【衝撃事件の核心】バリトンオペラ歌手の元市議、なぜ自身の誕生日に妹一家を刺したのか - 産経ニュース

【衝撃事件の核心】バリトンオペラ歌手の元市議、なぜ自身の誕生日に妹一家を刺したのか

高木彩友美ちゃんら4人が刃物で切り付けられたビル2階の居酒屋「三代目 浜包丁」=5月13日午後10時45分、千葉市稲毛区(橘川玲奈撮影)
元千葉市議の小田求容疑者(ツイッターから)
殺人未遂容疑で千葉地検に送検される小田求容疑者=5月15日午前9時20分ごろ、千葉県警千葉西署(橘川玲奈撮影)
殺人未遂容疑で千葉地検に送検される小田求容疑者=5月15日午前9時20分ごろ、千葉県警千葉西署(橘川玲奈撮影)
 5月13日夜、千葉市稲毛区のJR稲毛駅前にある居酒屋から悲鳴が上がった。家族4人が同じ個室内にいた男に包丁で次々に切り付けられ、同区の幼稚園児、高木彩友美(あゆみ)ちゃん(6)が亡くなったのだ。千葉県警に殺人未遂容疑で逮捕されたのは、彩友美ちゃんの母親(42)の兄で元千葉市議の小田求(もとむ)容疑者(46)=6月3日に彩友美ちゃんへの殺人容疑などで再逮捕。関係者によると、小田容疑者は自ら店の予約を取り、4人を居酒屋に誘っていた。バリトンオペラ歌手で元千葉市議という異色の経歴を持つ小田容疑者は、なぜ妹一家を刺すという凶行に及んだのか-。
 事件現場となったのは、JR総武本線が走る稲毛駅から徒歩3分の和食居酒屋「三代目 浜包丁」の個室。一家4人と、彩友美ちゃんの伯父に当たる小田容疑者の5人は、午後6時40~50分ごろに入店。事件が起きたのは乾杯の後、食事を始めていた午後7時ごろだった。
 小田容疑者は突然、かばんに隠し持っていた包丁で右隣に座っていた彩友美ちゃんの父親(44)の太ももを刺し、テーブルを隔てて座っていた彩友美ちゃん、彩友美ちゃんの母親の順に次々と切り付けていった。彩友美ちゃんの母親は1歳の次女を背中におんぶしていた状態で切り付けられ、次女も顔などにけがを負った。
 亡くなった彩友美ちゃんは逃げようとしたところを切り付けられたのか、背中を刺されており、傷は肺まで達する深いものだった。小田容疑者は母親をかばおうとした父親にも再度切り付け、父親は上半身にも傷を負っていた。一家の悲鳴を聞いた居酒屋の店員2人が個室に駆けこみ、小田容疑者を取り押さえたが、小田容疑者はなおも一家を切り付けようとしていたという。
 小田容疑者が凶行に及んだこの日は小田容疑者の46回目の誕生日だった。関係者によると、会食は自身の誕生日会名目で小田容疑者が企画。小田容疑者は事件の1週間ほど前に自らこの居酒屋を予約し、一家に声を掛けていた。
 千葉市出身の小田容疑者だが、ここ数年は沖縄県に住み、時折、千葉に戻ってくる生活を続けていた。関係者は「仕事は特にしていなかったと思う。持っていた貯金などを切り崩して生活していたようだ」と明かす。
 オペラ歌手として活動していた小田容疑者は、当時民主党の市議だった熊谷俊人氏(現千葉市長)の市長選転出などに伴い平成21年10月に実施された稲毛区の市議補選(欠員2)に同党から出馬し、初当選を果たした。ただ、初当選から約1年後の22年11月に「(21年9月に誕生した)民主党政権を受け入れることができない」として同党を離党。2期目途中の25年3月には父親=当時(66)=をスチール製の棒で殴り、左腕に全治3週間の打撲を負わせたとして、県警に傷害容疑で逮捕され、その後起訴猶予となるなど、その行動が世間の耳目を集めることも少なくなかった。
 当時を知る元市議は「25年くらいから精神的に不安定な状態になっていたようだ。議員になる前から知っているが、まさか市議に立候補するとは思わなかった。本人は『落ちても歌手として名が売れる』というようなことを言っていたが、政治に合わない人を政治に巻き込んだ人の責任は小さくない」と語る。
 小田容疑者は27年4月の市議選には出馬せず、2期で市議を引退。関係者によると、2年ほど前に千葉市を離れ、沖縄県に移住した。移住後も被害者家族とは定期的に連絡を取っており、時折、千葉に帰郷していたという。今回も、事件の前日に沖縄から千葉に戻ったとみられている。
 逮捕された当初は意味不明な供述をしていたが、その後切り付けを認める供述を始めたという小田容疑者。ただ、捜査関係者は「動機についての供述は一貫しているが、到底理解できるものではない」と眉をひそめる。
 定職に就いていないことを被害者家族からとがめられ、不満を持ったという話もあるが、真の動機は分からない。県警は小田容疑者の鑑定留置も視野に、慎重に捜査を進める方針だ。(千葉総局 橘川玲奈)