技術“爆買”中国空母Xのカタパルトはドイツ由来? 日本海軍の空母・鳳翔も徹底研究した! 

野口裕之の軍事情勢

 中国初の通常型「国産」航空母艦が13日、遼寧省大連の造船所を出港し、試験航海を始め(18日帰港)たが、中国人民解放軍海軍の空母の建造・運用は《日本の戦史》と《ドイツの技術》が支えている。中国メディアは試験航海に臨んだ空母の名を《山東》と報じるが確定しておらず、小欄では「空母X」と呼ぶことにする。

 まずは《日本の戦史》を論ずる。

 ソ連海軍空母《ワリヤーグ》を大改修して2012年に就役した通常型空母《遼寧》に続く2隻目の空母が「X」だ。《遼寧》→「X」という空母建艦過程を観察・分析する自衛隊&米国防総省の専門家や日米の戦史研究者&シンクタンク研究員らが、大日本帝國海軍の空母《鳳翔》を論文・レポートのテーマに設定。「中国の空母機動艦隊創設関係者は《鳳翔》建造期の日本を徹底研究した」との見方を強めている。

世界初の新造空母は日本で誕生

 既成の艦船を改造した改造空母は存在していたものの、《鳳翔》は空母として設計→起工→建造→完成した世界初の新造空母だった。就役は1922(大正11)年12月で、排水量は1万トン強。10万トン規模が現出した米海軍原子力空母は論外として、《遼寧》の6.75万トンや「空母X」の5万トンなど現在の空母はもちろん、大東亜戦争(1941~45年)当時の空母と比べても驚くほど小ぶりだった。

 実は、最初から空母として設計された艦の起工は、英海軍《ハーミーズ》の1918年1月が世界初だった。けれども、18年11月に第一次世界大戦が終結し、完成を急ぐ必要がなくなった。3年遅れで起工された《鳳翔》が、世界初の新造空母となったのには、こうしたワケがあった。

 帝國海軍は英国海軍の空母建造→運用に絶大な関心を寄せていたが、建造・運用への技術的限界を抱えていた。そこで同盟国・英国に協力依頼。英国は1921年、軍事技術教育団を日本に派遣し、空母建造の中核となる甲板建造技術などを指導した。並行して帝國海軍は英空軍の退役将校を雇い、帝國海軍の操縦士に空母離着艦技術を錬成させた。

 かくして《鳳翔》はワシントン海軍軍縮条約(1922年)の下、未完成の巡洋戦艦を改造した空母《赤城》が就役する1927年までの4年3カ月、帝國海軍唯一の空母だった。

 ひるがえって、「空母X」の就役(2019~20年?)まで人民解放軍海軍唯一の空母となる《遼寧》は2002年、購入先のウクライナより遼寧省大連に到着したソ連製空母。不完全な設計情報を基に、蒸気タービンの動力システム改修などを手掛けた。ロシア製や中国製の成分の異なる合成金属や鋼鉄が各部で使用され、衝撃を受けた際の強度が不十分で、部品の劣化も問題視されている。

 艦上戦闘機候補の殲(J)15はロシア海軍の艦上戦闘機SU-33をベースに、「国産」と称するレーダーと兵装が装備されたと観測される。だが、エンジンの出力不足なども克服課題であるようだ。

 日米軍事当局者は、《遼寧》を守護する水上艦や潜水艦なども相互連携面で力不足で、《遼寧》を格好の標的として「浮かぶ鉄の棺桶」などと揶揄する。《遼寧》を核とする空母機動艦隊は海・空軍力の劣る東南アジア諸国を威嚇する「政治力」は有するが、南シナ海~西太平洋の覇権を達成する戦略レベルには到底達していないのだ。

 ただし、《遼寧》は半面で、日米軍事当局者の間で「事始めの空母」とも呼ばれる。

 先述した日米の専門家・研究員が「中国は《鳳翔》建造期の日本を学習している」と論ずるのも、空母建造と艦上戦闘機開発で多くの問題を背負い試行錯誤する《遼寧》と《鳳翔》が、ピタリと重なったためだった。しかし、手本とする対象は建造・開発面にとどまらない。

 《鳳翔》は第一次上海事変(1932年)を初陣に作戦行動にも複数参加した。が、最も期待されたのは実験・訓練空母としての活躍。すなわち(1)空母と艦上機の運用(2)空母乗組員と艦上機操縦士の訓練(3)空母と護衛艦艇を一体化した空母機動艦隊の運用術…など、海上兵力と航空兵力を一体にした戦力の構築にあった。

 《遼寧》が最も期待されている任務も然り。「張り子のトラ」で十分で、「獰猛なトラ」が姿を見せるのは「空母X」の実戦配備以降のことだ。

 《鳳翔》は戦闘任務に何度か就きながら大東亜戦争を生き延び、帝國海軍の力を世界屈指にまで引き上げる原動力の一つとなった。《遼寧》もまた、艦性能と乗組員の演練不足で自沈しなければ、実験・訓練空母として人民解放軍海軍を「脅威的」に膨張させよう。

