【ソウルから 倭人の眼】嫌な予感…韓国が言う「戦時の女性への性暴力」とは 慰安婦と無関係と言うけれど - 産経ニュース

【ソウルから 倭人の眼】嫌な予感…韓国が言う「戦時の女性への性暴力」とは 慰安婦と無関係と言うけれど

 18日、ソウルの韓国外務省で記者会見する康京和外相(聯合=共同)
河野太郎外相(ロイター)
 小渕恵三元首相と金大中(キム・デジュン)元大統領による日韓パートナーシップ宣言から20年の今年を機に対日関係の改善を図る韓国で気になる動きが見られる。またもや、2015年の日韓合意で「完全かつ不可逆的に解決」したはずの慰安婦問題だ。
「国際社会で深刻な人権問題に」
 ことの発端は、康京和(カン・ギョンファ)外相が18日に行った就任1年の記者会見での発言。康氏は「国際社会で慰安婦問題が『戦時の女性への性暴力』という非常に深刻な人権問題として位置付けられるよう、韓国外務省として計画している」と語った。
 これに対し河野太郎外相は翌19日の記者会見で「日韓合意の精神に反するものだ」と不快感を示した。にも関わらず、康氏はこの日「女性とともにする平和イニシアチブ」と銘打った計画の開始を宣言。「紛争地域での性暴力根絶に向け韓国が主導的な役割を果たす」というものだが、問題は計画に関わる諮問委員だ。
 発表資料には諮問委員として学者や研究者、市民団体代表ら21人が名を連ねている。中には元慰安婦の女性を支援する韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺隊協)の尹美香(ユン・ミヒャン)代表や、元慰安婦が暮らす施設「ナヌムの家」の安信権(アン・シングォン)所長ら、長年にわたり日本批判を繰り返している人々も含まれている。
 このほか「日本軍慰安婦ハルモニ(おばあさん)とともにする市民の集まり」という団体の地方の代表3人もいる。韓国政府発表の名簿に目を疑った。日本政府も非常に驚いたようだ。
「合意とは関係がない」
 20日午前、河野外相は韓国外務省から「計画は慰安婦問題と無関係だ」との説明があったことを日本外務省で記者団に語った。そのほぼ直後、ソウルのプレスセンターで康外相が外国メディアとの記者会見に臨んだ。この場で、諮問委員に慰安婦支援団体の代表を何人も含むイニシアチブ計画が、日韓合意に反していないかを尋ねてみた。
 日本の記者の質問であり、日本外務省からの問い合わせの直後だったことで、康氏は日本側の反応を強く意識していた様子だった。そしてこう言い切った。「韓日合意とは関係がない」と。一方で「韓国は(慰安婦問題などをめぐり)教訓がある国だ」とし、「再びあってはならない」という意味で、慰安婦問題を歴史の教訓にするための努力には積極的に支援するとの姿勢を示した。
 挺隊協の代表らを諮問委員に指名したことについては、幅広い意味での女性問題への関与を意味しているようだ。始まる前から疑ってかかるのはよくないのだろうが、何か嫌な予感が頭をよぎった。
文在寅政権と手を組む
 挺隊協は、ソウルの日本大使館前で毎週開かれている慰安婦問題の抗議集会を主導している。日韓合意の破棄を主張し続けており、元慰安婦に付き添って訪日するなど、海外での対日抗議活動も続けている。
 文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後には、元慰安婦と大統領府で文在寅大統領と会ってもいる。その挺隊協の尹代表の姿を今年3月に韓国南部の済州島で見た。外国メディアを対象にした慰安婦問題とは全く関係のないプレスツアーに、途中からなぜか尹氏らが加わってきたのだ。
 「主催者が招待したのだろう」と思って無視していたが、偶然、気になる言葉を耳にした。「文在寅政権と手を組まねば」。某メディアの記者に尹氏は笑いながら、そう語っていた。尹氏と話していた記者に確認すると「慰安婦問題では文政権に協力してもらう」との趣旨だったという。
 韓国政府の計画には「韓国の市民社会、専門家らを国際的専門家に育て寄与することを講じる」ことが盛り込まれている。願いが実現したのか、尹氏は今回、国際社会に関与する計画に「専門家」である諮問委員として加わった。
ベトナム戦争での韓国軍の蛮行も?
 元慰安婦支援団体の代表が韓国政府の計画に関わることに、河野外相は「そうした方々の活動が関連しているわけではない」との認識を示したという。日本としては「今後の動向をしっかり注視する」(菅義偉官房長官)しかない状況だ。
 嫌な予感の半面、韓国政府が強調する「戦時の女性への性暴力の根絶に向けた主導的な役割」について思い浮かんだことがある。ベトナム戦争での韓国軍兵士による性的暴行問題だ。
 韓国兵の現地女性への性的暴行で生まれた混血児(ライダイハン)の問題を英国の民間団体が追及し始めている。韓国が「戦時の女性への性暴力の根絶」を叫ぶのなら、まさにこの問題を、まず国際社会に自ら訴えるべきではないか。
 韓国ではベトナムでの韓国軍兵士の性的暴行問題は一部で認識されてはいるものの、大っぴらには語られていないのが現状だ。
 この問題をめぐり韓国で昨年、興味深い出来事があった。ソウルのベトナム大使館前で、何と挺隊協の尹代表が謝罪デモを行った。ベトナム蛮行問題は、康外相の言う「韓国の教訓」でもある。ただし、尹代表はこの時「私たちと同じ被害に遭ったベトナム女性に謝罪します」との元慰安婦のメッセージを掲げた。ベトナム蛮行と慰安婦問題を同列視しているのだ。
 日韓パートナーシップ宣言20周年の節目の年は間もなく折り返し点。そんな中「戦時の女性への性的暴行問題で国際社会に寄与する」という韓国が、国際社会に示す「教訓」が何なのかに注目したいところだ。(ソウル 名村隆寛)