【野口裕之の軍事情勢】中国諜報機関は金正恩氏座乗の中国特別機を徹底検査! 便器に残る国家機密とは? - 産経ニュース

【野口裕之の軍事情勢】中国諜報機関は金正恩氏座乗の中国特別機を徹底検査! 便器に残る国家機密とは?

10日、中国国際航空の特別機で北朝鮮・平壌国際空港からシンガポールに向け出発する金正恩朝鮮労働党委員長(ロイター)
中国国際航空の特別機でシンガポールに到着した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右)=10日(ロイター)
10日、シンガポールのチャンギ国際空港に駐機する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が搭乗した航空機(松本健吾撮影)
昼食会を終えたトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=12日、シンガポール(AP=共同)
会談の冒頭で握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=12日、シンガポール(AP=共同)
米在台協会台北事務所の新庁舎落成式に出席するロイス米国務次官補(左から2人目)や台湾の蔡英文総統(中央)ら=12日、台北市(共同)
米在台協会台北事務所の新庁舎=12日、台北市(共同)
駆逐艦「基隆」に乗艦し演習を視察する台湾の蔡英文総統(前列左端)=4月13日、台湾・蘇澳沖(台湾国防部提供・共同)
7日、台湾中部・清泉崗空軍基地で行われた演習で、管制塔を奪還する陸軍の部隊(田中靖人撮影)
5日、台北郊外の淡水河河口で、空砲を発射する車載型の迫撃砲(田中靖人撮影)
7日、台湾中部・清泉崗空軍基地で行われた演習で、フレアを出して戦線を離脱するF16戦闘機(田中靖人撮影)
アジア安全保障会議の昼食会で握手するマティス米国防長官(左)と中国軍事科学院の何雷副院長。中央は小野寺五典防衛相=2日、シンガポール(共同)
 北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長は12日の米朝首脳会談を前にシンガポール入りしたが、北朝鮮が使用した3機の航空機のうち北朝鮮国営高麗航空の輸送機には移動式専用トイレが積まれていた。国家指導者たる「正恩氏の健康状態を秘匿する目的」なので、メディアの注目を集めたが、重大な点を見逃している。
 「4月の南北首脳会談でも、正恩氏は移動式専用トイレを使ったが、トイレは北朝鮮へと『帰国』を果たした」(日朝公安筋)。今回、正恩氏は中国のナショナルフラッグ=中国国際航空の特別機に搭乗しており、機内トイレの内、正恩氏の専用トイレに残される排泄物は中国諜報機関の手に渡る。正恩氏をシンガポールで降ろした特別機は、通常ならば給油&メンテナンス能力を備えるシンガポールの空港で待機する。ところが特別機は一旦、北京に帰り、正恩氏の出国時に合わせ再びシンガポールに戻った。こうした“時間的ロス”の背景を考えれば、中国諜報機関による排泄物などの分析は一層現実味を帯びる。
 機内トイレの排泄物はタンクに導かれるが、トイレ掃除など管理権は中国側が有し、便器に付着した排泄物の採取は否定できない。中国諜報機関の技術陣がトイレを、排泄物取得に向け「特別仕様」に改造しているかもしれない。小型簡易トイレを狭い機内に持ち込むケースも想定されるが、正恩氏の尊厳を侵し、可能性は低い。
 ソ連・スターリン政権の諜報機関が敵対国は無論、同盟・友好国の国家指導者の排泄物を熱心に収集し、精神分析などに利用していた事実が近年明らかになったが、中国も米中を天秤にかける正恩氏を信用していない。正恩氏の健康&精神状態は、朝鮮半島の核・ミサイル開発問題を左右し、北東アジア情勢激変を誘発する。正恩氏は重要な監視対象だ。
