「クリスマステロ」に怯える!?習近平氏 クーデターにビクつく金正恩氏と励まし合う?

野口裕之の軍事情勢
中国国営通信新華社が5月8日に配信した、中国遼寧省大連で会談に臨む中国の習近平国家主席(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の写真。いったい何を話したのか…(新華社=共同)

 北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長と中国の習近平国家主席は5月上旬、中国遼寧省大連の海岸沿いを寄り添うように“散策”したが、12日にシンガポールで予定される米朝首脳会談を前に「中朝同盟」が繰り出す手の内を明かさぬ盗聴対策の一環だった。盗聴されやすい屋内を避け、記録担当者も帯同せず通訳官のみでの“散策”であった。

 事実上の一対一の会談を外交用語で「テタテ」と称するが、裏返せば、両氏ともに自国の治安要員すら信用できない境遇ということ。当然、性別や車両のナンバーまで識別する米国の偵察衛星は、会話中の両氏の姿を撮影したはずだ。

 ただ、CIA(米中央情報局)などは両氏の唇・ほほ・あごの微細な動きを読唇術で解析する手法に長けているが、超高性能の米偵察衛星でさえ、唇の動きを鮮明に捉える解析度には達してはいない。さて、中朝首脳会談の結びの言葉は何だったのか? 論拠は後述するが、筆者には両氏がどちらからともなく、難局を乗り切るべく「『身体』には互いに『気を付けよう』」と社交辞令を発し、会談を締めくくったに違いあるまいと推測している。

 『健康』と言わずに『身体』に『気を付けよう』と表現したのは、両氏を取り巻く危険な臭いが漂うからだ。朝鮮人民軍&中国人民解放軍のクーデター+軍に加え朝鮮労働党&中国共産党内部の反対派分子&不満分子による暗殺にも『気を付け』ねばならない。両氏はそういう危ない立場に立たされているのである。

金正恩氏がヤセ細るほど怖がるクーデター

 金委員長は米朝首脳会談に向け、北朝鮮を出国→シンガポールに滞在する。ところが、自身がいない間にクーデターが起きるのではないかと、ヤセ細るほど心配しているとの観測が浮上している。北朝鮮の祖国統一委員会のウェブサイト《わが民族同士》は3日、こう論評した。

 《米国の手下に過ぎぬ日本の反動らが『最大の圧迫を』とわめき立てている》

 《かくなる醜態がもたらす結果は、日本が直面している『日本疎外』現象だけだ》

 『日本疎外』は、安倍晋三政権を執拗に批判する日本や韓国のメディアに頻繁に登場する「蚊帳の外(朝鮮半島問題での日本孤立)」表現を引用している。反り返った姿勢で虚勢を張る北朝鮮だが、金委員長は内心ビクビクしながらシンガポール入りするようだ。

 5月22日付米紙ワシントン・ポストは《米朝交渉に詳しい関係者の話》として、金委員長のシンガポール外遊についてこんな見方を示した、と報じた。

 《金委員長は本国を離れる間に、軍事クーデターや自身を追い落とす内部的な動きが起きる事態を心配している》

 同紙によると、北朝鮮側が米国当局に対し、シンガポール滞在中の金委員長の身の安全を保証するよう暗に要求。「金一族の執事」の名を持つ金昌善・国務委員会部長もシンガポールに先乗りし、会場・宿泊ホテルの警備態勢などの確認作業を進めた。

 韓国紙・朝鮮日報(日本語版)も5月30日、《平壌を離れて大丈夫? 金正恩氏の『最後の悩み』》と題した記事を掲載した。

 記事では、米朝首脳会談の場所は外国で、《金正恩体制に不満を持つ勢力があれば、何らかの行動を起こす時間を確保できる》という消息筋の話を紹介した。

 父・金正日総書記の死去で2011年12月以降、最高指導者の地位に君臨する金委員長だが、過去の外遊は2回にとどまる。訪問先も隣接する中国一国で、動静を隠密にしておきたい北朝鮮の国営メディアが外遊を伝えたのは帰国の途に就いた後だった。金委員長の恐怖心を物語っている。

9回もの暗殺未遂を乗り越えた習近平氏

 習主席も昨年12月24日、人民大会堂での会議が終わり、専用車両に乗ろうとした際、爆発物の炸裂に遭遇した。習主席は「腹痛」を起こし、北京市内の中国人民解放軍直属の《中国人民解放軍総合病院/通称・301病院》に緊急搬送された。爆発は「中国共産党本部や政府が所在する中南海エリアに駐車中だった習主席専用車両近くの車」とする情報もある。

