【経済インサイド】国会空転長引き “ガンプラ”などアベノミクス支える「産業競争力強化法」改正に暗雲 - 産経ニュース

【経済インサイド】国会空転長引き “ガンプラ”などアベノミクス支える「産業競争力強化法」改正に暗雲

工場内を所狭しと移動する自動搬送ロボット。シャア専用ザクを模したカラーが圧倒的だ=静岡市のバンダイホビーセンター
ガンプラの公式店「ガンダムベース東京」=東京・お台場
火力発電事業の統合についての記者会見で握手する三菱重工業の大宮英明社長(左)と日立製作所の中西宏明社長(大宮氏と中西氏の肩書は当時)=平成24年11月
主な野党が欠席する中、開催された参院予算委員会集中審議で答弁する安倍晋三首相=4月26日、国会・第1委員会室(春名中撮影)
 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による経済成長を実現するため、産業構造の再編を後押しする「産業競争力強化法」の改正が国会の空転が長引き、宙に浮いている。同法で成長産業と認められれば、新会社の設立や事業統合などでかかる税金を免除する措置が受けられる。その対象範囲は、大型の電気機器「重電」メーカーの事業再編から、銀行や鉄道の持ち株会社設立、人気アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル(ガンプラ)事業まで幅広い。拡充を狙った改正案の成立は日本の産業全体の浮沈にかかわるだけに、国会審議の行方に注目が集まる。
 産業強化法は平成25年12月、アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を実行し、産業競争力を強化することを目的に成立した。「企業実証特例制度」で、企業単位での規制改革を実施。収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編や起業を促し、企業の合併・事業の統合が「事業再編計画」「特定事業再編計画」として認定されれば、税制優遇の措置が講じられる。
 今回の改正案では、子会社の株式を買い増す事業再編を新たに認定するなど支援対象が広がるほか、優遇される税率の拡大も予定。資金に余裕がない企業でも大型の企業買収ができるよう、現金の代わりに自社株を対価とする手法の活用を促進する仕組みも導入し、企業再編の活発化も目指す。
 また、官民ファンドの産業革新機構を「産業革新投資機構」と名称変更した上で、設置期限を36年度から9年間延長する。乱立する官民ファンド統合の受け皿の役割を担わせる規定も設けた。日本の文化を海外に売り込むクールジャパン機構などとの統合が想定される。
 ただ、改正案は4月17日に衆院を通過したものの、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる決裁文書改竄(かいざん)や福田淳一財務事務次官のセクハラ問題などで、野党が審議を拒否し、参院通過に暗雲が垂れ込めている。
 29年度が終わろうとする3月28日、バンダイナムコホールディングス(HD)の子会社で、大人向け高価格プラモデルやフィギュア(人形)の開発・販売に特化したバンダイスピリッツ(東京)の事業が、改正前の滑り込みで新たに認定を受けた。
 バンダイスピリッツのプラモデルは、部品がつながっている「ランナー」と呼ばれる枠が部品ごとに4色に塗り分けられており、購入者は色を塗る必要がない。同社は、この4色ランナーを原料のプラスチックからつくる「4色射出成形機」を世界で唯一、保有している。
 「バンダイの持つ技術は日本の経済成長につながる」
 経産省の担当者は認定理由をこう説明する。
 バンダイスピリッツは2月15日に設立したばかりの新会社。バンナムHD傘下のバンダイから、大人向け高価格品とコンビニエンスストア向け景品の事業を引き継ぐ。
 バンダイスピリッツによると、静岡市の工場「バンダイホビーセンター」で生産される高価格帯のガンプラは中国でも人気だ。メード・イン・ジャパンの信頼性を追い風に、アジアを中心に海外売上高の比率は約4割を占める。欧州では、「週刊少年ジャンプ」の連載漫画『ドラゴンボール』の人気が圧倒的で、関連フィギュアの売れ行きが好調だ。高価格品の売上高は、5年間で約3~4割の伸びとなっているという。
 バンダイでは、子供の教育上への配慮などから、プラモデルやフィギュアの武器の形を内規で規制し、あまり本物っぽくみせないようにしている。だが、大人向け高価格品を分社化しバンダイスピリッツが担うことで、より本格的な武器を開発・販売できるようになる。
 また、高価格品は希少性が高く、一部の消費者が買い占め、インターネットオークションなどに出品する「転売」が横行しやすい。年始の福袋やイベント会場での限定販売では、中国人などによる組織的な転売目的の買い占めがしばしば社会問題化しており、対策を講じる必要がある。
 同社は今後、ある程度の身元確認につながる「会員制ネット通販」の導入など流通構造の見直しを検討する。産業強化法に基づく「事業再編計画」「特定事業再編計画」として認められ、税制優遇の対象になれば、こうした見直しを進めやすくなる。
 産業強化法の支援対象は幅広く、省庁の枠を超えて適用される。その活用事例は、総務省が認定したテレビ朝日のグループ再編や経産省が所管する三菱重工業と日立製作所の火力発電部門の統合など、日本の産業構造に大きな影響を与えるものもあれば、玩具や日用品、食品など生活に身近な産業もある。
 スケールの大小はあるが、日本の経済成長を支える分野ばかりだ。人口減少や少子高齢化に立ち向かうためにも、改正案の迅速な国会審議が求められている。(経済本部 高木克聡)
 産業競争力強化法 「アベノミクス」の「第3の矢」となった成長戦略を実行するため、平成26年に施行された法律。民間主導による経済再生を掲げ、企業の再編や設備投資を促す税制優遇を規定。創意工夫を阻む規制の緩和も柱とし、新ビジネスが適法かどうかを事前に政府に確認できる「グレーゾーン解消制度」を設けた。産業革新機構などによるベンチャー支援策も講じている。