 中国は異常な軍事膨張をもはや隠さない。4月に南シナ海で《遼寧》など艦艇48隻が参加して実施された中国史上最大の観艦式で、習近平国家主席は「世界一流の海軍建設に努力せよ」と檄を飛ばした。既に2隻目の通常型「国産」空母を上海で建造中で、3~4隻目は長期作戦行動を可能にする「国産」原子力空母とする野心を抱く。

 帝國海軍に比べカネに糸目を付けぬ中国は4個空母機動艦隊のフル稼働を目指し驀進中で、日米軍事当局者の眼には「浮かぶ鉄の棺桶」が次第に「浮かぶ鉄の要塞」に見え始めたようだ。

 わが国は、自衛隊のヒト・モノ・カネを飛躍的に増やし、法的基盤も強化して、日米が一体化した軍事力を最大値にまで高めなければならない。そうしないと、人民解放軍海軍の空母機動艦隊が台湾に侵攻するとき、米国の台湾防衛への意志は萎えてしまう。

ドイツのリニア工場に忍び込んだ「中国人技術者」

 《遼寧》に続く初の「国産空母X」の試験航海に冒頭触れたが、両艦ともに艦上機の発艦はスキーのジャンプ台のように反り上がった艦首を利用する《スキージャンプ式》。艦上戦闘機候補の殲(J)15は自らの推力での発艦を強いられ、搭載燃料や搭載武器の重量=数が制限。航続距離や戦闘力が削がれ、時間あたりの発艦機数も限られる。

 従って、「X」に続く2隻目以降の「国産」空母は《カタパルト=射出機》で発艦させる、という。しかも、《電磁式カタパルト》を採用する可能性がある。

 カタパルトは滑走環境が制約される空母上に敷設された艦上機を射出する、パチンコのゴムに例えられるシステム。カタパルトの有無や性能は、既述したが、航空戦力に巨大な影響を及ぼす。

 特に電磁式カタパルトは昨年7月に就役したばかりの米海軍の原子力空母《ジェラルド・R・フォード》が、米英共同開発でもってしても苦労を重ね装備したごとく、高度技術を伴う各種カタパルトの中でも突出して高い技術を要求される。

 《ジェラルド・R・フォード》以前の空母が装備していた《蒸気式カタパルト》でさえ、空母を“自力建造中”の中国が開発に困り果て、米国などから盗みたがっている筆頭格の軍事システムだ。まして電磁式カタパルトに至っては…

 中国化工集団公司(ケムチャイナ)がドイツの重機大手クラウス・マッファイを買収(2016年)した際も、筆者はゾッとした。

 クラウス・マッファイは、磁気浮上鉄道の業界で一目置かれる。日本が実用化を目指すリニア・モーターカーなどの磁気浮上技術は、空母の電磁式カタパルト技術につながる。

 おまけに、クラウス・マッファイ分社化後、他社との合併で再編された系列会社は、戦車大国ドイツでも屈指の戦車・自走砲メーカーとくる。

 全体、2004年の教訓、否、戦訓はどこに行ったのだろう。07年の独シュピーゲル誌の表紙を飾った「中国人女性」は怖かった。赤いブラインドを赤いマニキュアを付けた指でこじあけ、魅力的な目で外をうかがっていた。表紙以上に、シュピーゲル誌の特集《イエロースパイ》の報じた内容は衝撃的だった。空母に不可欠なカタパルトの技術を手段を選ばず得ようとする中国の執念がいかに凄まじいか、特集は見事に浮かび上がらせた。

 《中国は高速鉄道網建設に向け、高度な技術を安価で取得すべく日独とフランスを競わせた。ドイツはリニア建設で300億円相当の技術を提供したが、政府の補助金で開発した高度技術だけは伝授しなかった》

 《そこで、2004年11月26日夜、高度技術を盗もうと“中国人技術者”らがドイツのリニア工場(上海)に忍び込んだ。ところが、設備を無断で測定していた現場を発見された》

 《事件後、中国側はドイツに技術使用料を払い、自ら建設する計画などを提案したが、ドイツは当然拒んだ》

「怪しさ満載の海外経済活動」封印を

 このほか、中国家電大手は米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35の機体製造に関わる技術を保有するドイツのロボット大手を買収。航空自衛隊で配備中のF-35の機密も漏れ出す懸念がある。

 中国企業は2016年前半の半年間で、1週間に1社のペースでドイツの先端メーカーを「爆買」しまくり、買収総額で過去最高を記録した。

 軍事に直接・間接に利用できる技術を日独から抜き取りまくる手口は「知的財産権の侵害」などではなく、スパイ行為に等しい。FBI(米連邦捜査局)の調べでは、ドイツのリニア工場侵入事件当時、米国内にはスパイ目的の中国系偽装企業が既に3千社以上存在した。

 ところで、習主席は米ドナルド・トランプ政権誕生直前(2017年)、米国の対中貿易戦略を牽制し大見得を切った。

 「保護主義を追い求めることは、己を『暗い部屋』に閉じ込めるようなものだ」

 そうか、その手があった。中国共産党は『暗い部屋』に閉じこもり、どうか海外での「怪しさ満載の経済活動もどき」を封印してほしい。