娘の恋人と赤ん坊を奪う“暴走母” 家族の絆を引き裂く問題作「母という名の女」が公開 - 産経ニュース

娘の恋人と赤ん坊を奪う“暴走母” 家族の絆を引き裂く問題作「母という名の女」が公開

妊娠した次女ヴァレリア(アナ・ヴァレリア・ベセリル、手前)に献身的だった母アブリル(エマ・スアレス、奥)だったが…
2人の娘と仲良くしていた母アブリル(エマ・スアレス、中央)だったが…
子供を授かった次女ヴァレリア(アナ・ヴァレリア・ベセリル)に思わぬ試練が襲いかかる
自分の欲望のまま暴走を始める母アブリル(エマ・スアレス)
娘の赤ちゃんを育て始める母アブリル(エマ・スアレス)
ミシェル・フランコ監督は「どこまで自分が執着できる題材かが重要」と語る
出演者に演技指導をするミシェル・フランコ監督(右)
 映画でよく描かれる「家族の絆」。最近では「盗んだのは、絆でした」がキャッチフレーズの「万引き家族」(是枝裕和監督)が評判を呼んでいる。16日公開のメキシコ映画「母という名の女」は、「万引き家族」と逆行し、自分の欲望のまま家族の絆を引き裂く母親の暴走ぶりを描いた衝撃作だ。
 メキシコのリゾート地で暮らす2人の姉妹の前に、疎遠になっていた美しい母親のアブリル(エマ・スアレス)が姿を現す。17歳の次女ヴァレリア(アナ・ヴァレリア・ベセリル)は、同じ年の恋人マテオ(エンリケ・アリソン)の子を身ごもっていた。はじめは献身的だったアブリルだが、無事出産した娘に対して意外な行動に出る。マテオを誘惑して関係を持ったうえ、赤ん坊を勝手に養子に出して自分で育て始めたのだ。
 衝撃の展開に、昨年の第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した。メガホンをとったミシェル・フランコ監督(38)がメキシコで妊娠中の少女を見かけたことが製作のきっかけになった。少女が抱える背景を思い描き、さらに子供への対抗心を燃やす親というテーマも加わったという。「どこまで自分が執着できる題材かが重要だ」とフランコ監督は強調する。
 欲望のまま生きる母親を強烈に演じたエマ・スアレス(53)は、主演したスペイン映画「ジュリエッタ」(ペドロ・アルモドバル監督)を見て決めたという。この映画では本作と逆で娘を溺愛する母親を演じているのが面白い。観客はアブリルの異常な行動にあっけにとられるが、フランコ監督自身も「自分の想像を裏切ってくれる映画が好き」と笑う。
 カンヌ国際映画祭では本作のほか、「父の秘密」(2012年)で「ある視点」部門グランプリ、「或る終焉(しゅうえん)」(15年)で脚本賞を受賞している。
 5月に同映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝監督には「シンパシー(共感)を感じる」という。「コレエダの作品は全部見ているし敬愛もしている。登場人物の関係の構築やドラマの作り方に共感を覚えるんだ。イングマル・ベルイマンやウディ・アレン、そして黒澤明ら巨匠のように作品を次々に生み出すことは作家として重要で、そこも僕と似ているね」(WEB編集チーム 伊藤徳裕)