 仮に特別機内で簡易トイレを使用したとしても、繰り返すが、管理権は中国側にある。愛煙家の正恩氏が吸ったたばこの吸い殻+食器&食べ残しには唾液が付着し、DNA鑑定に有効で、影武者がいる正恩氏の人定に役立つ。従って、北朝鮮の防諜機関員が機内より運び出しただろう。
 では、同じく健康やDNA鑑定に役立つ指紋や毛髪はどうか? 「狭い範囲で行われた4月の南北首脳会談では、正恩氏が触ったモノを、北朝鮮防諜機関員が特殊な布で拭き取っていた」(日朝公安筋)。しかし、中国管理下の機内から全ての指紋や毛髪を消し去る工作は至難。加えて、特別機は機体とDNAの「検査」のため北京に戻り、北朝鮮防諜機関に十分な工作時間は与えられなかった。
台湾旅行法の威力で米在台新庁舎誕生
 正恩氏の専用機は古い機種で安全性にも問題があった。
 正恩氏が自国の専用機を予備機に回し、排泄物+指紋+毛髪を中国諜報機関に採取される危険を冒しても中国国際航空の特別機に搭乗したのは、安全を最優先した証左。正恩氏の専用機が平壌⇔シンガポール間を往復できた“実績”も、正恩氏の「ビビリ度」を際立たせた。
 他方、中国の危機感も透ける。
 今回、特別機を提供+航路を飛行中に変更し、安全確保+中国空軍機が護衛したが、中国の習近平国家主席は事前に次の点にクギを刺したのではないか。
 米国のドナルド・トランプ大統領は米朝首脳会談前、朝鮮戦争(1950~53年休戦)の《休戦協定》をレベルアップさせた、会談での「終戦宣言」の可能性に触れた。宣言されれば、休戦協定署名国(米中朝)中、中国だけがはずされる屈辱的国際史を刻んでしまう。そこで、習氏は「中国はずし」にクギを刺し、専用機や護衛機の提供を申し出たのだ。結果、「終戦宣言」は出されなかった。
 もっとも、「中国はずし」とは比較にならぬほどの危機が、習氏の髪の毛を逆立てている。
 米朝首脳会談がシンガポールで行われていた頃、台湾では、米国大使館に相当する《米国在台協会台北事務所》の新庁舎落成式が行われ、出席した米国の国務次官補がスピーチした。
 「(新庁舎は)米台関係の強さの象徴で、今後の偉大な協力を可能にする先進的施設だ」
 台湾の蔡英文総統も出席し、祝辞を述べた。
 「自由で開放的な民主国家として(台米が)団結すれば、一切の障害を克服できる。価値観を共有する台米の物語が新たな一章に踏み出した」
 出席が観測された、中国に毅然とした姿勢を貫くジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は米朝首脳会談に注力しており、実現しなかった。《ボルトン氏出席で中国を刺激すれば、米朝首脳会談に影響するとの配慮があった》といった報道もあるが、違う。
 既に米国務次官補代理や米商務次官補代理が訪台しており、訪台する高官のランクが今後ジワジワと上がっていくはず。訪台した米国務次官補代理は、蔡総統も出席した非営利団体主催の晩餐会で「台湾防衛」を再確認。米下院外交委員長も蔡総統と総督府で会談済みだ。
 急速に進化する米台高官交流は、米議会で3月に成立し、国家戦略の劇的大転換を後押しした《台湾旅行法》の威力に他ならない。
 米国は1979年に中国と国交樹立=台湾と断交した際、中国の台湾侵攻阻止を念頭に武器売却などを担保した《台湾関係法》を発効させた。ただ、対中配慮もあり、総統/副総統/行政院長(首相)/外相/国防相らトップ5人のワシントン入りを事実上禁じ、米政府側も台湾のカウンターパートに会えなかった。それが一転、米台首脳以下いつ&どこでも会えるようになったのである。