 米国に拠点を置く中国問題専門の華字ニュースサイト《博聞新聞網》が、301病院関係者の話を流したが、筆者も日中公安筋の情報で博聞新聞網の内容を確認・捕捉した。

 習主席を狙った暗殺未遂事件は過去5年間の報道をカウントすると、少なくとも8回発生していると推定され、昨年12月が9回目(報道回数)になる。

 2012年9月、ヒラリー・クリントン米国務長官(当時)が訪中したが、国家主席就任が決まっていた当時の習国家副主席は「水泳中に運悪く背中を痛めた」とかで301病院に入院し、クリントン氏との会談をドタキャンした。

 中国共産党の最高意思決定機関=党政治局常務委員会の「周永康委員(当時、無期懲役で服役中)らの暗殺未遂説が有力。その後も周は“事故”に遭った習副主席が301病院に入院するや、またも『毒入り注射で毒殺しようともくろんだが、事前に発覚した』」(日中公安筋)。 

 このほか、軍最高指導部=党&国家中央軍事委員会の委員(元人民解放軍総参謀長)ら党内序列上位の要人数人が軍事クーデターを画策したが発覚。失脚や自殺(暗殺説も)に追い込まれた。 

 昨年12月の暗殺未遂での病院搬送も外傷が原因ではなく、極度の緊張・心労が原因で、正確には「腹痛」ではなく「胃痛」を発症したとされ、深刻な症状ではないといった見方が有力だ。大事をとって301病院で精密検査を受け、精神疲労をとるために特別病棟に1泊し、翌日の朝食後、退院した。

 習主席の一団が病院に駆け込んだ直後、病院は一時的に閉鎖、他の患者は締め出され、武装警察や特別警察が厳重な警戒網を敷いた。

 人民大会堂は一般市民の立ち入りが禁止されている上、軍で使用されている爆発物が仕掛けられていた諸点を考えると、爆発物は人民解放軍幹部が持ち込み、セットされた可能性が高い。当日の監視カメラ映像などがチェックされ、人民解放軍の警備要員も個別に尋問された。

 習主席は政敵や反対派幹部の追い落としを狙い、“反腐敗運動”を推進。汚職容疑などで多くの幹部を粛清している。それ故、習主席を狙う党・軍の大幹部は多く、習主席の精神状態に大きな影響を与えているだろう。

 筆者が複数の安全保障関係筋に聴いた話は興味深かった。

 晴れの舞台で国家指導者は、抑えようとしても抑えきれぬ笑みがこぼれる。けれども、2015年9月に北京で挙行された《抗日戦争勝利70年観兵式》で、車両のサンルーフより身を乗り出した際も、天安門城楼に立った際にも、習主席の表情はいかにも眠たげで冴えなかった。安全保障関係者の間では、84%にのぼる初公開の新兵器の真贋・性能も重要な分析対象だったが、もう一つ、「何かに怯えていた」かに見える習主席の顔に注目が集まった。

 複数の安全保障関係筋によると、観兵式前、将兵が携行する小火器や動員する武装車輌/武装航空機に実弾が装填されていないか、徹底的な「身体検査」を実施したもよう。展示飛行する航空機の自爆テロを恐れた揚げ句の、地対空ミサイル配備情報にも接した。いずれも、習主席暗殺を警戒しての防護措置。眠そうな習主席の表情は、不安で前日一睡もできなかった結果だとの見方は、こうした背景から浮かんだ。

 ところで、習主席が昨年12月24日、人民大会堂での会議が終わり、専用車両に乗ろうとした際、爆発物が炸裂した暗殺未遂事件は先述したが、タイミングが悪過ぎた。欧米の思想・宗教を弾圧する習指導部は、学校などでのクリスマス祝賀行事を厳禁する。当然、クリスマス・イブに起こった事件はネット上を駆けめぐった。こんなふうに-。

 《習主席がサンタクロースから復讐を受けている》

 筆者なりに、なぜ習主席が慈愛に満ちるサンタクロースの《復讐》を受けたのかを考えた末にたどり着いたのが「クマのプーさんへの弾圧」だ。丸っこくて+ふっくらして+愛らしいプーさんの外見が、習主席に似ているとソーシャル・メディアで評判になり、中国の検閲当局は近年、プーさんの名前や画像の投稿をブロックした。「国家指導者様とプーさんを重ね合わせた反逆罪」というワケだ。

 児童小説の主人公として、ディズニーのキャラクターとして、世界の子供たちの心を豊かにしているプーさんを「弾圧」。あまつさえ、中国はニセモノのディズニー・キャラクターを拡散し、中国内外の子供たちをだまし続ける。サンタクロースが怒るのもうなずける。

 習主席は今年のイブでも《サンタクロースの復讐》に怯え、精神疲労で掛かり付けの301病院に駆け込むのであろうか…。