民泊解禁 本当にあった山中湖の違法民泊 平野和之氏

iRONNA発
新法施行に合わせ民泊営業を始めた住宅 =15日午前、東京都西東京市

 住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」が全国で解禁された。増え続ける訪日外国人の受け皿として期待が高まる一方、近隣トラブルや治安悪化への懸念も絶えない。「おもてなし大国」ニッポンで民泊がイマイチ盛り上がらないのはなぜか。(iRONNA)

 昨年12月、趣味の釣りのため、人気の山中湖(山梨県山中湖村)で宿泊することにした。釣りは午前3時には起床せねばならず、高級なホテルでゆったりできるわけではないので、民宿をインターネットで探した。古民家風の民宿が「2泊で7千円」となっており、これに決めた。

 ところが、カーナビで目的地を設定し到着したが、予約した民宿の看板が見当たらない。すでに辺りは真っ暗で、民宿に何度も電話したが、誰も出ない。しばらくすると非通知の着信があり、電話に出ると、中国語なまりの男の声が聞こえてきた。

 私「ナビの通りに来たが、何もない。太陽光発電の畑と閉店したそば屋があるが」

 男「そこです」

 私「ん? そば屋が…」

 男「はい、そば屋の2階です」

 嫌な予感がした。2階に上がると受付にいた中国人らしき男が「お金は現金で」と言う。明細もなければ、領収書もない。裏口に案内されて中に入ると、室内はきちんとリフォームされ、思ったより部屋もきれいである。しかし、部屋の鍵はなかった。

 詳細を聞いてみると、男はこう言った。「私はよくわかりません。ボス(中国人オーナー)から言われているだけで」

 さらに30分後、コンビニエンスストアに買い出しに行こうとしたとき、驚愕(きょうがく)した。なんと、無人になっていたのだ。周辺は無電灯なのに、閉店したそば屋を改造しただけの建物の2階に1人で宿泊なんて不安で仕方ない。

無法地帯

 そもそも、6月15日に施行された民泊に関する新法では、家主不在の場合、住宅宿泊管理業者の委託が義務付けられる。これがなければ、フロントや同居人が必要になる場合もあるが、今回のケースは、業者委託やフロント配置を装っているといえる。

 こうした違法民泊が実際にあることを考えれば、民泊が今後「無法地帯」のような宿泊施設と化してしまう可能性が高い。人目をはばかる不倫に利用されるだけならまだマシだが、売春やわいせつ行為といった犯罪の温床にもなりかねない。

 むろん、最近は民泊を利用した事件が相次いで報じられている。あくまで可能性だが、テロリストの拠点に利用されることも予想され、結果的に暴力団のような反社会勢力の資金源になっていく恐れも十分ある。

 現状を考慮すれば、民泊の規制緩和による経済成長戦略や宿泊施設不足解消と、犯罪などの社会問題の解決コストをてんびんにかけた場合、今回施行された民泊新法では不十分だ。ゆえに以下のような対策が早急に必要であると考える。

 (1)民泊の無許可営業の罰則強化(2)警察の権限強化(3)民泊の防犯カメラの設置基準強化(4)戸建て建築などでの民泊の禁止(5)民泊衛生管理者制度の設置(6)違法通報制度に対するインセンティブ(7)地域自治会との連携による徹底したセキュリティー強化(8)サブリース(転貸し)の禁止-などである。

中国資本の参入リスク

 さらに、山中湖村に限れば、神奈川県の水源に隣接しており、中国資本による土地取得が進む可能性がある。そうなれば、少々大げさかもしれないが、水源の権利を中国資本に奪われるなど、安全保障にも影響しかねない。国益を害するリスクがある土地取得規制の議論に、民泊も入れるべきかもしれない。

 もちろん、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた一時的な民泊の規制緩和論や地方創生を目的とした民泊を否定はしない。ただ、あまりにリスクが大きいのが現状だ。

 ゆえに、地方などで経営難に苦しむ民宿の再生プランと、急増する観光客による宿泊施設不足解消を目的とした都市部での新規民宿参入をそれぞれ分けた上で、民泊新法を議論し直すべきである。

 規制や取り締まりを強化し、安心感が広がらない限り、日本において民泊は遅かれ早かれ廃れていくのではないだろうか。

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【プロフィル】平野和之 ひらの・かずゆき 経済評論家。昭和50年、神奈川県生まれ。法政大卒業後、通信関連会社に入社。平成12年に退社し、マーケティング会社を設立。20年から経済評論家として講演、執筆活動などを始め、テレビ出演も多数。『図解経済入門 基本と常識』(西東社)など著書多数。