読む前に新刊本を売りに出す!? 「フリマアプリ」で想定外の新たな消費行動続々

経済インサイド
「メルカリ」では、トイレットペーパーの芯も出品されている(寺河内美奈撮影)

 フリーマーケットアプリを手掛ける「メルカリ」は4月中旬、「消費変貌“売ることを前提にモノを買う” フリマアプリ時代の消費行動とは」と題したセミナーを東京都内で開催した。セミナーではフリマアプリをめぐる調査の結果が公表され、小泉文明社長と慶応大大学院経営管理研究科の山本晶准教授の対談などが行われた。拡大したフリマアプリ市場が消費者の行動に変化を及ぼしている現状や、新刊本を読み終わる前にメルカリに売りに出すという運営側も驚くような使い方が次々と生まれていることなどが明らかにされた。

 「買い物に影響を与えるのは価格や品質などいろいろな要素があるが、そこへ次に売るときの価格がいくらなのかという新たな要素が加わった」

 セミナーの冒頭、山本氏は自ら監修した、フリマアプリをめぐるインターネット調査の結果を説明。フリマアプリ利用経験のある20~60代のうち、「新品購入前にアプリで売値を調べた」経験があると回答した割合は54.6%だったことを紹介。商品の再販価格が購買行動に影響を及ぼしていると分析した。

 山本氏は、フリマアプリの利用者と非利用者に中古品への抵抗をたずねた設問で、20代の半数以上が抵抗を感じないと回答したことも紹介。「これまでマーケティングの教科書では、消費者が買うものイコール新品だった。ところがフリマアプリの登場によって、消費者が買う商品に中古品という新たな選択肢が加わったといえる」と指摘した。

 続いて、山本、小泉両氏が対談。

 「自分が出したものが人に買ってもらえるという承認欲求・自己表現欲求をフリマアプリが満たしているのではないか。僕らは単純に売買の場を提供したいと思ってスタートしたが、実はいろんな欲求を満たすプラットフォーム(基盤)になってきているという感じだ」

 小泉氏はメルカリについてこう指摘した後、「資本主義的な社会だと、生産者と消費者は縦の関係だったが、(フリマアプリによって)売る人と買う人が横の関係となり質が変わった。米ウーバー・テクノロジーズの配車サービスなど多くのシェアリングエコノミー系のサービスの場合、サービス提供者と利用者は別の場合が多いが、メルカリは売買両方をやっている人が多い」と利用状況を踏まえて分析した。

 山本氏も自らのメルカリでの売買体験をもとに、「(売買)両方やる理由の一つは、売上金をそのまま別の商品を買うことに使えるので財布が傷む感覚がない」と語った。

 さらに、小泉氏は「個人にとっては無価値になってしまったようなものが、メルカリを通して価値が再定義される」と述べた。

 「車や不動産は2次流通が当たり前だったが、洋服などは買った瞬間に無価値みたいなものだった。メルカリ登場以降は服、靴、ゲームソフトでも何でも価値のあるものになっていった」と語り、2次流通が前提となることで、高級ブランド品も買いやすくなる側面があると語った。

 この意見に山本氏も同意。「再販価値を考えてモノを買うという慣習が洋服にも広がってきたのはフリマアプリの影響の一つだ。新品より中古品の方が一般的に価格が安いとすると、トライアルの場ができているとも考えられる」と述べた。

 メルカリの人気などでフリマアプリ特需に沸く業界も出てきた。

 小泉氏はメルカリ登場以降、靴やかばんの修理業者への依頼が増えている状況を紹介。関係者から聞いた話として「メルカリへの出品前に女性らが靴やかばんを持ち込み、きれいに直してから写真を撮って出品する例がある」と発言。

 個人レベルでは新たな使い方も生まれているようだ。1990年代などの古い洋服が売買されているケースもあれば、逆に最新流行の洋服を数回だけ着用した後、まだ流行しているうちに出品する人もいるという。背景にはインスタグラムに写真をアップするため、「2回同じ服を着るのはダサい」という価値観を持つ人がいることなどが考えられるという。

 新刊本を発売直後に購入して読む前に出品し、発送するまでの数日で急いで読み終えるケースもあるようだ。小泉氏は「いろいろな商材が出品されており、今まで僕らが想像しなかったような使われ方をしているなと思っている」と語った。

 従来は企業が商品の信頼を担保して販売していたが、メルカリは出品者と購入者が取引を通じて互いに相手を評価する仕組み。趣味の手芸品の出品も活発になっているといい、小泉氏はそうした状況を「B(企業)とC(消費者)の境目がどんどんなくなっている」と表現し、対談を締めくくった。

 経済産業省が4月に発表した調査によると、平成29年のフリマアプリの市場規模は前年比58.4%増の4835億円。フリマアプリが初登場した24年から5年で5000億円弱の市場にまで成長したことがうかがえる。

 さらに調査会社マクロミルによると、フリマアプリ利用者のうち、メルカリ利用者は94%に達している。今後、どんな新しい消費行動が生み出されるのか-。(西岡瑞穂)