3メガバンク「気候変動リスク」情報を初開示へ…高効率の石炭火力発電融資など〝座礁〟懸念

経済インサイド

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクが7月にも公表する報告書で、気候変動が経営に与えるリスク情報を初めて開示することが23日、分かった。欧米の投資家を中心に、環境問題に熱心な企業を選別する動きが進む中、積極姿勢をアピールしたい考えだ。3メガは二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料産業への投融資をめぐり環境保護団体から批判を浴びており、理解を得られるだけの内容の濃さが求められそうだ。

 気候変動リスクには、大雨や洪水で工場が水没するといった直接的な温暖化被害だけでなく、CO2排出量が多い石炭火力発電が将来使用できなくなる可能性を含め、温暖化対策に伴う規制強化の影響で投融資の価値がなくなる「座礁資産」化の懸念も含まれている。

 温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が掲げる「21世紀後半に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」目標を実現するためには、世界の国・企業が持つ化石燃料の8割が使えなくなるとの試算もある。

 こうしたリスクの開示は、世界の金融行政の元締めである金融安定理事会の特別作業班(TCFD)が2017年6月に提言。企業などに対し、温暖化を組織的に監視する体制整備▽温暖化が経営戦略や財務計画に与える影響▽リスク管理の目標値の自主的な公表-を求めた。

 3メガとも「詳しい開示内容は検討中」としているが、融資先が座礁資産化して回収できなかったり、温暖化対策に後ろ向きだと評価され機関投資家に排除されたりするリスクを精査し、意思決定の仕組みや企業の社会的責任(CSR)活動に関する情報をまとめた統合報告書に盛り込む見通しだ。

 3メガ銀が情報開示を急ぐ背景には海外の厳しい視線がある。

 国際環境非政府組織(NGO)「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」は4月に発表した報告書で、みずほ、三菱UFJ、三井住友の3行が「日本の石炭火力発電所拡大の重要な融資元」と強く批判。世界の銀行に対し「化石燃料産業の拡大に資金供給するのをやめ、既存の埋蔵量を完全には採掘しない」よう求めた。

 日本が環境保護団体の標的となっているのは、東日本大震災後の原子力発電所停止に伴い、石炭火力発電を含む化石燃料への依存が強まったからだ。

 また、国内の省エネ化が進み排出削減の余地が少ないため、東南アジアなど旧式の火力発電設備が多い国に、高効率な火力発電プラントを設置することで世界規模の温暖化対策への貢献をアピールする政府のインフラ輸出戦略による部分が大きい。

 こうした中、国内大手生命保険会社では、日本生命保険が国内外の石炭火力向けの事業融資(プロジェクトファイナンス)を今後実施しない方向で検討しているほか、第一生命保険も海外に関しては融資しないことを決めた。いずれも太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及に向けた事業融資に力を入れる方針だ。

 ドイツ銀行や仏BNPパリバ、英HSBCなど欧州を中心とした海外の金融機関でも投融資方針の見直しが進んでいる。

 とはいえ、3メガが融資を停止すれば影響は大きい。「政府は新たなエネルギー基本計画でも石炭火力を重要なベースロード電源と位置づける方針だ。協力しないという判断は難しい」(関係者)と苦しい声も漏れる。

 今年12月にポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)ではパリ協定の運用に向けた具体的なルールが定められる予定で、2020年以降の本格実施に向けた議論が急ピッチで進む。化石燃料産業への投融資に向けられる視線は今後一層厳しくなりそうだ。不本意な評価を受けないよう、3メガは環境保護の姿勢をいかに上手にアピールできるかが今後問われてくる。(経済本部 田辺裕晶)

 パリ協定 京都議定書に代わる地球温暖化対策の国際協定で、2020年に始まる。今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す。全ての参加国が削減目標を掲げて国内対策を実施し、5年ごとに取り組み状況を互いに検証して目標を見直す。15年12月に採択、16年11月に発効した。