日大「危険タックル」 内田前監督の「矛盾」は立証できる 高橋知典氏

iRONNA発
記者会見に臨む日本大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(右)と井上奨コーチ =5月23日、東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影)

 「お前らがしっかりしないから!」。ようやくお出ましになった日本大学長の記者会見に突如乱入した女性の言葉は、日大アメリカンフットボール部の一連の危険タックル騒動を象徴する。遅きに失した日大の対応。日大はどこで間違ったのか。(iRONNA)

 大学スポーツの現場は、指導者次第で部内の環境が変わるため、時には常識を超えたものになりやすい。選手の多くはチームのために多大な献身を求められ、監督の指示に応じて過酷な練習を繰り返す。そして、いつしか監督の指示なら何でも従うのが当然と思い込むようになる。

 そもそも本件の危険タックルは、傷害罪が成立し刑事責任を問われる可能性がある。人を傷つけるような危険行為であっても、スポーツでその行為が許されている理由は、スポーツ中の行為は「正当業務行為」とされ、違法性がないと考えられているからである。

 ◆ただの暴力

 今回のような悪意のあるルール違反については、もはやスポーツの域を越えるただの暴力である。傷害罪が成立する場合、タックルを行った選手は実行者であることから、刑事責任を回避することは困難だろう。これに対し、監督ら指導者の刑事責任に関しては、選手にルール違反のタックルを指示して実行させたといったような状況であれば、傷害罪の共謀共同正犯に該当する可能性がある。

 ただ、日大アメフット部の内田正人前監督は会見で「信じていただけないと思うが、私の指示ではございません」と関与を否定。その一方で「フィールドで起こったことなので、すべては私の責任です」とも言っている。

 つまり、内田前監督は、刑事責任の問われるような指示については知らないが、法的ではない道義的責任は負うと述べているのである。では、このように指導者側が責任を認めないケースで言い訳をなくすためには、どうすればいいのか。

 一つは、証拠を精密に積み重ねていくことだ。そのためには、反則行為について関与していない指導者が通常取る行動と、内田前監督らの実際の行動との「ズレ」を想定する必要がある。

 もし、何も指示を出していない監督の前で、あのような事態が生じていれば、まず本人にその場でなぜそのような行動を取ったのかと理由を聞くだけでなく、関西学院大側に即謝罪を行うなどの動きがあってしかるべきだ。

 内田前監督は会見で「反則行為は目に入らなかった」と説明したが、選手の行動に関して、ラフプレーが続くようであれば、本来その場で指導すべきだろう。監督の話と矛盾するこうした事実の積み重ねを、証拠によって適示することができれば、見解を改めさせることができる。

 もう一つは、他の部員や関係する指導者たちの「内部証言」を集めることだ。内田前監督らは、焦点となっている「つぶせ」という言葉の意味について「試合前によく使う言葉であり、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味」と説明している。

 これについて、もし他の選手が内部事情を証言すれば、この発言の本来の意味が解明されるはずだ。つまり、「抽象的な指示を選手が勝手に解釈した」という状態から、「反則してでも相手選手にダメージを与えてこいという指示と選手が受け止めた」という状態に変えられる可能性が出てくる。集められた証言が、大きな力を持つのである。

 ◆大学は「安全弁」

 日大側の一連の会見では、発言内容からも法律上の責任を問われないようにする配慮が随所にあり、弁護士による法的な考察を入れて行われたものであることは間違いない。しかし、学校を守るために必要な法的手当てをしている一方で、在学生の不安やアメフット関係者、世間からの疑問や批判に対する手当てができていなかったと言わざるを得ない。

 本来、大学は指導者の暴走を収めることのできる「安全弁」であり、学生が信じる指導者の適正性を保証している。こうした結果を招いた日大経営陣は、今まで保護者や学生の声にどう対応してきたのか。選手が「危険タックル」という反則行為に出なければならなかった気持ちも分かるような気がする。

【プロフィル】高橋知典 たかはし・とものり 弁護士。昭和62年、神奈川県生まれ。明治大法学部卒。学校や子供のトラブルについて多くの相談、解決実績を有する。テレビ・ラジオなどの出演や、東京こども専門学校非常勤講師としても活躍する。

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