べる)(イ・ビョンチョル)氏が労組結成を許さなかったこともあり、無労組経営を続けてきた。2011年にグループ横断的な労組が初めて設立され、傘下企業でも労組が結成されたものの、加入者数は少なく存在感が薄かった。行き過ぎた労使紛争と無縁な経営はグローバル競争で強みとなっていた。
 ところが5月中旬、労組破壊行為をしたとして、検察当局はサムスン電子子会社の専務を逮捕した。現地報道によれば、この子会社は、業者との癒着が指摘されている。秉●(=吉を2つヨコに並べる)氏の孫でサムスングループの経営トップ、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は、朴前大統領側への贈賄罪などで2月に執行猶予付き判決を受けたばかりだ。
 サムスン電子は、子会社の非正規従業員を正社員として採用する計画を発表するなど、火消しに躍起だが、労組をめぐるトラブルが長期化すれば、ブランドイメージの毀損(きそん)につながりかねない。
 韓国では、経営者側と労組との対立が企業の業績悪化を招く先例がある。
 現代自では、賃金交渉が泥沼化して労組がストライキを決行し、国内生産に打撃を与えている。16年9~10月のストでは、現代自の約14万台の生産に影響し、売上損失は約3兆ウォン(約3000億円)超に達した。
 現代自の経営者側には、設備投資や人員配置について労組側の同意が事実上必要となっているほか、雇用安定のための国内生産量の維持が求められているという。朝鮮日報によると、13年度の現代自の平均年収はトヨタ自動車を上回った。現代自の労組組員は、国民から“労働貴族”と揶揄(やゆ)されている。
 サムスン電子の18年1~3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が半導体市況の好調を追い風に過去最高を更新した。4月26日配信の聯合ニュースは「業績好調も悪材料山積 サムスン電子『試練の時』」という見出しで紹介。サムスン系列会社の社員の「業績を別にすると、最悪の試練の時に直面していると言っても過言ではない」とのコメントを掲載した。朴前大統領への贈賄事件をきっかけにした、財閥への優遇策や、一部メディアが提起する系列会社の土地をめぐる疑惑など、批判的な世論がサムスングループの重しとなっている。
 韓国の左派系日刊紙「ハンギョレ新聞」(日本語電子版)の記事「サムスンの『労組認定』は虚言だったか」(6月1日)によると、4つのサムスン系列会社の労組が7月中旬、大統領府前で無労組経営の完全廃棄などを要求する記者会見を開くと伝えた。労組幹部は「サムスンが何の変化もないならば、4つの労組が連帯で全面ストを並行推進する計画だ」と話した。
 労組が全面ストを推進するのはサムスンではもちろん初めてだ。労組への対応を誤れば、現代自と同じてつを踏むことになるだろう。(経済本部 鈴木正行)
 サムスングループ 1938年に故李秉詰氏が創業した三星商会を原点とする韓国最大の企業グループで、李氏の三男、李健煕(イ・ゴンヒ)氏がグループの規模や事業を拡大。グループ全体の売上高は韓国の国内総生産(GDP)の約2割を占め、プロ野球の球団も経営する。中核のサムスン電子は69年設立の総合電機・電子部品メーカー。サムスン電子の2018年1~3月期連結決算によると、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比58%増の15兆6400億ウォン(約1兆5900億円)となり、四半期として過去最高を更新。半導体部門が業績を牽引(けんいん)した。