リストラ、新サービス…「ペーパーレス化」にあえぐ複合機各社のかつてない“試練”

経済インサイド
富士ゼロックスのユニバーサルデザインのデジタル複合機

 ITの浸透でペーパーレス化が進み、複合機メーカーが苦境に立たされている。先進国を中心にオフィス向け複合機の市場は縮小が続き、各社とも生き残りをかけて人員削減も含めた構造改革を進める。新規サービス開発などに活路を見いだす動きも活発化している。

 複合機はコピー、ファクス、スキャン(読み込み)など複数の機能を持つオフィス向け機器。リース契約収入とトナーなど消耗品販売や保守点検の収入がビジネスモデルだが、昨今のオフィスでは紙の書類のやりとりよりも電子メールが使われるなどペーパーレス化の流れが顕著だ。

 調査会社IDCの調べでは、世界の複合機の出荷金額はリーマン・ショック直後の2009年に254億ドル(約2兆7000億円)に落ち込んだが、12年には300億ドル弱まで盛り返していた。だが、その後は再び下降に転じ、17年は267億ドルに縮小した。

 アナリストの石田英次氏は「ITの浸透と環境意識の変化でペーパーレス化が進んだことが要因。新興国ではまだ需要はあるが、全体を押し上げるほどではない」と話す。

 苦境のリコーは北米事業を見直し、18年3月期に減損損失を計上するため連結最終損益が1700億円の赤字に転落する。昨年、北米を中心に5000人以上の人員削減など構造改革を進めてきており、山下良則社長は「今年は成長へかじを切る」と強調するが、市場環境は厳しさを増している。

 富士フイルムホールディングス(HD)も1月、米複写機大手ゼロックスを買収し合弁子会社の富士ゼロックスと経営統合させると発表。業務効率化のため富士ゼロックスの従業員1万人を削減し、生産拠点の統廃合も着手する。一連の構造改革で事業環境の悪化に対応する構えだ。

 一方、新規サービス開発に活路を見いだす動きも強まっている。富士ゼロックスは4月から先端技術を駆使した新サービス提供に乗り出した。手書き文字を含む紙の書類を複合機のスキャン機能でデータ化、人工知能(AI)で整理・保管するといった複数のサービスを始め、オフィスの業務効率化支援を新たな収益源に育てる考えだ。障害者が使いやすいユニバーサルデザインの複合機も展開する。

 コニカミノルタも事業の多角化を急ぐ。昨年、官民ファンドの産業革新機構とともに、遺伝子分析によるがん診断を手掛ける米アンブリー・ジェネティクスを共同で買収した。同社のM&A(企業の合併・買収)では過去最大の約900億円となる大型買収で、これをテコにヘルスケア分野を、複合機に次ぐ収益の柱に育成する狙いだ。

 ただ、これらの取り組みが奏功するかは予断を許さず、複合機各社はかつてない“試練”に直面している。(経済本部 柳原一哉)

 複合機 コピーだけでなく、ファクスやスキャン、プリンターなど複数の機能を搭載した事務用機器。企業や官公庁がリース契約で使用しているケースが多い。リコー、キヤノン、富士ゼロックス、シャープ、コニカミノルタの5社の合計シェアは8割以上とみられる。日本メーカーの製品は海外でも多く使われている。