アルミトップUACJ“内紛” 異例のトップ人事撤回のワケ

経済インサイド
代表取締役人事の撤回で記者会見するUACJの山内重徳会長(左)と岡田満社長=4月13日、東京都中央区(斎藤良雄撮影)

 アルミニウム圧延品で国内最大手のUACJが、異例のトップ人事撤回に追い込まれた。一度は山内重徳会長(69)が留任し、岡田満社長(61)が副会長となる人事を発表したものの、筆頭株主の古河電気工業が反対。結局、1カ月半後に両氏が代表権のない相談役に退くことで落ち着いた。アルミ業界では昨年、ライバルの神戸製鋼所と三菱マテリアル子会社の三菱アルミニウムで品質不正が発覚。そんな“敵失”を生かすことなく、ドタバタ劇を演じてしまったUACJに対しても市場の目は厳しくなりそうだ。

 「人と人、会社と会社の理解はなかなか難しい」

 山内会長は、自身と岡田社長の代表取締役退任を発表した4月13日の記者会見で、無念さをにじませた。

 この日新たに発表した人事案では、石原美幸取締役(60)の社長昇格は撤回されなかった。ただし、山内氏と岡田氏が持つはずだった代表権は、取締役専務執行役員の中野隆喜氏(62)と種岡瑞穂氏(61)に委ねられた。 

 同社が最初の人事案を発表したのは2月27日。古河電工の賛同は得ていなかったが、いずれ理解してもらえると思っていた。

 ところが古河電工は、石原氏の社長就任に「異論はない」としつつ、「3人が代表権を持てば経営責任が曖昧になる」と反対。山内氏と岡田氏の代表取締役退任を求め、株主総会での委任状争奪戦も辞さない構えを示した。

 2位株主で7.74%を出資する新日鉄住金もこれに同調。UACJは結局、大株主に屈した。新人事案でも3人が代表取締役を務めるが、石原氏の主導が明確になったことで古河電工も矛を収めた。

 UACJが、山内氏と岡田氏、石原氏の「トロイカ体制」を打ち出した背景には、「業界は変革期にある」(岡田氏)との認識があった。アルミの地金をローラーで延ばすなどして加工するアルミ圧延品は鋼板よりも高価だが軽いため、環境・燃費規制強化で軽量化ニーズが高まる自動車で採用が拡大。

 新興国では飲料に使う缶材の需要が伸びている。山内氏は「総力戦で経営にあたることがベストと考えた」と説明する。

 これに対し、古河電工には自分たちの意見に耳を貸さず、トップ人事を強引に決めた山内氏らの姿勢が株主軽視と映った。同社の推薦する監査役が外されたことにも不満を抱いた。

 UACJは平成25年に、古河電工の子会社だった古河スカイと、住友金属工業(現新日鉄住金)系の住友軽金属工業が合併して誕生した。この合併を成功させ、その後の経営を主導したのが住軽金出身の山内氏と古河スカイ出身の岡田氏で、2人はいわば立役者といっていい。

 もっとも古河電工は「合併効果は上がっておらず、株価も合併前より低い」と不満を募らせていた。タイ工場に対する1000億円近い増産投資など、利益が十分に上がる前から次々と大型投資を決めたことも、いらだちの原因となってきた。

 社長に昇格する石原氏は住軽金出身だ。住軽金と古河スカイの出身者が1人ずつ代表権を持つ「二頭体制」が崩れて住軽金出身者が主導権を握り、古河電工の影響力が弱まることへの反発説もささやかれる。

 ただ、古河スカイ出身者にも「自分たちはれっきとした東証1部上場企業。大株主の意見には耳を傾けるが、経営の独立性は守らねばならない」との思いが強かったようだ。

 トップ人事案が撤回に追い込まれたとはいえ、UACJも黙って引き下がったわけではない。新人事案では、古河電工を含む大株主出身の取締役や監査役は排除された。

 4月13日の会見で山内氏は「独立性は勝ち取った」と何度も強調した。新人事案に対し、古河電工も「全面的に支持する」とのコメントを発表し、対立は一応解消された。

 もっとも、火種はなおくすぶっている。両社がまだ対立していた3月3日、古河財閥の5代目当主だった古河潤之助氏が死去した。両社が和解した背景には、古河氏の「お別れの会」が4月25日に迫っていたことがあるといわれる。

 一方、3月末には旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、UACJ株6.79%を取得していた事実が判明。エフィッシモはその後、比率を9.8%まで高め、2位株主に躍り出ていた。対立を早期に収束させなければ、エフィッシモが「物言う株主」として独自の動きをみせる恐れもあった。

 対立は解けたとはいえ、古河電工が約25%を出資する構図に変わりはない。UACJが独立性を追求する限り、同様の場面が繰り返されないともかぎらない。そうなれば世界はおろか、国内トップを守ることすらおぼつかなくなる。(経済本部 井田通人)

 UACJ 東京都千代田区に本社を置くアルミニウム圧延品メーカー。平成25年10月に古河電気工業子会社の古河スカイと住友金属工業(現新日鉄住金)系の住友軽金属工業が経営統合して発足した。アルミ圧延品では国内最大手で、世界でも米アルコア、米ノベリスに次ぐ3位。平成30年3月期の連結売上高(見通し)は6300億円、社員数は29年3月末時点で9819人。