【びっくりサイエンス】2040年、ARでよみがえった亡き夫と食事? 総務省の若手官僚が描いた未来小説の中身 - 産経ニュース

【びっくりサイエンス】2040年、ARでよみがえった亡き夫と食事? 総務省の若手官僚が描いた未来小説の中身

総務省の若手官僚らが書き上げた未来小説「新時代家族~分断のはざまをつなぐ新たなキズナ~」
 人工知能(AI)や無人機ドローンをはじめ、新たなテクノロジーが次々と世に出る現代社会。20年ほど前にはインターネットや携帯電話が珍しかったことを考えると、次の20年でも私たちの暮らしは大きく変化するだろう。日本の情報通信政策を担う総務省では若手官僚らが予測に取り組み、行政文書としては異例の小説としてまとめた。そこで示されたのは、想像以上に激変した日本社会の姿だ。
 小説は「新時代家族~分断のはざまをつなぐ新たなキズナ~」と題され、4月に公表された。書き上げたのは20代前半から30代後半にかけての職員ら26人で構成する「未来デザインチーム」。彼らはいずれも、同省の将来を担うことが期待されている。
 小説の舞台は2030~40年ごろの日本。夫婦と子供2人で暮らす家庭のそれぞれの一日を通し、そのころに普及が予測されるテクノロジーを描いた。
 生活の中心にいるのは、作中で「アイコ」と名付けられたAI搭載の家庭用ロボットだ。子守に始まり料理や掃除、買い物、家計管理といった家事全般、家族それぞれの体調管理などを幅広くこなし、幼子を育てる共働きの夫婦を支える。
 人々の働き方もさまざまだ。自動翻訳技術の飛躍的なレベル向上により、外国人労働者の積極的な導入が進んだ職場に言葉の壁はない。
 さまざまな国から来た社員が共に働くが、そもそも通信技術の進歩によって社外でも仕事ができるようになったため、“職場”という概念は希薄になっている。
 職場にいなくても仕事ができることは、一人の人間が複数の仕事に就くことも可能とした。例えば一家の母親は、ロボットメーカーに勤める傍ら、小学校の授業も受け持っている。
 特筆すべきは高齢者の暮らしだ。一家から遠く離れた農村部で一人暮らしをする曾祖母の年齢は100歳。医療技術の進歩によって寿命が延び、家庭用ロボットのサポートで過不足なく生活している。
 体に装着するパワーアシストスーツの助けで山にハイキングに出かけ、下山後はドローンを発展させた自動運転の空陸両用タクシーで公園に移動。拡張現実(AR)やAIによってバーチャルによみがえった亡き夫と、レストランで食事までしている。ハイキングに同行した80代の仲間は若者扱いだ。
 小説ではほかにも、全自動化した農業や宇宙から電力を供給する人工衛星、相撲の稽古に特化したロボットなど、さまざまなテクノロジーが登場する。
 これらは今の日本と大きく異なる社会像だが、まぎれもなく情報通信政策の中枢を担っていく若手官僚らが思い描いた世の中だ。
 もっとも、チームが設けられた背景には日本の将来に対する強い危機感があった。2040年ごろといえば少子高齢化がピークを迎える時期で、このままでは地域の維持すら困難となりかねず、「静かなる有事」とまで表現される。
 この事態をテクノロジーで乗り切るべく、省内の公募に応じた26人が参加して昨年12月にチームが立ち上げられた。小説形式としたのは「政策文書では語りづらいことも盛り込めるから」(同省関係者)とのことだ。
 執筆は各人で分担。昼休みなどの業務時間外にボランティアで書き上げ、最後に文才のある職員が全体の体裁を整えた。
 小説は夏ごろには、同省の情報通信審議会が答申する形で野田聖子総務相に届けられるという。たかが小説とあなどるなかれ。その内容は、今後の政策の方向性に大きな影響を与えるかもしれないのである。(科学部 小野晋史)