訪日客向け「観光情報サイト」差別化合戦 “上客”囲い込みのそろばん勘定

経済インサイド
オリックスが始めた訪日客向け情報案内サービス。観光案内所などに設置したQRコードを読み取ると、自動的に地元情報満載のサイトがみられる=埼玉県川越市(同社提供)

 外国人が日本旅行中に観光スポットやイベント情報を収集する情報案内サイトを運営する観光関連事業者が、独自色を出して自社サイトを差別化しようと躍起だ。人口減少で国内需要の先細りが避けられない中、サイトで訪日客の需要を喚起し、自社サービスへ誘導する狙いだ。各サイトとも自治体と連携して地元おすすめの観光スポットが分かったり、観光地までのルート検索ができたりするなど独自機能が満載。“旅のお供”の座を射止めるべく差別化を競っている。

 「ストレスフリーな観光サポートサービスとして、相当数の利用が見込めると判断した」。オリックスオープンイノベーション事業部の幹部は、同社が全国展開を始めた訪日客向けの情報案内サービスのでき映えに胸を張る。

 同サービスは観光案内所などに置かれた2次元バーコード「QRコード」をスマートフォンで読み取ると、提携自治体のホームページなどをベースにした情報サイトにアクセスできる。スマホの言語設定を読み取って自動的に適切な言語で表示するのが特徴で、困った訪日客がインターネット検索せずに地元おすすめの観光情報が手に入る。将来的には地元飲食店の多言語メニューや割引クーポンのリンクも配信する。

 QRコードは設置された場所ごとに識別され、外国人がどのQRコードを読み取ったかが追跡できる。自治体は訪日客の足取りを把握した上で、今後の観光施策に生かすことが可能で、「困った訪日客が滞留しそうな場所」(同社)を中心に、9月までに最大70自治体に最大1万枚のQRコード設置を目指す。

 インターネットの普及を背景に、近年は航空券や宿泊施設などを自分で手配する個人旅行客が急増。オリックスの調査では、個人旅行客のうち、細かくスケジュールを決めずに現地到着後に情報収集をするケースは全体の約8割にも及ぶことが分かり、同社は「“旅ナカ”の観光情報サイト需要は高い」として本格的に事業参入を決めた。

 訪日客の急増に伴う経済効果はいまや、無視できないレベルに高まっている。観光庁が政府の有識者会議で公表した試算によると、平成24~28年で名目国内総生産(GDP)は約40兆円も増加したが、うち2兆円は観光関連の上積み分。分野別では、観光関連のGDP伸び率は23.0%に達しており、輸送機械などとともにトップクラスの水準となっている。

 特に今後も伸びしろが期待できるのは地方観光だ。日本に複数回来た訪日リピーターは29年に1700万人を突破し、地方に足を伸ばす傾向がある。だが地方の観光情報は整備途上で、訪日客が旅行前に自国で入手することが難しい。そこで観光関連事業者が、情報サービスで訪日客を自社サービスにつなげようと目をつけていった。

 “上客”の囲い込みに向け、各社は独自色ある情報サイトの開設を活発化させている。

 旅行大手JTBは日本マイクロソフトや経路案内ソフトを手がけるナビタイムジャパンと共同で2月下旬から、スマホ用アプリ「JAPAN Trip Navigator」の提供を始めた。人工知能(AI)を活用して利用状況を分析し、適切な呼びかけを行うほか、100通り以上の観光モデルプランを提示し効率的な周遊を促す。

 国内線でつばぜり合いを繰り広げる航空大手2社も整備を急ぐ。日本航空は3月、JR東海と連携して両社の観光情報を集約したウェブサイトを開設した。サイトから日航と東海道新幹線の予約もでき、地方に関心を持った訪日客を両社のサービスに誘導する。全日本空輸は行きたい観光地を選択すると、旅行プランを自動作成する「Japan Travel Planner」を開設した。

 全日空は今後、自治体や観光協会、人気ブロガーなどと連携し、イベント開催、花の見頃などのリアルタイム情報を随時掲載して訪日客の地方誘客に向けて背中を押していく。担当者は「最新情報を集めていくことで、訪日客に選ばれるサイトに成長できれば」と話している。

 訪日客のさらなる増加が見込まれる中、各社の観光情報サイトの差別化競争はより激化しそうだ。上客囲い込みのそろばん勘定の成否は-。(経済本部 佐久間修志)