 特記すべきは、台湾旅行法が上下院ともに全会一致で通過した政治情勢だ。初の総統直接選挙→野党・民進党への民主的な権力移譲→平和的政権交代…と、台湾は民主制度を完成させた。国際秩序と米国益に損害をもたらす中国の「中華帝国化」との鮮明な落差が米議会・政府に深く認識された証だった。中国の猛烈なロビー工作にもかかわらず、だ。
在台湾米軍の創設も視野
 世界各国の米国大使館警備を担当する米海兵隊の台湾駐屯も期待したい。
 そう論ずると、1972年に米中が調印した共同声明《上海コミュニケ》を持ち出す有識者がいる。確かに、米国はコミュニケで「一つの中国」「米兵力の段階的縮小→撤収」を認め、79年に米軍駐留を終了した経緯はある。
 だが、ボルトン氏は昨年、国際法上の《事情変更の原則》を説いた。コミュニケでは「両国はアジア・太平洋地域で覇権を求めない」でも合意した。が、中国が南シナ海で次々と海上軍事基地を造成するなど軍事膨張をやめぬ現在、《コミュニケの大部分(前提)が時代遅れになり、効力を失った》という合法的解釈は成り立つ。
 以下、米政府・軍に影響を与える戦略家エドワード・ルトワック氏の著書《自滅する中国/なぜ世界帝国になれないのか=芙蓉書房》の助けを借りて論じる。
 《自滅する中国》に通底する論理的支柱の一つは、一方的に勝ち続ける過程で相手の反動を呼び起こし、結局は自滅する逆説的論理《勝利による敗北》。政治・軍事・経済・文化・移民…あらゆる分野での国際常識を逸脱した台頭・侵出は畢竟、諸外国の警戒感や敵愾心を煽る。
 中立的立場の国や友好国にとっても許容限度を超え、離反を誘発。敵対国同士の呉越同舟さえ促す。公式・非公式に連携・協力もし、場合により同盟構築に至る。国際情勢は中国にとり次第に不利になり大戦略・野望をくじく結末を引き寄せる。
 現にトランプ政権は4月、人民解放軍の台湾侵攻渡海作戦の防壁となる潜水艦の自主建造計画について、関連技術を持つ米企業の営業活動を許可した。世界の安全保障関係者が集う2日の《アジア安全保障会議》で、ジェームズ・マティス米国防長官も言い切った。
 「台湾との協力関係を誠実に守る。台湾関係法に基づき台湾の自主防衛に必要かつ十分な防衛装備品を供給し、支援・協力を実施する」
 とはいえ、米国は原子力潜水艦建造に特化している。その点、日本は最高レベルの通常型潜水艦を自力建造できる。わが国は米国と連携し、台湾が技術的限界で足踏みする潜水艦建造に手を貸す時だ。
 案の定、中国外務省報道官は5月末の記者会見で、マティス長官がアジア安全保障会議において、対中強硬姿勢を示すと予測した質問にこう答えた。
 「中国は南中国海で最も頻繁に軍事活動をしている国ではない。南中国海で軍事化を進めているのは一体誰か。答えは言うまでもない。平和・安定を維持するよう、米国に忠告したい」
 「盗人猛々しい滑稽さを感じる」とまで公言したが、かくなる「感覚の欠如」では、経済で釣られ、中国にすり寄っていた豪州やマレーシアも目を覚ますのも道理だ。
 自国のパワー増大→反中包囲網形成→パワー減退をたどる皮肉な状況の回避には、軍事膨張を遅らせる他ない。けれども、中国は他国への挑発的大戦略を止められない。なぜか-
 まず、中華思想に魅入られた中国に対等なる感覚はない。冊封体制や朝貢外交に象徴される上下関係が全て。しかも《孫子の兵法》通り、陰謀や欺瞞を繰り返す。狡猾な策略=知恵だと、漢民族は信じて疑わず、欧米や日本などは権謀術数で操れると慢心する。
 ただし、同一文化内では通用するものの、異文化に強いれば自国崩壊につながる。モンゴルやトルコ系王朝、満州族に敗北を喫し、過去1000年間で漢民族が大陸を支配したのは明王朝(1368~1644年)ぐらい。ルトワック氏は自信を持って断じる。
 「漢民族に(自身が思うレベルの)戦略の『才』はない」と。