国連制裁ルールを守れ 強欲な対北朝鮮投資家に警告せよ

田村秀男のお金は知っている
中国の対北朝鮮投資と輸出・輸入

 「今や世界全体はお前がバカだと知ることになったぞ」-。シンガポール在住の著名投資家、ジム・ロジャース氏は12日、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が握手するや、ただちに日本の市民団体「アジア調査機構」の加藤健さんに対して、子供じみた電子メールを送り付けてきた。(夕刊フジ)

 加藤さんは長年にわたって対北朝鮮国連制裁破りを調べ、各国政府や議会、国連に告発活動を続けてきた。対北投資を推奨するロジャース氏については、国連安保理、米財務省、さらに米上下院議員百数十人に不当だと訴えた。加藤さんは本人にも直接、警告した。

 ロジャース氏はかなりのプレッシャーを感じていたようだ。米朝首脳が「非核化で合意」したなら、今後は国際社会の対北経済制裁が緩和され、西側からの対北投資のチャンスになる。どうだ、俺の投資判断は正しい、とうれしさ爆発というわけだ。

 軍事国家北朝鮮の国民生活は犠牲にされ、インフラ、産業設備も老朽化が激しい。しかし、戦前に日本の朝鮮総督府が調べたデータによると、北朝鮮の鉱物資源は極めて豊富である。金、ウランなど希少金属にも恵まれている。それに着目した有象無象の投資家や企業が対北投資のチャンスを狙ってきた。

 ロジャース氏の他にもっと「大物」の仕掛け人が西側にいる。最近は鳴りを潜めているが、英国の投資家、コリン・マクアスキル氏が代表例だ。英海軍情報将校上がりの同氏は1970年代から北朝鮮産の金塊をロンドンで商い、87年には対外債務不履行を引き起こした北朝鮮の代理人となって西側民間銀行と交渉した。2006年からは北朝鮮の隠し口座のあるマカオの銀行BDAを対象とする米国の金融制裁解除に向けマカオとワシントンの当局と交渉、解決した。

 08年にブッシュ政権(当時)が北に対するテロ支援国家指定解除に踏み切ると、大型の対北投資ファンドを準備したが、その後の情勢緊迫化とともに休眠に追い込まれた。昨年には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に接触を試みるなど、活動再開の様子だ。

 米欧系投資ファンドに対し、対北投資の主役の座を狙うのは韓国と中国だろう。中国は、地政学的利益の点からも北への開発投資での主導権に固執する。グラフは中国の対北投資と貿易の推移だが、投資面では12年をピークに急減している。金正恩氏が亡父、金正日(キム・ジョンイル)氏の権力を継承したのが11年末で、13年12月には中国資本の導入に熱心だった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を粛清した。

 米朝首脳会談開催決定後、中国の習近平国家主席が停滞してきた対北投資の再活性化をめざすとの期待が中朝国境地帯に高まっている。遼寧省の丹東市の不動産価格はこの数カ月で2倍になったという。

 核・ミサイルばかりでなく、横田めぐみさんら拉致問題の全面解決を最優先すべき日本は毅然として、ムード先行の強欲な対北投資・貿易には、国連制裁ルール厳守を求めるべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)