【原発最前線】非公開ヒアリングは「癒着」の再来? 規制委が2回に制限へ - 産経ニュース

【原発最前線】非公開ヒアリングは「癒着」の再来? 規制委が2回に制限へ

「東海再処理施設」の廃止措置計画について発言する原子力規制委員会の更田豊志委員長=13日午前、東京都港区
原子力規制庁で行われている原発の安全性などをめぐる事業者との審査会合=5月31日、東京都港区
 原発の安全審査などの「透明性」確保を掲げる原子力規制委員会で、事務局の規制庁に対し、「(審査前に行う)『非公開ヒアリング』の数が多過ぎる」と更田(ふけた)豊志委員長から“指導”が入った。審査会合は原則公開されているが、ヒアリングは簡単な議事録のみで詳細は伏せられている。更田氏は「(事業者と)ネゴシエーション(折衝)をやっているのではとみられることは、組織の基幹に関わる」と危機感を示した。(社会部編集委員 鵜野光博)
「事業者と結託」と批判
 きっかけは、4月25日の規制委定例会合で、昨年5月2日に中部電力浜岡原発で放射性物質を含む粉状の堆積物が見つかった事案が報告されたことだった。中部電は発見当日に報道発表していたが、その原因分析と対策が規制委で議題となるまでに、約1年が経っていた。
 更田氏は内容についての議論の後、「時間がかかり過ぎだ。事業者から生の報告・説明を受け、ヒアリングを繰り返し、注文をつけ、仕上がったものをこうやって報告するというプロセスは正しいのか」と問題提起した。
 「規制庁がヒアリングを繰り返し、報告書を修正して、このように仕上がりました、と。これは規制と事業者の一体化だ。規制委側からみると、規制庁と事業者が“結託”して報告書を合格点にして持ってきました、というふうに見えてしまう」
 この案件は事故についての法令報告だったが、更田氏は原発の安全審査などの会合前に行われているヒアリングにも厳しく言及した。
 「ヒアリングは公開の席での議論に先立って少数回行うものであって、審査会合前に10回ヒアリングを繰り返しました、なんていうのは本末転倒。私が出席したときは、ヒアリングを禁止すると職員に言ったこともある。事業者の出してくる資料が満足なものでなかったら、まず公開の会合をやるべきだ。そうでないと、事業者が何を最初に主張したのかが分からない」
2回を目安に「制限」へ
 更田氏はこの日の定例会見で、ヒアリング偏重の現状について「旧規制組織、原子力安全・保安院時代のやり方をすごく連想させる」とも指摘した。
 更田氏の検討指示を受け、規制庁は5月23日の定例会合で、事故発生から1カ月以内をめどに事業者との公開会合を設けるなどとした透明化と迅速化の案を提出し、了承された。
 続いて6月6日には「審査の透明性向上に向けた対応策」を提案した。それによると、新規制基準への適合性の確認は審査会合で実施し、ヒアリングは資料の内容確認だけで改善指示などは行わず、回数も2回を目安とする。
 また、事業者の調査や準備に時間がかかっているケースでも、数カ月に1回などのペースで公開の審査会合を開き、状況を報告させ、未解決の論点について規制側と事業者側のどちらがボールを持っているかを確認する-などとしている。
 更田氏は「ヒアリングではこちら側の判断を伝えてはいけない。ネゴシエーションをやっているのではないかとみられることは、組織の根幹に関わることだ」とクギを刺す一方、ヒアリング自体を公開することについては「セキュリティーに関わる情報もあるので、慎重に、段階的に進めてもらう」との考えを示した。
問題は人の「心」?
 会合では伴信彦委員が「公開の場で議論をすることを恐れないマインドが必要になるのではないか」と規制庁職員らの心構えについて触れ、「例えば勘違いで、とんちんかんな質問をしてしまった、というようなことを責めることがないようにするべきだ」と“優しい”提案を行った。
 更田氏も定例会見で職員の心の問題に言及した。
 「例えば審査官が技術的な力量に不安があると、いきなり公開の会合で言えない。事前にこれはおかしな質問ではないよね、と確認してからでないとできない。ヒアリングでは自由に話せるが、公開の席になると引っ込み思案というか、黙ってしまうような人物像は、私たちが求めるものでは全くないので、排除したい」
 審査会合での議論は徹底して理系の内容だが、やりとりの裏にはこんな“文系”要素も潜んでいる。福島第1原発事故をきっかけに、それまでの事業者と規制組織との一体化が強く批判された。規制委への改組で両者の分離は体制的には実現したが、緊張関係の維持にはヒアリングなどの仕組みの改善と、人の心の問題が複雑に関わってくる。今回は更田氏の指導力を評価すべきだろう。
□原子力規制庁
 原子力規制委員会の事務局組織。東京電力福島第1原発事故を教訓に、内閣府の原子力安全委員会、経済産業省の原子力安全・保安院、文部科学省の放射線モニタリング部門などを統合し、平成24年9月に発足した。緊急事態対策官を置いて原発事故に対応する長官官房と、原発の安全審査などを行う原子力規制部に分かれ、各地の原子力施設の近くに原子力規制事務所を設置している。職員数978人(平成30年3月末現在)。